絡新婦の理

2004年9月6日 読書
作家、京極夏彦の妖怪シリーズ5作目

当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな――2つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。房総の富豪、織作(おりさく)家創設の女学校に拠(よ)る美貌の堕天使と、血塗られた鑿(のみ)をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らせた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?

この作品は、犯人と京極堂の対峙するシーンから始まる。そこから時間が巻き戻り、異なった場所で起こる連続殺人事件を各々の事件における“主役”からの視点で描く。その2つの連続殺人事件と、まるで関係ないかのような登場人物たちの動きが、真犯人の張った“蜘蛛の巣”の上に乗っていることが分かり、やがてひとつの事件として収束していく。前作ではまったく登場しなかった刑事の木場が物語の主役の一角を担い、前作で出た刑事の益田が探偵に弟子入りし、京極堂の“憑物落とし”は都合4回行われる。そして、テーマは「昭和初期の日本における女性の社会的な位置」に設定されている。とはいっても、物語に必然性があるように絡めてあるので馴染みの無い方もある程度理解できるように配慮されている

この作品は構成が非常に上手いので、量の割にはさくさくと読めるし、読後感も良い。現代にも通じるテーマを描いているが、それは前作「鉄鼠の檻」で俗世間から離れた世界を描いた揺り戻しなのかもしれない

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