電車男　3

2005年9月19日漫画

漫画家、原秀則が描く“電車男”

小説、ドラマ、映画に朗読劇と最近噂の話題作「電車男」の漫画版。あの「オタクのまま電車がエルメスを追っかける」という滅茶苦茶なドラマの影響か何かと勘違いされる事の多い電車男だがこの漫画版では原作をかなり忠実に踏襲した形で描かれている。「部屋でパソコンを弄っているシーンの方が多い」というこの作品を如何にして上手く漫画化するか買う前からかなり不思議だったのだが、メールや電車の回想、小説版では分からない他の住民達の様子などほどよく創作を織り交ぜて実にテンポよく描けていた。

また個人的な感想だが非常に見やすくて感じの良い絵柄が印象的。万人ウケするといった感じ。「電車男」という作品の一つの魅力としてセカチューなどとは一味違った素朴な感じというのがあると思うのだがそれを上手く体言できていたと思う。この小さな男の大きな夢の物語をあなたの本棚に是非とも加えてみて欲しい

テレビドラマの最終回に合わせたかのようなリリースタイミングで投下された今作はこの巻で完結。わずか3巻分の分量ながら、膨大な量のログを取捨選択しつつ作者の創作も混ぜている為、映画ともドラマとも違う、ある種現代の“御伽噺”として独自の色を見せている。

映画・ドラマと違い、ネットの住人たちと電車男のスピリチュアルなコミュニケーションに煽りや荒らしやらの不純物を入れておらず、名無しさんたちの意思も「電車男を応援する」ということで統一する方向でデフォルメしてある為、リアリティは損なわれているものの電車男という物語の良質な部分を分かりやすく伝えてくる。また、エルメス像がどこをどう切っても作者の原秀則のキャラクターに消化されていて、原作通りの台詞回しのはずなのに完全に独自のキャラとして成立しているのだ。

メディア展開された作品の中で最も原作に忠実ながら一番メルヘンチックに仕上がっているというのは興味深いところ。読後感も良い。ベテランの力量というべきか。