なんくるない

2005年4月1日 読書
よしもとばななの短編集

沖縄を舞台にした短編を4編収めた作品。観光客の視点から描いた、と作者が言及している通り、作者自身の目に映った沖縄を4つの視点から魅力的に描き出している


この作家の定石どおり、人間関係の中にあるポジティブな視点と、そこから派生する活力をひたむきに享受することを中心に描き、主人公の精神的な高揚と回復が成される。その辺りは「ハゴロモ」と同じテーマだと言えるが、今回はその活力の元が沖縄という土地とそこに住む人々の持つ力という風に設定してあり、多少沖縄賛美の内容になっている

その場合、沖縄についてある程度描けていないと説得力が無いが、土地の魅力はともかくうちなーんちゅのメンタリティと人物造形は的確で、かなりリアリティがあるものになっていた。特に会話の文章は上手くニュアンスをつかんでいると思う。あくまでうちなーんちゅの“他所行きの顔”の描写ということだが

この作者は土地の魅力に依存した作品をいくつか書いているが、今回もこの作者の描く癒しの要素を、日常ではなく“観光地の沖縄”という非日常に依存したものに設定している。「ハゴロモ」にしても、別の土地へ移住して精神的に回復するというものだ。初期の作品にあった、なにげない日常に見出す暖かさや魅力では現在描きたい主人公の精神的なダメージはカバーしきれないということなのだろうか・・・

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