PiCNiC

2004年9月22日 映画
岩井俊二監督作品

『Love Letter』の岩井俊二が『スワロウテイル』との間に、人気シンガーCHARAをヒロインに撮った自主映画的アナーキーなメルヘン。妹を殺したココは、入院させられた精神病院で、ツムジとサトルという2人の青年と知り合う。彼らは施設の塀の上を歩く探険を楽しんでいた。やがて、地球が滅亡するという妄想にとらわれた彼らは、滅亡を見届けるために、塀の外に出てはいけないという規則を守りながら、塀から塀へとつたって海を目指してピクニックに出かける。ピクニックの間に出会うさまざまな人々との交流に、日常への批評を読みとることもできる哲学的な深みを、岩井の軽やかな映像がポップに仕上げている。なかでも鈴木慶一のとぼけた神父さんが印象的である。CHARAと浅野忠信夫婦の出会いの映画としても要チェックだ

この作品は、観終わった後、非常に変わった後味を残す。そもそも閉塞的な位置にいる登場人物達から見た世界という趣旨なので、彼らのパーソナリティーに寄った、鮮やかで物悲しい描写が多い。その物悲しさというのは、彼らの子供じみた、それゆえに純粋で現在の社会から全く乖離した感情表現と行き場の無い独自の世界観に拠るものだろう。同じような人物造形で幸せな結末を迎える作品もあると思う。しかしこの作品の主人公たちはあまりにも無防備で、現実社会との意識の刷り合わせを行っていない。その為、愛情表現の発露として最後の結末が用意される

この作品での岩井俊二の演出は、純粋さゆえに見つける風景を徹底的に描写しており、それを観ているこちら側に逆説的に世界の残酷さを伝えるというような意図が見える。ただ、全編にわたって発せられ、ラストで爆発する主人公たちの感情の“強さ”は胸を打つはずだ

個人的にはトラウマになるほど印象に残った作品
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