リアル 5

2005年12月13日 漫画
漫画家、井上雄彦が描く新たな切り口のバスケ漫画。

健常者の高校生、身体障害者の若者、そして事故により身体障害を持つに至った高校生の3人を主人公に据え、彼らの現実を浮き彫りにする作品。ゆるやかなペースで連載は続き、1年周期で単行本がリリースされている。

バイク事故で同乗者の女性が脚に障害を持つことになり、それに伴い高校を退学になったもののたくましく日々を過ごす「野宮」(のみや)、高校時代陸上の選手だったものの脚に障害を持ち、現在は車椅子バスケで活躍する「戸川」(とがわ)、野宮と同級生で、交通事故により下半身不随になりリハビリ中の「高橋」、この3人の日々・・・それぞれの精神的な戦いがランダムに描かれていく。

この巻では、高橋のリハビリに焦点が当てられている。高校でいわゆる人気者だった彼はその当時の周囲からの扱いが現実の自分にとって標準であり実力に見合ったものである、という固定観念から抜け出せず、自分の中で下に見ていた“障害者”になった現実を受け入れられない。それは、「障害者になったら学内で地位が下がる」というような、学校という狭い価値観から抜け出せないということだが。彼はこれから一生その障害を背負い人生を過ごすという部分まで考えが回らない。周囲の思いやりや懸命な看護に対して感謝の心を持つというような心も育っていないのだ。自分の憤りを周囲が受け入れてくれる事を前提にした振る舞いはこの巻で打ち砕かれることになる。

車椅子バスケで順調に結果を残している戸川は、車椅子バスケチームの強豪ドリームスからの誘いを断り、弱小である所属チームタイガースでプレイする事を望む。そこに以前戦い負けたことのあるナガノミツルが現れ、チームに合流する。2人はこのチームを強くするという目標を掲げる。

バイトもなかなか見つからずぼんやりとした日々を過ごす野宮は自分が傷つけ障害を持った女性へ会いに行く。彼のどこまでも自分の価値観で物事を観る振る舞いによって、彼女は少し人間らしさを取り戻すことになる。

結局のところ、野宮が“障害者を見る若者の視点”、戸川が“障害者としての理想像”、高橋が“障害者の実情”を象徴しているようなそうでないような。特に涙に訴えるわけでもなく、かといって賛美するわけでもないタイトルどおりの「リアル」な温度で物語は淡々と進んでいく。学生という部分から離れ、社会における彼らという風にシフトしているような。

次巻は来年。また地味に待つことにします。

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