漫画家、深巳琳子が描く中華料理漫画

主人公である李三は、上流家庭の劉(りゅう)家に料理人としてやって来た若者。食べることが何より好きな劉家の奥方である沈(しぇん)夫人も李三の料理に満足している。しかし、沈夫人には料理のほかにもう一つ楽しみなことがある。気が弱くて真面目な李三を困らせることだ。李三は李三で、沈夫人が無理難題を言えば言うほど美味しい料理を作ってしまう。そんな訳で、今日も李三は沈夫人に苦しめられることに・・・。

古代中国を舞台にした料理漫画。上流家庭に雇われた料理人である田舎者の主人公が、雇い主の奥様にいいように翻弄され精神的に絞り上げられながら、とても美味しい料理をひねり出す、という、ソフトSMタッチな話になっている。

主人公はまっすぐで純粋な若者であるがゆえに、沈夫人の美貌にやられてしまい、憧れつつも自分の立場から諦め、結果として隷属する感情だけが残ってしまったというやっかいな立場だ。沈夫人はそれを敏感に汲み取り、主人公の誠実さを逆手にとって精神的にチクチクと痛めつける。そうすると、料理を上手く作ることが自分の拠り所である主人公は、沈夫人の舌をうならせる料理を作ってしまう、という悪循環だ。

ただまぁ、連載が続くにつれ、それがある種の“型(パターン化)”になり、主人公・李三が困り果て料理に打ち込む際のエモーションに感情移入できるようになるところが面白い。「不憫だな、お前。わかるぜ!」という同情心が湧いてくるのだ。もちろん、さくっと嘲笑することも出来るが・・・。

こち亀で両さんが毎回あれこれするも最後は失敗して泣くだとか、サザエさんで勉強をほっぽり出して中島と野球に行ったカツオがどうなるかだとか、ドラえもんで道具を出してもらったのび太が調子をこいた後どうなるかだとか、そういったパターン化された味のある悲哀をこの作品も踏襲しているといえる。この巻になると沈夫人の李三に対するいじめも緩急がついて熟練してきたかという印象。李三の情けなさもある種カッコイイです。次巻に期待。

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