いまひとたびの

2004年6月14日 読書
志水辰夫の短編集

個人的には「裂けて海峡」から入って「背いて故郷」までしか読んでなかった。その2作でイメージを固めていたが、この作品で変わった

この作品で、冒険小説を書いていた頃から定評のあった心の機微と中年男性の視線の描写を掘り下げている。過剰な物語や非日常を描いてはおらず、あくまで社会の中で生きる普通の男性の日常を切り取るだけだ。だから最初は地味に感じるし物語の世界にはいるまで時間がかかる。しかし、それを補って有り余るほど・・・でもないかも知れんが、人の思いやりと穏やかな諦観、山や川、森などの自然を大事に扱った世界観を楽しめる

相変わらず主人公の年齢設定が高すぎてアレだが、主人公の日常への目配りや捉え方のバランスが良い。ただ、病気を絡めすぎではないかと思ったが、想定している読者層には身近で共感できる話題なんだろう。短編集だからかもしれないが、余分な情報を抑えて心の機微に焦点を絞っているように見受けられる

正直な感想を言えば、この作品は若年層向けではないと思う。共感するという楽しみ方ができないからだ。ただ、ある程度本に触れる機会があり、若年層向けの装飾の多い文章に飽きた方は手にとってもいいかもしれない。残念ながら、僕はそこまで読み込んでいないので印象が薄いんだが

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