花とアリス

2004年11月5日 映画
岩井俊二監督作品

岩井俊二監督が、高校生たちの揺れ動く心情をリリカルで繊細なタッチでつづった青春ドラマ。ネットで配信した4つの短編が、長編作品として再構成された。あこがれの先輩を「記憶喪失」だと信じこませ、つき合い始める花と、彼女の親友アリス。3人の微妙な思いがもつれていく。細かいカットで紡がれるオープニングから、花とアリスの自然な会話に引き込まれる。恋の成就のための無謀な嘘や、親友が恋敵になるといった一見ありふれた展開も、演じる鈴木杏と蒼井優の等身大の演技で、高校生の生き生きとした日常に転化。通学中のときめきや海辺のデート、バレエ教室での稽古風景などノスタルジックな映像に、岩井監督自身が作曲した音楽が絶妙にかぶさる。物語に感動するとか、興奮することはないが、観ていること自体が心地よく、知らぬ間に胸をヒリヒリさせる一篇。やはり岩井俊二はただ者ではない

この作品はキットカットの食頑として製作されたショートフィルムがベースになっている。ショートフィルムのほうは花とアリスと宮本の出演が物語のほとんどを占めるが、映画のほうは阿部寛、広末涼子、大沢たかお、ルー大柴、大森南朋、叶美香、テリー伊藤などがチョイ役で出演しており、賑やかな印象を受ける

内容のほうだが、花とアリスと宮本の微妙な三角関係を描く部分が軸となり、あとは物語の大筋には関わらず3人の人物造形に費やされている。一方通行の恋を成就させようとする花に対してそれを面白がっているアリスという関係も変わらない。強いて言うなら、ショートフィルムと今作の最も違う点は、主役が「花」から「アリス」へと代わっていることだろう。花の恋愛感情に戸惑う宮本という絵がメインとなり、宮本が友達のアリスへ惹かれていくのを知りながらどうすることもできない花というおおまかな流れは同じだが、映画ではアリスと宮本が直接的に関わるシーンが増え、また様々な形でアリスを魅力的に描いてあるため、宮本がアリスに惹かれていく感情が納得できる。逆に花のほうは自分の恋愛を成就させるためなら手段を選ばないというような描き方をされているため感情移入しにくくなっている。しかし、結果としてアリスを主人公に据えたことで、描き出した少女の魅力的な部分は普遍性を持ったように思う

ちょっと気になっていることがある。オーディションを受けたアリスが椅子に座り、それを面接官が見ているというアングルで撮ったシーンがある。面接官は声のみで、場慣れしていないアリスが受け答えをしてる表情を捉えている。ただ、その面接官の声はどう聞いても吉岡秀隆なんだが・・・。出演者に名前が載っていないのは何故だろうか

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

日記内を検索