村上龍の短編集
この小説は「69」の主人公が専門学校へ進学した後のエピソードを編んだものだ。時系列としては「69」と「長崎オランダ村」の間に位置している。というわけで、やはり村上龍本人を髣髴とさせるので読んでいて少し萎える部分もある。しかし、この世代を主人公にしたわりに、やさぐれた位置にもスノッブな位置にも凡庸な位置にもシフトせず、独特な冷静さを持った主人公を描き出していて、この3部作の中では一番好きな作品だ。短編は各々映画のタイトルをつけられているが、その映画は作品中にある種の象徴として提示されるだけで、特に知らなくても十分に楽しめる
村上龍『69』以後、’70年代のほろ苦い青春を描く。基地の街から出てきた東京は、ひどく退屈で、やるべきことは何も見つからなかった。麻薬とセックスと音楽に明け暮れた日々の中で、映画は強烈な魅力にあふれていた――。
20年振りに、ロサンゼルスで、ヨウコと再会した。センチュリー・シティにあるホテルのバーに現れたヨウコは、相変わらず痩せていて、化粧気がなく、ゆったりとしたニットのワンピースがよく似合っていた。わたし達は、バーが閉店するまでいろいろなことを話した。あんなにたくさんセックスしたのはあの時だけだったわよ、と7杯目のコニャックを飲んだ後でヨウコはそう言った。ボクも同じだ、と言うと、嘘つきなのは変わってないわね、とほとんど皺のないきれいな顔でヨウコは、楽しそうに笑った
この小説は「69」の主人公が専門学校へ進学した後のエピソードを編んだものだ。時系列としては「69」と「長崎オランダ村」の間に位置している。というわけで、やはり村上龍本人を髣髴とさせるので読んでいて少し萎える部分もある。しかし、この世代を主人公にしたわりに、やさぐれた位置にもスノッブな位置にも凡庸な位置にもシフトせず、独特な冷静さを持った主人公を描き出していて、この3部作の中では一番好きな作品だ。短編は各々映画のタイトルをつけられているが、その映画は作品中にある種の象徴として提示されるだけで、特に知らなくても十分に楽しめる
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