YASHA 夜叉

2005年5月16日 漫画
漫画家、吉田秋生が描くSFアクション

沖縄の離島で母親と暮らしていた少年、有末静(セイ)。ある日、彼は米国の製薬会社ネオ・ジェネシス社直属の部隊に襲われ母親を殺された上、誘拐されてしまいます。静は、自分の天才的な頭脳と遺伝子を狙ったネオ・ジェネシス社で6年間研究を続けたあと帰国。沖縄時代の親友が住む東京の大学で、ウイルスの研究を始めます。昔の仲間と出会えて、ひとときの幸せを味わう静の所へ、またもネオ・ジェネシス社の部隊がやってきます。目的は、静の強制送還。しかし、静はここで反抗し、部隊を倒してしまいます

主人公・静(せい)はバイオテクノロジーの研究の結果生み出された卓越した能力を持つ人間。運動能力・知能共に優れており、彼はアメリカの研究機関の庇護下に置かれている。静は郷愁の念を持ち日本へ帰国し友人たちとの再会を果たす。静は同じ遺伝子から生まれた彼と同じ風貌の弟・凛(りん)と邂逅するが、世界に対し偽悪的な態度を取る凛の振る舞いは徐々に日本という国を震撼させていく

結論から言うと、この作品は「BANANA FISH」の二番煎じになっている。物語の構築や転がし方や設定などはバージョンアップしているものの、物語の魅せ方や作品から受ける面白さの質が非常に似ている。前作のアッシュ・リンクスが2人居たらどうなるか?というような話と思えば当たらずとも遠からず。そして、前作にあったような主人公の多面性を2つに切り離したことによって登場人物には詰めの甘さがあり、紋切り型に描かれているように思える。良く言えば作者の芸風として完成され洗練されているといえるし、悪く言えば泥臭さく心に訴えかけるような感情表現がきれいに排除されているというか。いわゆる汚れた表現は凛の側に集中し、静の側だけにポジティブで暖かな感情表現が見られるというように役割をあからさまに分担している。その為キャラクターが軽く見えてしまう。強いて言うと三上尊というキャラクターの内助の功と友情は前作には無い部分かも知れない。物語が終盤に入り煮詰まってくる展開で前作で活躍したキャラクターをキーマンとして出してくるあざとさにはがっくりきてしまった

主人公である静はアッシュに比べると人間的な部分で劣っている部分が目に付く。包容力やリーダーシップや、底辺を知っているが故の心の機微に精通した部分とそれゆえに相手の感情を操る言動は、静には見られない。そう描くしかなかったのだろうが、結果として作品全体が「BANANA FISH」に一段劣る印象を受ける。様式だけを継承してもしょうがないと思うのだが

なんにせよ、実を結ぶかどうか判断するのは「イヴの眠り」を見届けてからでも遅くは無いはず

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