作家、村上春樹の長編三部作第三弾
“僕”を主人公に据えた3部作の完結編。正確には「ダンス・ダンス・ダンス」という作品で完結するが、その作品までの間に6年間のブランクがあり、作者も当初は3部作として描いた模様。この作品で主人公は結婚し30歳になっており、内容的にも青春小説とは言いがたいものになっている
広告事務所に勤める“僕”は、ある日身なりの良い男から仕事についてのクレームを受ける。彼は権力者の秘書であり、“僕”が広告に使った写真の出所を教えろというものだった。その「羊の写った写真」は先日“鼠(ねずみ)”という友人から届いた手紙に同封されていたもので、“鼠”は「この写真を世に出してくれ」と“僕”に頼んでいたのだ。その写真の出所を調べるよう圧力をかけられ、“僕”は奔走することになる
前作・前々作で流れたゆるやかな時間はこの作品ではあまり重要視されていない。しっかりとした話の筋があり、早い速度で物語は転がっていく。ストーリーだけ取るとサスペンスタッチのように見えるが内容はそれほど重くなく、“僕”が今まで暮らしていた社会性の薄い世界に権力者の現実的で社会的な都合が絡むことで、今までに無いほど“僕”は動き回る。どちらかというと情緒よりも話の筋に目が行ってしまうような内容になっている
読んでみると、物語のリズムがあまり良くない印象を受ける。緩急がついているというより、ムラがあるというか。おまけに終盤になるにしたがってスローペースになるので、中盤までのスピードに慣れていると引っ掛かりを感じる。また、ミステリタッチで描いてああいったオチを持ってこられると違和感を感じる。その辺りの違和感は「ねじまき鳥クロニクル」で解消されてはいるのだが・・・
前作・前々作にあった良さがあまり活かされていない。しかし3部作のなかでは質・量共に一番読み応えのある作品。叙情的でないぶん一般層に受け入れられやすいはず
野間文芸新人賞受賞作。1通の手紙から羊をめぐる冒険が始まった。消印は1978年5月北海道発。あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。新しい文学の扉をひらいた村上春樹の代表作長編
“僕”を主人公に据えた3部作の完結編。正確には「ダンス・ダンス・ダンス」という作品で完結するが、その作品までの間に6年間のブランクがあり、作者も当初は3部作として描いた模様。この作品で主人公は結婚し30歳になっており、内容的にも青春小説とは言いがたいものになっている
広告事務所に勤める“僕”は、ある日身なりの良い男から仕事についてのクレームを受ける。彼は権力者の秘書であり、“僕”が広告に使った写真の出所を教えろというものだった。その「羊の写った写真」は先日“鼠(ねずみ)”という友人から届いた手紙に同封されていたもので、“鼠”は「この写真を世に出してくれ」と“僕”に頼んでいたのだ。その写真の出所を調べるよう圧力をかけられ、“僕”は奔走することになる
前作・前々作で流れたゆるやかな時間はこの作品ではあまり重要視されていない。しっかりとした話の筋があり、早い速度で物語は転がっていく。ストーリーだけ取るとサスペンスタッチのように見えるが内容はそれほど重くなく、“僕”が今まで暮らしていた社会性の薄い世界に権力者の現実的で社会的な都合が絡むことで、今までに無いほど“僕”は動き回る。どちらかというと情緒よりも話の筋に目が行ってしまうような内容になっている
読んでみると、物語のリズムがあまり良くない印象を受ける。緩急がついているというより、ムラがあるというか。おまけに終盤になるにしたがってスローペースになるので、中盤までのスピードに慣れていると引っ掛かりを感じる。また、ミステリタッチで描いてああいったオチを持ってこられると違和感を感じる。その辺りの違和感は「ねじまき鳥クロニクル」で解消されてはいるのだが・・・
前作・前々作にあった良さがあまり活かされていない。しかし3部作のなかでは質・量共に一番読み応えのある作品。叙情的でないぶん一般層に受け入れられやすいはず
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