I LOVE U

2005年12月25日 音楽
Mr.Childrenの作品。

リアルな思いを歌に託し、誠実に伝えていこうとする姿勢はデビューから変わることはない。そのなかで激しいロック・サウンドを展開することもあれば、壮大なラブ・ソングを歌うこともあった。その過程において彼らは、自分たちにとって本当に必要なものとは何なのかを追い求めながら進んできたように思える。そこには、櫻井和寿というひとりの人間が見せる限りないやさしさや苦悩、生きる喜びや不安があり、そんな人間的な成長の証が驚くほど完成度の高い歌に昇華されてきたのだろう。そしてこの新作では、タイトルや曲名からして全体的にシンプルさが目立ち、それは余計なものを削ぎ落としていった感のあるバンド・サウンドと呼応しているかのようだ。4人の演奏は以前にも増してひとつの塊となり、計りしれないほどの求心力を生み出している。「and I love you」や「Sign」など、時代を超えて輝き続けるであろうナンバーの圧倒的な深みの前にあっては、彼らと同時代を生きられることにただ感謝するのみだ。

リード曲である「World’s End」を筆頭に4曲入りシングルから3曲が入り、ドラマ主題歌である「Sign」も含んだ作品になっている。となると聴いた事のある楽曲が多いので新鮮味が薄れてしまいがちだが、シングルとして浮いているのはかなり前にリリースされた「Sign」のみで・・・まぁこの楽曲が既存のミスチルのイメージを最も体現しているというのもどうかとは思うが・・・、言い換えれば“さらに先の”新たな位置を提示しているとも言える。「Sign」が「君が好き」からの恣意的ピュアネス路線を踏襲していたとすれば、現在の楽曲群は恋愛という枠組みを利用し心情吐露をするという方向性をさらに洗練していった結果というか。ラブソングが“酔わせる”ことを前提にしているのだとして、そこから逸脱するような言葉を意図的に盛り込み独特のゴツゴツした手触りを出している。メロディや曲の構成自体は彼らのイメージを守っているので流せばさらっと聴けてしまう。

「Monster」「door」のようなロックテイストの楽曲も今作では復活している。まぁそのあたりはアルバムのバランスを取ることのみに効果的であって、とくに心ひかれるということはない。ただまぁ・・・なんというか、この作品全体に流れる緊張感が。その内実は切迫感や焦燥感からくる奇妙な活力なわけだが、その感覚を歌詞と曲の構成やアレンジで強く伝えてくる。それらの楽曲によって高揚し追い詰められて行き12曲目の「隔たり」へ辿り着くと弦を入れた壮大なアレンジで彼らの真骨頂であるピュアな心を伝えるエモーショナルなバラードが待ち受けているわけで。さすがだな、と。最後の「潜水」という楽曲で日常的な心象風景を描ききちんとリスナーを現実へ送ってこの作品は終わる。一聴して思ったが、もはやこれは“芸”の域に達しているというか。彼ら自身のアーティストイメージをここまでコントロールし、自己満足にならずリスナーを楽しませる事を忘れていないとなると・・・。まぁ正直自分の人生のBGMにするという王道の聴き方を否定している部分があるので、その意味合ではエゴが十二分に感じられるわけだが。

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