イザベル・コヘット監督作品

23歳という若さで、がんで余命2か月と宣告されたアン。彼女はやり残したことをノートに10コ、書き留める。オシャレのこと、ふたりの娘のこと、そして夫以外の男と付き合ってみること…。リストを作ったときから、アンの平凡だった人生がイキイキと動きだした。死を目前にしながらも、その事実を誰にも明かさず、リストを作って実行していくことで、死の恐怖を回避し、幸せで甘い幕切れを求めるアン。自分の不運な運命を知っても、決して動揺せずに、残り少ない人生を最上のものにしようとするヒロインの強さが感動的。この役をほぼスッピンの自然体で演じたのはサラ・ポーリー。彼女が好演があったからこそ、アンという女性の短い人生は美しくスクリーンに息づいたといっても過言ではない。難を言えば、愛人になる男性(マーク・ラファロ)が魅力薄だったこと。夫役のスコット・スピードマンの方が華があり、逆のキャスティングだったら、感動も倍増したかも。とはいえ、死に向かっていく女性の人生を実に丁寧につづったイザベル・コヘット監督(&脚本)の手腕は見事。ペドロ・アルモドバルが彼女の才能に魅了され、製作を買って出たのも納得の映画である

17歳で結婚し、職の不安定な亭主・2人の子供とトレーラーハウスで暮らし、清掃員をしている23歳の主人公。家庭も上手くいっており、特にこれといった不満もない。その彼女が余命2ヶ月と宣告され、それを誰にも言うことなく来るべき日への心の用意をしていくというのが話の大まかな流れだ

この作品は、主人公はやがて死を迎えるという結末がすでに確定しており、そこに向かっていく主人公の心の機微を細やかに描写している。過剰な演出は全くなく、淡々と日々の生活がつづられ、その合間に主人公は“10のこと”を一つずつこなしていく。普段の心温まる日常を壊すことないよう細心の注意を払い、穏やかに死を受け入れていく主人公の周りへの気遣いには悲しみを覚える。こういう作品にありがちな主人公の葛藤を全く描かないところも好感が持てた。観終わった後穏やかな感動が残る作品

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