リアリズムの宿

2004年12月28日 映画
つげ義春原作作品

『どんてん生活』『ばかのハコ船』など、その独自の“間”の演出のユニークさから“日本のジム・ジャームッシュ”の異名をとる山下敦弘監督が、つげ義春の漫画を大胆にアレンジして描きあげた作品。ちょっとだけ顔見知りの、駆け出しの脚本家坪井と映画監督木下は、何の因果かひなびた温泉街へとやってくる。真冬の海で泳いでいた水着姿の少女・敦子と出会うふたり。ふらふらと彷徨うように、3人の旅は続く…。坪井と木下の、その微妙な距離感が、なんとも言えないおかしさを誘う。金もないのに見栄を張りたがるふたりだが、その行動はどこかハズしていて、これまたくすくすと失笑を禁じ得ない。時折交わす鋭い会話の応酬。バディムービーと呼ぶには友情不足、ロードムービーと言うほどドラマティックな盛り上がりはない。あるある感を沸き立たせる空気とちょっとした優越感を感じながら、だめだめなふたりの男を眺めているうち、いつしか共感している自分に気づくかも

この作品は奇妙な後味を残す。ドラマチックでもなく派手でもなく毒も無くどこまでもオフビートで、一見無駄だとも思える長回しのカメラワークが計算されたものだと気づき間の面白さを感じるようになるのに長い時間はかからないはずだ

旅館で飯を食べるシーンや釣りをしているシーンなど、普通なら割愛するようなシーンをメインに据え、台詞もほとんど無く表情と演技だけでニヤリと笑える可笑しさを出している。そして、単に「あぁ、こういうことあるよなぁ」という共感だけに留まらない魅力がこの作品にはあると思う。主人公を含む登場人物の佇まい、生活観を出しすぎた展開、ヒロインの非日常性、舞台となった鳥取の日本情緒溢れる雰囲気・・・それらを包括する独特の“間”がすべての要素を引き立たせ、心地よさを感じさせるのだ。間が全てと言っても良い

シチュエーションによる笑いを何処までも追及しており、楽しみ方をつかんだら失笑ぎみの笑みが続くのは間違いないところ。おすすめ

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