For Beautiful Human Life

2004年10月20日 音楽
キリンジの5thアルバム

『FINE』以来、約2年ぶりとなる通算5枚目のオリジナル・フル・アルバム。シンプルなバンド・サウンドが新鮮な「奴のシャツ」でスタートする本作は、シビアに抑制されたメロディと洗練の極みを感じさせるアレンジワーク、背筋が冷たくなるほどの完成度を持つ演奏がひとつになった、恐ろしいほどに美しいポップ・ミュージックがたっぷりつまっている。いつになく奔放で、カラフルな音楽性をたたえたソングライティングも印象的。キリンジが持つ無尽蔵の音楽的ボキャブラリーがわかりやすく表現された作品だ

この作品は前作からの流れに沿い、曲は多少難解に、印象は地味になっている。打ち出される世界観もどことなく暗い。シングルの「スウィート・ソウル」と「カメレオン・ガール」ではこのアーティストのパブリックイメージを踏襲しているが、アルバム内の楽曲は、ポップなメロディに柔らかい声質、そして独特のシニカルな歌詞という持ち味のバランスが崩れ、楽曲の心地よさが減退している。“遊び心”が消え、楽曲に対する演奏面や歌唱の取り組み方がシリアスになっているというか。楽曲が全体的にカタルシスを感じるタイプのメロディラインではないということもあるのかもしれない。ただ、そういうアプローチをした結果として、楽曲のクオリティと完成度はかなり高い。これは果たして“成熟”なのか、それとも今作限りのコンセプトなのか・・・

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

日記内を検索