漫画家、岡崎京子の代表作

傑作ぞろいと言われる岡崎京子作品のなかでも、誰もが「代表作」と言い切る作品。90年代はじめの「都会」に生きる高校生たちの姿を描く。河口にほど近く、広く、ゆっくりと澱む河。セイタカアワダチソウが茂るその河原で、いじめられっこの山田は、腐りゆく死体を発見する。「自分が生きてるのか死んでるのかいつもわからないでいるけど/この死体をみると勇気が出るんだ」。過食しては吐く行為を繰り返すモデルのこずえもまた、この死体を愛していた。ふたりは、いつも率直で、「かわいい」ハルナにだけは心を許している。山田を執拗にいじめ抜くハルナの恋人、一方通行の好意を山田に寄せる少女、父親のわからない子どもを妊娠するハルナの友人。それぞれに重い状況を抱えた高校生たちがからみ合いながら物語は進行する。そして、新たな死体が、ひとつ生まれる

本書は、93年から94年にかけて雑誌「CUTiE」で連載され、94年6 月に単行本化されたものの愛蔵版である。発表当時から多くの若者の心をとらえ、何年経ってもその評価が揺らぐことはなく、新たな読者を獲得し続けている。もちろん「若者」であっても、共感できる人もいれば、できない人もいるはずだ。だがはっきりと言えるのは、本書が「読み物」としての興奮を存分に読者に与えてくれるものだということ。痛ましく、凄まじいこの物語に、きっちりと「おとしまえ」をつけて描き上げることのできる著者の圧倒的な力量には、誰もが魅せられるはずだ

レビューを書こうと思ったらかなり的を得た商品紹介があり、言いたいことはすべて書かれているので上記のレビューを参照されたし

この作品は主人公のカンナの視点で描かれる。多少の良識と、幼さと無邪気さを持つ主人公が、山田という感覚の麻痺した離人症気味の男子と心を通わすというのが軸になり、この作家の売りである若年層特有の価値観の描写が脇を固める。平凡でフラットな位置に置かれる主人公を際立たせるために周りの環境を刺激に過敏な人々という風に設定していて、刺激そのものに麻痺した山田と、刺激を供給する側に属し、結果として麻痺している吉川こずえというキャラクターを配置し、主人公を含む彼らの生き様を描くことで、若年層がその時期において感じることの出来る特殊な空間や情緒を見事に描き出している。成熟の一過程を切り取っていると言うべきか

若年層特有の表面的な強さの描写と心情描写の際のある種の冷静さはいつものようにディフォルメされつつもバランスが絶妙だ。この視点はやはり得がたい

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