田口トモロヲ監督作品

ロックバンド、SPEED WAYは、人気バンドだったが、ギターの中島は自分の世界を貫くことと、売れることの違いに悩み苦しんでいた。そんなとき目の前にボブ・ディランにソックリの男が現れる。中島は彼に見つめられ、流されている自分を恥じるようになるが、それをきっかけに自分を取り戻していく。みうらじゅんの原作漫画を『木更津キャッツアイ』などの宮藤官九郎が脚色、俳優の田口トモロヲが演出した青春バンド映画。原作者自身、バンド経験があるゆえ、商業主義に巻き込まれ、自分を見失ってしまいそうになるミュージシャンたちの苦悩がリアルで興味深い。とはいえ、その苦悩を絶妙のユーモアとブレンドさせて親近感のわく作品に仕上げたのは、田口監督のセンスとこれ以上ないキャスティングの勝利。主演の峯田和伸の自分を取り繕うとしない素直なキャラは好感度大。また中村獅童、マギー、大森南朋、麻生久美子などが好演している

この作品はみうらじゅんが書いた同名の漫画が原作になっている。そして、バンドブームの頃を舞台にしており(もちろん映画では現代に置き換えてある)、当時の周辺事情を知っているとより楽しめる作品になっている。登場人物もそれぞれモデルとなった実在のミュージシャンがいるようで、峯田演ずる主人公の中島は人間椅子というバンドのギタリスト和嶋慎治がモデルになっているらしい。スピードウェイという中島の所属するバンド自体も人間椅子をモチーフにしているようだ。個人的にはその辺りの事情に明るくないので、先入観の無い立場から見た感想を書かせてもらうことにする

この作品は表現活動に携わったことのある方なら何かしらを感じることができる映画だと思う。何処までも青臭く情けない表現への衝動を金に換えるということが一体どういうことなのかをこの作品は赤裸々に描き出している。ミュージシャンの世間に晒すことのない部分、生みの苦しみや自分が思い描く表現と現実とのギャップに対する葛藤、バンドとして存続していくことの難しさ、経済的な問題などを重くなり過ぎることなくあくまでさらりと描いている。物語の全体にボブ・ディランの歌詞の引用がちりばめられ、それがストーリーとかみ合い含蓄のあるものになっている。出演者も皆それなりにはまり役で、特に峯田(from 銀杏BOYS)はかなりの個性を発揮しており、要所要所で見せる表情は物語を構築する重要な要素になっている。あまり彼の事を知らないので、素ではないかと疑ってしまうが・・・

個人的な感想を言わせてもらえれば、正直泣けた。等身大とは言い難いが素直に共感したし、妙に美化していないところにも好感が持てた。物語の最後に流れるボブ・ディランの「Like a rolling stone」は物語の終着地点として単体で聴くよりも良さが増しているし、ボブ・ディラン自体の良さが分からない方でも納得でき、胸に突き刺さるはずだ

チョイ役で浅野忠信や村上淳、ピエール瀧などが出演しているのも見所の一つかもしれない

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