Φは壊れたね

2005年4月23日 読書
ミステリ作家、森博嗣の新シリーズ

N大学の学生である山吹は知人宅へ遊びに行き、同マンション内で起こった殺人事件に巻き込まれる。S&Mシリーズから数年後を舞台にした、新たなキャラクター達によるN大ミステリ。西之園萌絵や犀川創平もゲスト出演する新シリーズ

この作家の代表作といえる「S&Mシリーズ」を踏襲した舞台設定のミステリ。因みにS&Mというのは「犀川&萌絵」の頭文字から来ている。N大学の助教授である犀川と学生で理事長の娘であるお嬢様西之園萌絵のコンビが様々な事件の謎を解いていくというシリーズで、謎を解いた=解決したということにならない展開をもってくるのが特徴だった。登場する犯人は理知的な人物が多くこの作家の“知性”を最優先するという傾向の所為で彼らへの敬意は生まれ、結果として探偵役である犀川達は犯人を指摘し彼らの話を聞き謎を解くという部分までを担い、警察の手へ渡すところまでは踏み込まない。そういったスタンスの作品である為、独特の読後感があり人気作になったと思う

この作品はS&Mシリーズから数年後のN大を中心に繰り広げられる。山吹、海月、加部谷という新キャラクターをメインに据え、大学の先輩である西之園萌絵を筆頭にS&Mシリーズのキャラクターが多数登場する。しかし、あくまで視点はメインキャラの3人に絞られており、加部谷というおっとりした女性が読者の視点を担い、海月という無口な青年が探偵役をすることになる。西之園が警察関係に顔が利くという設定のため事件の情報を提供する役割を果たしている以外は、ほとんど顔見せに留まっている

S&Mシリーズの魅力の一つに学園モノという側面があったが、それはこのシリーズでも踏襲されており、大学生の日常を魅力的に描いている。ミステリとしては正直今一つという印象。ただ、キャラクターが各々立っており、S&Mシリーズとの関連付けも自然なので個人的には結構面白く読めた。第一作としては上々の滑り出しだと思う。次作に期待

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