ミュージシャン、大槻ケンヂが描く青春群像劇の完結編

冴えない高校生・大橋賢三。学校を中退し、女優への道を歩み始めた山口美甘子に追いつこうと、友人のカワボンらとバンドを結成したが…。80’sの「青春モンモン」な子どもたちを描く物語の完結編

バンドを結成したは良いものの居場所を見つけられず、ヒロインへの焦燥感と恋愛感情はすでに畏怖の感情にまで昇華されていた。必死に心の均衡を保つ主人公のもとにあるニュースが飛び込んでくる。女優であるヒロインが共演したアイドルとセックスしたというもので、ご丁寧に写真付きだった。そのインパクトに壊れてしまった主人公は鬱屈した日々を過ごし、死を身近に捉え始める。同時進行していた女優と高校生の2つの物語が徐々に絡み合い、主人公はヒロインに対峙する事を迫られるが・・・

この作品は主人公である賢三が回復していく様を中心に描いている。そして、ヒロインの住む世界(=憧れている表現の世界)に触れることにより、妄想の末に肥大した憧れの世界と自分との位置と距離を現実的に把握し、再び表現のほうへ歩みだすという物語になっている。抱えた問題もしょうもなければ、解決方法もしょうもないが、男子高校生なんてそんなもんだろうし、それでいいと思わせるような展開で、最後はすがすがしく終わる。個人的には楽しく読めた

この作品は完結編ということで、作者が前作「チョコ編」で公約した「登場人物を皆幸せにする」という部分においては申し分の無い出来になっている。ただ、この作品が始まってから11年の歳月が流れ完結したため、作者自身の自伝的な小説という意味合いは薄れ、完全なフィクションになっている。また、その間に作者の文章力も少々上がりそれなりに読めるものに仕上がっている。3部作の完結編としてはそれなりに納得のいく作品。ただ、自伝的意味合いを失ったことで単なる娯楽小説になった感はあるが・・・

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