ポール・トーマス・アンダーソン監督作品

PTAことポール・トーマス・アンダーソン監督の、『ブギーナイツ』『マグノリア』に続く長編第4作。アダム・サンドラー(『ビッグ・ダディ』)とエミリー・ワトソン(『奇跡の海』)という異色カップルが織りなすオフビートなラブストーリーだ。
かんしゃく持ちのバリーとキャリアウーマンのリナの恋を彩るのは、誰かが路上に置いていった小さなピアノ(正確にはハーモニウム)。マイレージ特典の付くプリン、セックスダイアルの女からの脅迫など、現代社会を象徴するアイテムの洪水の中、「パンチドランク・ラブ」=強烈な一目惚れから始まる、ただ一つの「無垢」の行方やいかに。冒頭、静けさから一転して車がクラッシュするシーンからして「PTA節」満載。映像と音を自在に駆使して、場面場面のテンションを操っていく手腕が見事だ。現代アート作家ジェレミー・ブレイクによるビジュアルや、独特のサウンドトラックなどを含め、五感で「感じる」映画と言えるだろう

要領が悪く姉にコンプレックスを感じ、常にいっぱいいっぱいな小心者の主人公。寂しさを埋めるためにテレフォンセックスを利用し、そこから派生したトラブルを抱え込むという部分と、姉が紹介した女性と恋に落ちるという部分がこの物語の軸だ

この作品は主人公に共感できるか、あるいは好意をもてるかどうかが評価の分かれ目になると思う。その部分でつまずくと、彼の取る行動はことごとくうっとおしいものに見えてくる。主人公の描き方が、この監督独特の色といえる、世の中にコミットするためにベストを尽くしているがそれが痛々しく見えるという人物像だからだ。彼に思いを寄せる女性は穏やかで理性的な女性として描かれているが、主人公がそういうパーソナリティーだと描くことで、彼女の彼に対する穏やかで母性的な想いと、彼女のほうからアプローチをする必然性が感情レベルで分かるように構成されている

客観的に観るぶんには全く問題がないが、感情移入してしまうと男性の立場としては、かなりつらいものがある。世間と上手く折り合いをつけようと模索していた時期の事をいやがおうにも思い出させてくれるからだ。その感覚を笑える方ならお勧めかもしれない

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