Elephant

2004年12月14日 映画
ガス・ヴァン・サント監督作品

米コロンバイン高校の銃撃事件を題材にして、ガス・ヴァン・サント監督がカンヌ国際映画祭でパルムドールと監督賞を受賞したセンセーショナルな一作。事件の当日、生と死の運命を分けることになる高校生たちの日常を追いかけながら、加害者2人が犯行に至るまでのドラマが進行していく。生徒ごとに章立てされた構成。ユニークなのは、それぞれの生徒の後ろをついていくカメラワークだ。スムーズな映像の動きと、それぞれの視点で映し出される校内の風景を通して、各人物の個性や人間関係が浮かび上がってくる。極端なダイエットやいじめなどを描いた何気ない日常も、その後、血に染まる光景に化すと思いながら観ると、かなりスリリングだ。もっとも緊密感があるのは、加害者2人の部分。監督は、彼らの動機を明らかにするわけではなく、その行動を冷徹にとらえる。惨劇シーンは目を覆うばかりだが、映画全体は、リリカルな映像とクラシックの音楽の効用で心地よい空気に覆われ、映画初出演のキャストたちがみずみずしい存在感を放つ。不思議な後味を残す一作だ

商品紹介がしっかりとしているので見所は上記を参照されたし

この作品は“日常の平熱感”を描き出すことに重点を置いているように思える。アンチクライマックスの連続である日常で登場人物達はいつもの一日を過ごしている。そこには説明的な台詞も思わせぶりな演出も華やかさも無い。非常に長回しのカメラワークと、シーンを異なった登場人物の視点から捉え直す演出の積み重ねにより、リアリティのある学生の日常を立体的に構築してある。内容的にも事件のあった一日を切り取るというニュアンスで、事件に対する考察も無ければ加害者の心境に踏み込むといったことも無い。日常が一瞬にして壊れる様をあくまで淡々と描写するだけだ

ある意味“非日常”を提供する映画というメディアで“日常”に重きを置いたこの作品は異彩を放っている。ただ、実際の事件を基にしたこの作品には監督の“鎮魂”の意思を強く感じた

賞を受賞したのも頷ける良作。おすすめ

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