月館の殺人 上

2005年8月30日 漫画
漫画家、佐々木倫子が描く鉄道ミステリ

まだ見ぬ祖父に会うため、生まれて初めて鉄道に乗車する沖縄の女子高生・雁ヶ谷空海。雪の北海道を行く特別急行〈幻夜〉で、彼女を待ち受ける運命とは…? 未曾有のタッグで贈る、至極の鉄道ミステリ


ミステリ作家、綾辻行人が原作を担当し、ミステリとは程遠い作風の佐々木倫子が漫画化した作品。始めるに当たってのコメントで佐々木倫子は「実はミステリが好きで・・・」と述べていたが、その辺は話半分に聞きつつ読むのが吉。独特の飄々とした作風は全く変わらず、しかしながら作者の作風にはまれな“殺人”が起こる為、奇妙な後味を残す作品になっている。

鉄道や電車の全く無い沖縄で生まれ育った主人公は、母の死を契機に祖父に会う為に鉄道“幻夜”に搭乗する。貸切の列車には自称鉄道オタクが何人か招待されていて、彼らとのしょうもないやりとりを挟みつつ列車は雪の中を進む。そんな中、殺人が起こり、現場には世間を騒がせる連続殺人犯の痕跡が残されていた・・・という流れだ。探偵事務所に勤め、定石なら主人公と組んで事件を解決するはずの男性が被害者となることで、探偵役が不在のまま、脇役たちの散漫な意見が飛び交う展開になっている。この辺りは作者の作風を汲んだ原作者の遊び心が垣間見える。

物語はオフビートな笑いを徹底しつつ、ミステリの型を逸脱していない。まぁミステリ作家が関わっている以上当たり前だが、この巻では登場人物紹介と殺人が起こり右往左往する部分しか描かれていない。前述したように、主人公は既存のミステリで登場する、「推理をサポートあるいはミスリードすることで探偵役を引き立たせる」役割しか与えられていない。しかしながら探偵役は不在、という部分がこの作品の面白いところというか。

最後は度肝を抜かれる展開で終わる。先の読めない展開を持ってくるところは心憎いが、これが上下巻あるいは上中下巻で終わるとはどうしても思えないのだが・・・。作者のファンなので、フォローはするが、作品がどういうところに落ち着くか全く読めず。これは術中にはまってますかね?次巻に期待。

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