GUNSLINGER GIRL

2005年2月25日 漫画
漫画家、相田裕が描く人間ドラマ

この作品の主人公は、元は体に障害をもっていたが、試験的に機械の体を与えられ、その代償として政府のために汚れた仕事をする少女達。洗脳されて毎日訓練と暗殺をこなしている。だが決して彼女たちは自分が不幸とは思ってない。おおよそ、日本人には想像もつかない事だ。かなしく、人によっては残酷にさえ感じるだろう。間違った幸せだと思うだろう。だからこそ読んで欲しい。人によって、ちがってくるだろうが、読んだら絶対に、人の幸せについての考え方が変わる。個人的には、この作品は単なる漫画としてではなく、相田裕さんからの、命の重みを知らない現代の少年への遠回しの語りかけだと思って欲しい。(単なる漫画として読んでしまうと、残酷に思うだけの人も出てくかもしれない。実際、誤解してる人もたくさんいるようですし)

様々な形で障害を持った子供たちを集め、サイボーグ的な手術を施し薬で人格を従順に抑えて、諜報機関の人員として活動させる機関、「公社」。そこで活動している少女たちは一つ屋根の下で暮らし、年齢相応の夢を見る。そんな彼女らを含む公社の活躍を庇護者である担当者や組織、そして彼女ら自身の視点から多角的に描く

この作品はテーマが重い上に、少女たちの不必要に萌え系の絵柄も相まって読者層をかなり限定してしまう気がする。彼女らの不幸な出自を執拗に描くので、そこから救われた上で結局は無慈悲な大人の世界で駒として利用されているだけのペシミスティックな世界観が貫かれていると一読して思った。暖かみや情緒というものを排した冷徹な諜報機関の価値観で物語は転がり、未発達な少女は与えられた環境で小さな幸せを見出しつつ仕事につくことになる。しかし、執拗に描かれる少女たちの出自は、現在の抑圧された状況をさらに上回る凄惨なもので、作者が提示する世の中の暗部と比較すると現在の彼女らは幸せという図式になる

上記のような命の重みを相対的に描き出しているという意見もあるだろうが、それが事実だったとしても作者の意図が充分に伝わったとは言い難い。まだ4巻しか出ていないので断言は出来ないが、主人公たちの萌え系をあえて狙った絵柄(それ以外の絵柄も描ける技量をもってして)と情緒を排した作風は、一部の嗜好に媚びたものに思えた。命の重みを伝えようとしているとして、作者のぶつける価値観が読者を啓蒙できるかどうかは微妙なところだ。ただ、主人公たちが「銃夢」的なタフな価値観である人物造形ならこの作品から受ける衝撃はほとんど無くなってしまうとは思う。次巻に期待

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