漫画家、黒田硫黄の短編集
作品紹介が充実しているので上記を参照されたし
様々な雑誌に発表した初期の短編を編んだ作品。90年代はこういった短編も定期的に発表する活動をしていたようだ。そういった活動の受け皿も現在より多かったように思う。7年間という長い期間のあいだに発表した作品を収録している割には、筆を使った独特のタッチや牧歌的な絵柄、シュールともいえる独特の読後感というこの漫画家の魅力は初期の作品からある程度完成されている
この時期の作品は、良さや面白さがより分かりやすく伝わりやすくなっている現在と違い、少々ひとりよがりな印象を受ける。現在は良くも悪くも作品から受ける魅力や温度や柔らかさが一定で作者の色のようなものが固まっているが、この時期は読後感が短編ごとに違う。あれこれと試行錯誤していたからだとは思うが、結果的にこの作品は一つの作品として見た場合非常に面白い。おすすめ
1993年から1999年に発表された11の短編を収録した黒田硫黄の第1短編集。デビュー作「蚊」、カラー作品「西遊記を読む」、漫研時代の作品「熊」「南天」、同タイトルの手塚治虫作品のカバー「メトロポリス」、よしもとよしともと原作による「あさがお」など、初期のさまざまな試みを堪能できる。そのほか描き下ろし作品「まるいもの」、あとがき、雑誌「ユリイカ」に掲載されたエッセイ「西遊記とわたし。」も収録されている。
印象的なのが、「象」をモチーフにした2作品。ひとつは、同棲相手に家財道具と共に逃げられた少女が隣の部屋に巨大な象がいることを知り、心を寄せてゆく「象夏」。もうひとつは、やはりアパートで象を飼っていた男が、散歩の途中で鯨を飼っているという少女と出会う「象の散歩」。象という多大な重量を持った「野生」が都会の日常のなかにあることの違和感と、大きなものに圧倒される心地よい興奮が押し寄せてくる。どちらの作品でも、主人公たちは象を手放さねばならない状況に陥り悩むものの、最終的には「象は象でやってくさ」(「象の散歩」)と拍子抜けするほどにさっぱりと、象に別れを告げる。黒田作品全体に流れる、物事に拘泥せずに手放す潔さ、すがすがしさを強く感じさせる。象の荒々しく、どこかなまめかしくもある姿を最高の構図で表現する画力も見事。筆を多用し、黒々とした線で描く黒田独特の技法も、象という素材とぴたりと合っている
作品紹介が充実しているので上記を参照されたし
様々な雑誌に発表した初期の短編を編んだ作品。90年代はこういった短編も定期的に発表する活動をしていたようだ。そういった活動の受け皿も現在より多かったように思う。7年間という長い期間のあいだに発表した作品を収録している割には、筆を使った独特のタッチや牧歌的な絵柄、シュールともいえる独特の読後感というこの漫画家の魅力は初期の作品からある程度完成されている
この時期の作品は、良さや面白さがより分かりやすく伝わりやすくなっている現在と違い、少々ひとりよがりな印象を受ける。現在は良くも悪くも作品から受ける魅力や温度や柔らかさが一定で作者の色のようなものが固まっているが、この時期は読後感が短編ごとに違う。あれこれと試行錯誤していたからだとは思うが、結果的にこの作品は一つの作品として見た場合非常に面白い。おすすめ
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