シガテラ 6

2005年8月14日 漫画
漫画家、古谷実が描く青春物

全6巻が完結した率直な感想として、面白いか否かで言えばそれなりに面白かったのが事実だ.しかし「ギャグの深堀」と「リアルの追及」を融合させようとしている作品に見えるのだが、いずれの方向にしても未消化なまま終わっている.著者は『グリーン・ヒル』迄の徹底ギャグ路線から、『ヒミズ』のリアルの痛みのモチーフへと大きく舵を切り、今回そのラインの掘り下げを見せるのか?と思わせる片鱗は作中の多く散見されるのだが、結果としてどっちつかず(作劇上の意図的な仕掛けではなく、テーマそのものが)になっており、残念ながら作品全体として完成度が高いとは言えない.〜今後どのような方向に進むのかは分からないが、「稲中」以来、著者は休み無く連載執筆を継続しており、これは良い作品を生む準備やパワー温存不可能なハードな状態だと想像できる.古谷が卓越した才能の持ち主である事は実績が証明しており、充分な研鑽を積んで作劇のスキルを上げればまだまだ名作を生み出せる余地はあると思う.このあたりでしっかり休養を取るとともに、研究・蓄積を重ね、新たな充実した作品を生み出す事に期待したい

的確なレビューがあったので上記を参照されたし。なんというか、言うべきことはすべて言われているので、特に付け加えることも無いような。

この作品はこの巻で完結したが、振り返ってみると、序盤からの展開とは裏腹に、中盤以降は1話完結的なエピソードを積み重ねるという展開になっていた。主人公が高校を卒業し社会人になるまでを描いてはあるが、主人公がメインでは無いというか。エピソードごとに出てくる人々によって世の中における嫌悪感を抱きがちな部分を描き、主人公にはまっとうさを与えてある、という点は最後まで変わらなかった。「シガテラ」というタイトルの意味どおり、主人公は作者の描く「毒」を引き立たせる為の触媒だったというか。とはいっても、主人公周りのエピソードは作者のギャグやポジティヴな面を披露する役割も担っていたので、中和されて言うほど毒は感じないわけで。

物語の締め方には賛否両論あるようだが、個人的にはこれで良いと思う。なかなか面白かったです。次作に期待。

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