ウェス・アンダーソン監督作品

天才一家と世間にもてはやされながらも心はバラバラのままに暮らしていたテネンバウムズ家の人々が、再びひとつ屋根の下に集うことになってしまった。アメリカ本国で高い評価を受けていたウェス・アンダーソン監督の日本初公開作。あたかもジョン・アーヴィングの世界を彷彿させるアメリカならではの寓話性の下、シンメトリックな画面構成や、天才であるがゆえに(!?)個性的なキャラクターの面々をファッションで区分けするなど、非常に明快なイメージをもって深みある人間賛歌を描き得ている快作。一家の面々にはジーン・ハックマンやアンジェリカ・ヒューストン、グウィネス・パルトロウなど芸達者がズラリ勢揃い。その卓越した演技合戦も見どころのひとつである

この作品は家族の再生の物語だが、単純に心温まる作品ではない。非常に我の強い、家庭を顧みなかった父親が妻の再婚話を機に形骸化した家族を集めるというもので、理由は全て別れた妻への独占欲からだ。そして、家族をダシに使い再婚話を阻止しようとする。バラバラに暮らしていた家族はそれぞれの問題を抱えており、父親が引っ掻き回すことで事態は混迷の度合いを深めていき・・・

長く別々に暮らし、共通観念の無くなってしまった家族の距離感と、それぞれの個性を強調した演出により、あくまで普通に振舞っている登場人物たちが魅力的に見えてくる。そして、あれこれ画策して暗躍しようとし失敗しても全く堪えないタフな父親が、家族の問題を目の当たりにして現実を知り、形だけのつもりだった家族の再生を徐々に成し遂げていく様は笑えるし、少しばかり感動もする

しかし、“天才一家”という設定は果たして必要だったんだろうか・・・

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