作家、京極夏彦の妖怪シリーズ6作目、前編

宴の支度は整いました――。京極堂、挑発される。

「知りたいですか」。郷土史家を名乗る男は囁く。「知り ――たいです」。答えた男女は己を失い、昏(くら)き界(さかい)へと連れ去られた。非常時下、大量殺戮の果てに伊豆山中の集落が消えたとの奇怪な噂。敗戦後、簇出(そうしゅつ)した東洋風の胡乱(うろん)な集団6つ。15年を経て宴の支度は整い、京極堂を誘い出す計は成る

この作品は短編集の体裁を取っている。一つ一つの物語は、今までの作品に登場してきた人物が主役となり、各々で完結している。そして、その間を紡ぐように小説家関口の独白が挟まれる。これは、最初に雑誌で発表された作品に書下ろしを加えることで、後半、一つの物語に収束していく前フリという意味合いを持たせているようだ。「百鬼夜行 陰」という作品でも今までの登場人物のサイドストーリーを描いているが、この「塗仏の宴―宴の支度」はそこから着想を得たように見受けられる

この作品は今までの各作品(=事件)に登場していた人物が何人か出てきて、並列に並べられる。この作品の時点では絡むこともないが、その分後編への期待感を煽られるように描かれている。各々の作品にはそれぞれ妖怪の名前が付けられていることから、妖怪=事件ということでもあるらしい。この作品の時間軸としては前作「絡新婦の理」の10日後ということなので、前作から続けて読むと一繋がりの物語を読んでいるような感覚を味わうことができる

単体で読んでもそれなりに面白く、後編を読むとさらに面白さが増すというような構造なので前後編に分けられたのだろうか。もちろん以前の作品を読んでいなくても問題なく楽しめます

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