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2004年9月1日 音楽
レディオヘッドが生んだ名盤

共同プロデュースにセカンド・アルバムの制作時にエンジニアとして(一部プロデュースにも)関わっていたナイジェル・ゴッドリッチを迎えた本作品は、バンド自身が初めて主導権を持って自分達の望む音楽を自由に追求したアルバム。UKギターロックがたどり着いた1つの大きな成果ともいえる、重要な作品である。ギターサウンドを中心としたバンドアンサンブルはこれ以上ないほど洗練され、崇高さまで感じさせる。そしてなんとといっても、トム・ヨーク自身の内面に巣くう不安や絶望感を赤裸々につづった歌詞と、ネガティブな感情を昇華するメロディがすばらしい。安易な享楽主義に逃げることなく、あくまでも現実を見据えながら、ロックミュージックの可能性を探り続けるレディオヘッド。音楽史上最も誠実なバンドとして記憶されることだろう

The Bends」まで積み上げてきたギターロックに、エレクトロニクスを効果的に使用。より幅広い音楽となった。不気味なイントロから始まる“Air Bag”、今日ライブではおなじみになった、不規則なリズムと多彩な曲展開の“Paranoid Android”、「This is what you get」と哀愁漂う歌詞、心に染みるアコギ&ピアノの“Karma Police”この後に続く、声だけの“Fitter Happier”もアルバムの展開としておもしろい。“Let Down”や“No Surprises”では優しいメロディーを奏でている

この作品は近年のロックを語る上では避けては通れないという位置になってしまったらしい。実際聴くと、他のどのアーティストの作品にもない魅力が確かに存在するとは思う。その魅力は楽曲の求心力の強さとそれに見合わない温度の低さ、そして緊張感がありながら陰鬱で陶酔感のあるメロディあたりだろうか

ただ、この作品は“聴いた時の心地よさや安らぎやカタルシス”というものがいわゆる“ロックバンド”が志向するものとは一線を画していたようだ。その繊細さ、メロディの美しさ(としか表現のしようがない)と、聴く人間にどこまでも真摯な姿勢を要求するような世界観は、当時から現在にかけてのロックにありがちな「表現者の自我に自己同一化する、もしくはアートフォームの提示を理性的に楽しむ」という楽しみ方のみならず、個人の感覚に訴える。ようするに、楽曲を“自分の感情”として実にスムーズに置き換えることができるのだ。それはおそらくこの作品の世界観と楽曲の温度の低さによるものだろう。既存のロックバンドが与えるカタルシスは一過性だが、この作品は温度の低さゆえ日常レベルの感情に共振するのだと思う。そして、聴く人の感情をある一定の安定した感情の型に落とし込んでくれる

それはいわゆるロックバンドの魅力とは異なったもののように思える。だからこそ、このバンドが世間的にシリアスなバンドとして扱われているのを見るとなんとなく違和感を感じてしまうというか

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