人生を救え!

2005年4月15日 読書
町田康×いしいしんじの共著

作家の町田康が毎日新聞日曜版に1年間連載した人生相談と、いしいしんじとの路上対談を収録した『人生を救え!』。町田初の人生相談、対談集だが、小説やエッセイで見せる独特の音楽的なリズムと言い回しが本書でもさえる。リラックスした雰囲気のなかで行われた対談では著者の素の部分が少し見えるのもファンにはうれしい。前半の人生相談「どうにかなる人生」では、彼氏ができないという人に「心を開いて夜な夜なワイルドサイドを歩き回ろう!」とアドバイスし、明るい性格になりたいという人には落語を聞いて「キュートな失敗」をたくさん勉強することをすすめる。後半の録音も自分たちで行った20時間の対談「苦悩の珍道中」は関西弁による掛け合いが絶妙。丸の内、お台場、浅草と対談場所を移し、そこにある人生を前にした2人からはおかしくて鋭い発言が次々と飛び出す。仕事の悩みは丸の内で、恋愛についてはお台場で語り、浅草では悩みも「ブチ飛ぶ」強烈な行灯に出会う。現地で撮影されたおかしいような悲しいような写真も多数収録されている。「溺れてる人と一緒に溺れ」ながら導き出した人生相談の答えや対談で語られる内容は、おかしみと愛情、ときに怒りにあふれてはいるが、どこか冷静な部分を残している。町田は人生の明確な答えを与えてくれるわけではない。ひょい、と新しい視点を提示するだけだ。だが本書を読み終わったとき、その視点が、悩みでパンパンにふくれた心に小さな穴をあけ、風通しを良くしてくれたことに気づくだろう

何故か商品紹介が異様に充実しているので上記を参照されたし

この作品は2部構成になっている。前半部分は町田康が人生相談に答えるというものだが、悩みの内容が一般的で普遍性のあるものが多く、それを受けて町田康が“笑い”の要素を最優先した回答を述べる。そういう形の一種の芸を見せるのが主旨のようなので真面目な内容は期待しないほうが吉。しかし、町田康の相談者への対応は丁寧なので「あなたが悩んでいるのはよく分かった。しかしあいにくと自分にはそれに答えるだけの技量がない。だからあなたの悩みをこちらは真剣に受け止めるが効果的なアドバイスは期待しないで欲しい」というようなスタンスに見える。その結果出てくる回答はどれも面白く、腑に落ちることも多い

後半は町田康といしいしんじの対談で、東京の街を歩き回りながらネタを拾い話しをそこから膨らませていくといった構成になっている。人間観察をしたり店にあれこれ入ってみたり風景を楽しんだりしつつ対談を進めるが、そういった主旨なので話があちこち飛んだり視点が変わったりで多少散漫な印象も受ける。掛け合い漫才風のやりとりがベースだが、ネタにした事を真面目に考察する事を基本姿勢にしているようだ。それなりに含蓄のある部分もあるが基本的には気楽に読める内容

相談者の悩みを笑いに持っていく際の配慮やバランスが絶妙で、町田康の真面目な顔をして適当なアドバイスをするスタンスが笑える作品になっている

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

日記内を検索