チルドレン

2005年1月12日 読書
作家、伊坂幸太郎の連作短編集

こういう奇跡もあるんじゃないか?まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。吉川英治文学新人賞作家、会心の受賞第1作!

短編集のふりをした長編小説です。帯のどこかに“短編集”とあっても信じないでください。伊坂幸太郎

この作品は、キーとなるキャラクター陣内を軸に、作品内に流れる時間を前後させつつ物語が展開していく。といっても、話は短編ごとにまとまっており、社会人になった陣内の物語と学生時代の陣内の物語が交互に編まれている。各々では語り部となる人物が設定されており、社会人編では同僚の武藤、学生編では盲目の青年永瀬の世界観を中心として、陣内がそこに絡んでくるという形を取る

作者が言うように、この作品はすべての短編を読み終えたとき一つのまとまった話となる。しかしミステリにありがちなトリッキーな意外性というものは無く、どこかとぼけた青春群像劇になっている。成熟した柔らかさを出す北村薫を現代風な若い価値観でディフォルメしたというような印象だ。また、意図的に文章表現を稚拙にしてあるようなので、その辺りはご理解の程を・・・ということらしい。

読後思ったが、この作品はミステリではない。そこに比重を置く方にとっては本を壁に叩きつけることになるかもしれない。ただ、個人的には予想外になかなか良かった。独特のさわやかな読後感は、マニアックさやらオーソドックスな魅力やらをありがたがるミステリの世界では得がたいものだと思うし、赤川次郎的な普遍性に落とし込むわけではなく現代の若者の価値観の一つを踏襲しているのでミステリに馴染みのない方にも受けが良いと思う

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