漫画家、沙村広明が描く“人が死なない漫画”

「愚痴っぽくて刹那的。おせっかいなくせに傷つきやすく。経験ないのに知ったかぶって。でも、まっすぐだったあの頃に、もう一度戻ってみたくなりました。――ナチュラル沙村ワールド万歳!!」

類まれな表現力と画力でデビュー直後から評価を得て、そのデビュー作「無限の住人」が長期連載中の漫画家が、商業誌に載せた初のコメディ。デビュー作に独創性がありすぎてイメージが固定化するのを嫌ったためかと。記号的にばたばたと人が死んでいくハードボイルドな作品とまったく同じ絵柄で掛け合いの妙と風刺とこの絵柄で甘酸っぺえ!というシチュエーションギャグ(に見えました、すみません)、絵柄の風通しのよさはこういう使い方もあるんだなぁと感心した作品。

大学の飲み友達同士のついたはなれたを主に描いていて、あちらの作品では適当にお茶を濁していた“会話”、言葉数を少なくして言葉の重みを増すというタイプと真逆の、切り返しや間やどれだけ上手いことを言えるか・・・で、日常なものだから会話の“負け方”みたいなものも少し提示していて。作者のメタ視線によるモノローグやらあの絵柄で当時流行ったハロプロの方々を描いてみたり(これがまた似ている)・・・ようするに、“旬”というか賞味期限の短さをいとわずに、風化することを前提に描いていて。ただ、今読むとなんというか、流行が沈静化した話題も質の違う面白さが。これは思うに単に鮮度を上げるために取り入れたわけではなく、旬の話題の使い方が上手いということで。シチュエーションや会話のもって行きかたで物語の形に上手く沿っている。

1巻で完結だが、青春モノとしてはかなり面白いかと。テイストが知りたいのなら、QJで連載しているショートショートを読んでもらえれば。

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