カンヌ映画祭で高評価を受けたセミ・ドキュメンタリー
この作品は80年代後半にあった実際の事件を基にしているらしい。当時は4人の子供を部屋に置き去りにしほとんど援助をしなかった母親に焦点が当たり、あれこれと問題視されたようだ。しかし、この作品では子供を置き去りにした母親の視点ではなく、置き去りにされた子供の生き様を丁寧に描写する
それぞれ父親の違う4人の子供たち。主人公である明(あきら)は、身勝手に遊びまわる母親や去ってしまった父親の代わりに家庭を維持しようとしている。子供たちは明を含め皆母親に対する愛情があるが、母親は新しい男性を見つけ幸せになりたいという願望があり、それが叶うと躊躇なく子供たちを捨て新たな人生を歩みだす。わずかなお金と共に残された子供たちは事態を受け入れきれず、長男である明がなんとか生き延びる為にあれこれと手を尽くしていく
物語が平板でこれと言った展開がないので少々進行が遅いように感じる。金が無いことで水道電気ガスが止められ、コンビニの廃棄を好意で分けてもらい食いつなぐという生活になっていく。着ているものもどんどんボロボロになっていく。生活が追い詰められた頃に不登校の女子高生と出会い“外の視点”が入ることで、彼らの送る生活が明らかに歪んだものである事を浮き彫りにしている
家に閉じこもっている兄弟たちの中で唯一外に出る役割を果たす明は、その年齢相応の楽しみを見出そうとする。ゲームセンターで知り合った友達の心をつなぎとめるために苦しい家計を省みずゲームソフトを購入したり、少年野球に混ざったりする。彼の年齢なら普通である出来事も、彼らの置かれた境遇との対比で輝かしいものとして表現されている
ドキュメンタリーということで、余計な解釈は入れず淡々と話は進んでいく。しかし、庇護下に在るべき彼らが社会的弱者になり生き延びていくさまをひたすらカメラは追う。これが外国の作品であればたくましさの表現などもありそうなものだが、そういったことも特になく、ただ人間が磨り減っていくやりきれなさが残る。物語のクライマックスとして悲劇は起こるが、それを契機に何かが変わるということもない。淡々と日常を送る描写をして物語は終わる
正直、観ていてつらい映画だった。ただ、社会の暗部を描いた作品というよりも、彼らがその状況下で見せる純粋さのようなものを描きたかったのだろうとは思う。主人公たちが与えられてしかるべきものをいくつも与えられずにいることで、相対的にこちらの恵まれた環境を揶揄されているような気もしてつらい。しかし、それだけの作品ではないかとも思うのだが
『ワンダフルライフ』『ディスタンス』の是枝裕和による、劇場用長編第4作。1988年に東京で実際に起きた「子ども置き去り事件」をモチーフにし、母親に置き去りにされた4人の子どもたちが、彼らだけの生活を続ける約1年を描いている。撮影にも1年以上をかけた入魂の一作だ。撮影時、子どもたちに台本は渡されず、監督のその場の指示で演技させたという。そんな独特の演出スタイルによって生み出された、生々しくもみずみずしい空気感が素晴らしい。彼らの感情が、頭を介してではなく心に直に入ってくるような不思議な感覚を覚える。そんなセミ・ドキュメンタリー的手法の一方でドラマとしての求心力を失うことがないあたりも監督の力量を感じるところだ。カンヌ映画祭において、最優秀男優賞を史上最年少で受賞した柳楽優弥をはじめ、子どもたち全員の存在感が白眉。母親を演じたYOUら大人のキャストも見事にその世界に寄り添っている
この作品は80年代後半にあった実際の事件を基にしているらしい。当時は4人の子供を部屋に置き去りにしほとんど援助をしなかった母親に焦点が当たり、あれこれと問題視されたようだ。しかし、この作品では子供を置き去りにした母親の視点ではなく、置き去りにされた子供の生き様を丁寧に描写する
それぞれ父親の違う4人の子供たち。主人公である明(あきら)は、身勝手に遊びまわる母親や去ってしまった父親の代わりに家庭を維持しようとしている。子供たちは明を含め皆母親に対する愛情があるが、母親は新しい男性を見つけ幸せになりたいという願望があり、それが叶うと躊躇なく子供たちを捨て新たな人生を歩みだす。わずかなお金と共に残された子供たちは事態を受け入れきれず、長男である明がなんとか生き延びる為にあれこれと手を尽くしていく
物語が平板でこれと言った展開がないので少々進行が遅いように感じる。金が無いことで水道電気ガスが止められ、コンビニの廃棄を好意で分けてもらい食いつなぐという生活になっていく。着ているものもどんどんボロボロになっていく。生活が追い詰められた頃に不登校の女子高生と出会い“外の視点”が入ることで、彼らの送る生活が明らかに歪んだものである事を浮き彫りにしている
家に閉じこもっている兄弟たちの中で唯一外に出る役割を果たす明は、その年齢相応の楽しみを見出そうとする。ゲームセンターで知り合った友達の心をつなぎとめるために苦しい家計を省みずゲームソフトを購入したり、少年野球に混ざったりする。彼の年齢なら普通である出来事も、彼らの置かれた境遇との対比で輝かしいものとして表現されている
ドキュメンタリーということで、余計な解釈は入れず淡々と話は進んでいく。しかし、庇護下に在るべき彼らが社会的弱者になり生き延びていくさまをひたすらカメラは追う。これが外国の作品であればたくましさの表現などもありそうなものだが、そういったことも特になく、ただ人間が磨り減っていくやりきれなさが残る。物語のクライマックスとして悲劇は起こるが、それを契機に何かが変わるということもない。淡々と日常を送る描写をして物語は終わる
正直、観ていてつらい映画だった。ただ、社会の暗部を描いた作品というよりも、彼らがその状況下で見せる純粋さのようなものを描きたかったのだろうとは思う。主人公たちが与えられてしかるべきものをいくつも与えられずにいることで、相対的にこちらの恵まれた環境を揶揄されているような気もしてつらい。しかし、それだけの作品ではないかとも思うのだが
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