ノーマン・ジュイソン監督作品、アル・パチーノ主演
この作品はとにもかくにもアル・パチーノ。とにもかくにも、だ。現在の渋く味のある演技の片鱗はこの頃からすでにそこかしこに散見されているが、この時期の彼には若さゆえのオーラといえるものがあり、それが熱血弁護士という設定に上手くかみ合い共感でき、親近感を持てる魅力がある
内容のほうだが、法曹界の内実を扱っているといっても、汚れた部分だけではなく、判事や弁護士の人間味溢れる日常、仕事における苦悩により壊れていく弁護士、被告人を救おうとする姿勢、パワーゲームや政治といった多彩な要素を描いている。現在の映画にありがちな、場面場面で効果音を使い臨場感を出したり感情表現の足しにするといった演出はほとんどない。音楽は場面転換を知らせるというような程度の使われ方で、緊迫した場面だろうがロマンチックな場面だろうが登場人物の台詞のみで物語は転がっていく。というのも、役者が皆演技力があり、ほとんどのシーンでアル・パチーノが出ている為だ。その結果、彼自身の色が物語全体の色となっている。しかもこの作品におけるアル・パチーノは人間味溢れる人となりであるため、描き方によっては社会派で硬質な印象になりがちなこの作品を、倫理観や情を重視した親近感の湧く作品にしている
最後の法廷シーンでアル・パチーノが見せる演技はその熱さにあっけにとられるというか、笑えてしまうというか、まさに“熱演”としかいいようがない。しかし、彼がそういう感情になっている理由は痛いほど分かるように様々なエピソードが積み重ねられている。今観ても全く色あせない作品
若き弁護士アーサーは、正義の名の下に権威を振りかざすフレミング判事と常に対立していた。ある日、フレミング判事が婦女暴行罪で訴えられ、しかも、敵対するアーサーに弁護を依頼。人々の信頼を得るアーサーが弁護をすることで陪審員への受けが良くなると考えたのだ。さらに、弁護を受ける見返りに、無実の罪で投獄されているアーサーの依頼人ジェフを保釈してやるというのだが・・・。名優アル・パチーノが若き熱血弁護士を熱演し、アカデミー賞主演男優賞にノミネート!後に「レインマン」でアカデミー賞監督賞に輝くバリー・レビンソンを脚本に迎え、「ザ・ハリケーン」の名匠ノーマン・ジュイソン監督が法曹界の内幕を暴いた社会派ドラマの傑作
この作品はとにもかくにもアル・パチーノ。とにもかくにも、だ。現在の渋く味のある演技の片鱗はこの頃からすでにそこかしこに散見されているが、この時期の彼には若さゆえのオーラといえるものがあり、それが熱血弁護士という設定に上手くかみ合い共感でき、親近感を持てる魅力がある
内容のほうだが、法曹界の内実を扱っているといっても、汚れた部分だけではなく、判事や弁護士の人間味溢れる日常、仕事における苦悩により壊れていく弁護士、被告人を救おうとする姿勢、パワーゲームや政治といった多彩な要素を描いている。現在の映画にありがちな、場面場面で効果音を使い臨場感を出したり感情表現の足しにするといった演出はほとんどない。音楽は場面転換を知らせるというような程度の使われ方で、緊迫した場面だろうがロマンチックな場面だろうが登場人物の台詞のみで物語は転がっていく。というのも、役者が皆演技力があり、ほとんどのシーンでアル・パチーノが出ている為だ。その結果、彼自身の色が物語全体の色となっている。しかもこの作品におけるアル・パチーノは人間味溢れる人となりであるため、描き方によっては社会派で硬質な印象になりがちなこの作品を、倫理観や情を重視した親近感の湧く作品にしている
最後の法廷シーンでアル・パチーノが見せる演技はその熱さにあっけにとられるというか、笑えてしまうというか、まさに“熱演”としかいいようがない。しかし、彼がそういう感情になっている理由は痛いほど分かるように様々なエピソードが積み重ねられている。今観ても全く色あせない作品
パンチドランク・ラブ
2004年10月12日 映画
ポール・トーマス・アンダーソン監督作品
要領が悪く姉にコンプレックスを感じ、常にいっぱいいっぱいな小心者の主人公。寂しさを埋めるためにテレフォンセックスを利用し、そこから派生したトラブルを抱え込むという部分と、姉が紹介した女性と恋に落ちるという部分がこの物語の軸だ
この作品は主人公に共感できるか、あるいは好意をもてるかどうかが評価の分かれ目になると思う。その部分でつまずくと、彼の取る行動はことごとくうっとおしいものに見えてくる。主人公の描き方が、この監督独特の色といえる、世の中にコミットするためにベストを尽くしているがそれが痛々しく見えるという人物像だからだ。彼に思いを寄せる女性は穏やかで理性的な女性として描かれているが、主人公がそういうパーソナリティーだと描くことで、彼女の彼に対する穏やかで母性的な想いと、彼女のほうからアプローチをする必然性が感情レベルで分かるように構成されている
客観的に観るぶんには全く問題がないが、感情移入してしまうと男性の立場としては、かなりつらいものがある。世間と上手く折り合いをつけようと模索していた時期の事をいやがおうにも思い出させてくれるからだ。その感覚を笑える方ならお勧めかもしれない
PTAことポール・トーマス・アンダーソン監督の、『ブギーナイツ』『マグノリア』に続く長編第4作。アダム・サンドラー(『ビッグ・ダディ』)とエミリー・ワトソン(『奇跡の海』)という異色カップルが織りなすオフビートなラブストーリーだ。
かんしゃく持ちのバリーとキャリアウーマンのリナの恋を彩るのは、誰かが路上に置いていった小さなピアノ(正確にはハーモニウム)。マイレージ特典の付くプリン、セックスダイアルの女からの脅迫など、現代社会を象徴するアイテムの洪水の中、「パンチドランク・ラブ」=強烈な一目惚れから始まる、ただ一つの「無垢」の行方やいかに。冒頭、静けさから一転して車がクラッシュするシーンからして「PTA節」満載。映像と音を自在に駆使して、場面場面のテンションを操っていく手腕が見事だ。現代アート作家ジェレミー・ブレイクによるビジュアルや、独特のサウンドトラックなどを含め、五感で「感じる」映画と言えるだろう
要領が悪く姉にコンプレックスを感じ、常にいっぱいいっぱいな小心者の主人公。寂しさを埋めるためにテレフォンセックスを利用し、そこから派生したトラブルを抱え込むという部分と、姉が紹介した女性と恋に落ちるという部分がこの物語の軸だ
この作品は主人公に共感できるか、あるいは好意をもてるかどうかが評価の分かれ目になると思う。その部分でつまずくと、彼の取る行動はことごとくうっとおしいものに見えてくる。主人公の描き方が、この監督独特の色といえる、世の中にコミットするためにベストを尽くしているがそれが痛々しく見えるという人物像だからだ。彼に思いを寄せる女性は穏やかで理性的な女性として描かれているが、主人公がそういうパーソナリティーだと描くことで、彼女の彼に対する穏やかで母性的な想いと、彼女のほうからアプローチをする必然性が感情レベルで分かるように構成されている
客観的に観るぶんには全く問題がないが、感情移入してしまうと男性の立場としては、かなりつらいものがある。世間と上手く折り合いをつけようと模索していた時期の事をいやがおうにも思い出させてくれるからだ。その感覚を笑える方ならお勧めかもしれない
チャン・イーモウ監督作品、ジェット・リー主演
この作品は香港映画ではなく中国映画として製作され、巨額の資本投下による豪華で華麗な映像と、監督自身の資質による静と動、そして“間”を重視した格調高い作品になっている
ジェット・リー演ずる無名が皇帝に謁見し、ここへ来るまでに至ったエピソードを語っていくが、ジェット・リーは虚偽の事実を述べており、皇帝の疑問を機に都合4度エピソードが語られる。それぞれ、赤、青、白、緑という“色”で区分けされ、無名が語る彼らの人物像が、最初の感情のみの俗なものから、エピソードを重ねるにつれ徐々に崇高になっていくのは秀逸だ。そして、各々の緩やかで優雅な“美”と呼べるほどの鮮やかな映像とアクションシーンにより、この作品全体の“品”が非常に良くなっている。テーマ的に政治色が強くなったり史実などの考証を重視することなりがちな演出を上手く回避しており、最後の無名の意志には感動すること請け合いだ
共感するというより、映像やテーマに圧倒される作品になっていると思う
秦王のもとに、王を狙った刺客を3人殺したという無名という男が現れた。その功績を讃え、特別に謁見を許された彼は、刺客を殺した経緯を王に語りはじめる。しかし、それは多くの謎を含み、話は二転三転していく…。『あの子を探して』『初恋が来た道』などのチャン・イーモウ監督が、中国の大スター、ジェット・リー、マギー・チャン、トニー・レオン、チャン・ツィイーを起用して作り上げた歴史ロマン。ワイヤーを多用したアクションシーンは華麗で、まるでバレエを見るようだ。また交錯するいくつかのエピソードの果てに存在する真実、そして衝撃のラストには胸を震わせる感動がある。崇高な精神を持ち、その目的を達成した主人公に敬意さえ抱かせる仕上がりは、さすがチャン・イーモウと言えるだろう。撮影は『ブエノスアイレス』などのクリストファー・ドイル。衣装は『乱』のワダエミが担当。エピソードごとに赤、青、緑と色調を変えたヴィジュアルも一見の価値あり
この作品は香港映画ではなく中国映画として製作され、巨額の資本投下による豪華で華麗な映像と、監督自身の資質による静と動、そして“間”を重視した格調高い作品になっている
ジェット・リー演ずる無名が皇帝に謁見し、ここへ来るまでに至ったエピソードを語っていくが、ジェット・リーは虚偽の事実を述べており、皇帝の疑問を機に都合4度エピソードが語られる。それぞれ、赤、青、白、緑という“色”で区分けされ、無名が語る彼らの人物像が、最初の感情のみの俗なものから、エピソードを重ねるにつれ徐々に崇高になっていくのは秀逸だ。そして、各々の緩やかで優雅な“美”と呼べるほどの鮮やかな映像とアクションシーンにより、この作品全体の“品”が非常に良くなっている。テーマ的に政治色が強くなったり史実などの考証を重視することなりがちな演出を上手く回避しており、最後の無名の意志には感動すること請け合いだ
共感するというより、映像やテーマに圧倒される作品になっていると思う
スパニッシュ・アパートメント
2004年10月6日 映画
「猫は行方不明」のセドリック・クラビッシュ監督作品
流れとしては、就職に有利だという事で留学を決意する部分から、スペインへ行き共同生活を始める部分、その生活の楽しさを描写した部分から留学を終えフランスへ戻り就職をする部分まで時系列に沿って描いている。その為、大学生の留学生活の楽しさを疑似体験できると思う
基本的に雰囲気を楽しむ映画だが、その雰囲気の良さはスペインの街並みと、共同生活の同居人達の魅力的な演技に拠るところが大きい。大学生の雰囲気を非常に上手くつかんでいて、スペインの街並みのもとこういう生活を送ってみたいと思わせるような魅力的な描写が終盤まで続く。最後のシーンを観るに、その部分が描きたかっただけだろうとも思うが。因みに主人公の彼女役を「アメリ」のオドレイ・トトゥが演じている
就職のためにスペイン語を学ぼうとバルセロナへ留学することになった大学生のグザヴィエ。彼は、ヨーロッパ各国からやってきた学生たちが同居する部屋に住むことに。イギリス、ドイツ、イタリア、デンマークの男女との生活は混乱の極みだったが、彼らの存在は、平凡な彼の人生に大きな刺激を与えることになる。進むべき道が見いだせなかった主人公が、バルセロナで知り合ったさまざまな人々との交流を経て成長していく姿をコミカルに描いた作品。人との出会いはいいことばかりではない、時には傷つくこともあるけれど、経験が人間を豊かにしてくれるのだと語っているようだ。グザヴィエ演じるロマン・デュリスほか、アパートの若者たちが等身大の20代を演じて好感度大
流れとしては、就職に有利だという事で留学を決意する部分から、スペインへ行き共同生活を始める部分、その生活の楽しさを描写した部分から留学を終えフランスへ戻り就職をする部分まで時系列に沿って描いている。その為、大学生の留学生活の楽しさを疑似体験できると思う
基本的に雰囲気を楽しむ映画だが、その雰囲気の良さはスペインの街並みと、共同生活の同居人達の魅力的な演技に拠るところが大きい。大学生の雰囲気を非常に上手くつかんでいて、スペインの街並みのもとこういう生活を送ってみたいと思わせるような魅力的な描写が終盤まで続く。最後のシーンを観るに、その部分が描きたかっただけだろうとも思うが。因みに主人公の彼女役を「アメリ」のオドレイ・トトゥが演じている
アイデン & ティティ
2004年10月6日 映画
田口トモロヲ監督作品
この作品はみうらじゅんが書いた同名の漫画が原作になっている。そして、バンドブームの頃を舞台にしており(もちろん映画では現代に置き換えてある)、当時の周辺事情を知っているとより楽しめる作品になっている。登場人物もそれぞれモデルとなった実在のミュージシャンがいるようで、峯田演ずる主人公の中島は人間椅子というバンドのギタリスト和嶋慎治がモデルになっているらしい。スピードウェイという中島の所属するバンド自体も人間椅子をモチーフにしているようだ。個人的にはその辺りの事情に明るくないので、先入観の無い立場から見た感想を書かせてもらうことにする
この作品は表現活動に携わったことのある方なら何かしらを感じることができる映画だと思う。何処までも青臭く情けない表現への衝動を金に換えるということが一体どういうことなのかをこの作品は赤裸々に描き出している。ミュージシャンの世間に晒すことのない部分、生みの苦しみや自分が思い描く表現と現実とのギャップに対する葛藤、バンドとして存続していくことの難しさ、経済的な問題などを重くなり過ぎることなくあくまでさらりと描いている。物語の全体にボブ・ディランの歌詞の引用がちりばめられ、それがストーリーとかみ合い含蓄のあるものになっている。出演者も皆それなりにはまり役で、特に峯田(from 銀杏BOYS)はかなりの個性を発揮しており、要所要所で見せる表情は物語を構築する重要な要素になっている。あまり彼の事を知らないので、素ではないかと疑ってしまうが・・・
個人的な感想を言わせてもらえれば、正直泣けた。等身大とは言い難いが素直に共感したし、妙に美化していないところにも好感が持てた。物語の最後に流れるボブ・ディランの「Like a rolling stone」は物語の終着地点として単体で聴くよりも良さが増しているし、ボブ・ディラン自体の良さが分からない方でも納得でき、胸に突き刺さるはずだ
チョイ役で浅野忠信や村上淳、ピエール瀧などが出演しているのも見所の一つかもしれない
ロックバンド、SPEED WAYは、人気バンドだったが、ギターの中島は自分の世界を貫くことと、売れることの違いに悩み苦しんでいた。そんなとき目の前にボブ・ディランにソックリの男が現れる。中島は彼に見つめられ、流されている自分を恥じるようになるが、それをきっかけに自分を取り戻していく。みうらじゅんの原作漫画を『木更津キャッツアイ』などの宮藤官九郎が脚色、俳優の田口トモロヲが演出した青春バンド映画。原作者自身、バンド経験があるゆえ、商業主義に巻き込まれ、自分を見失ってしまいそうになるミュージシャンたちの苦悩がリアルで興味深い。とはいえ、その苦悩を絶妙のユーモアとブレンドさせて親近感のわく作品に仕上げたのは、田口監督のセンスとこれ以上ないキャスティングの勝利。主演の峯田和伸の自分を取り繕うとしない素直なキャラは好感度大。また中村獅童、マギー、大森南朋、麻生久美子などが好演している
この作品はみうらじゅんが書いた同名の漫画が原作になっている。そして、バンドブームの頃を舞台にしており(もちろん映画では現代に置き換えてある)、当時の周辺事情を知っているとより楽しめる作品になっている。登場人物もそれぞれモデルとなった実在のミュージシャンがいるようで、峯田演ずる主人公の中島は人間椅子というバンドのギタリスト和嶋慎治がモデルになっているらしい。スピードウェイという中島の所属するバンド自体も人間椅子をモチーフにしているようだ。個人的にはその辺りの事情に明るくないので、先入観の無い立場から見た感想を書かせてもらうことにする
この作品は表現活動に携わったことのある方なら何かしらを感じることができる映画だと思う。何処までも青臭く情けない表現への衝動を金に換えるということが一体どういうことなのかをこの作品は赤裸々に描き出している。ミュージシャンの世間に晒すことのない部分、生みの苦しみや自分が思い描く表現と現実とのギャップに対する葛藤、バンドとして存続していくことの難しさ、経済的な問題などを重くなり過ぎることなくあくまでさらりと描いている。物語の全体にボブ・ディランの歌詞の引用がちりばめられ、それがストーリーとかみ合い含蓄のあるものになっている。出演者も皆それなりにはまり役で、特に峯田(from 銀杏BOYS)はかなりの個性を発揮しており、要所要所で見せる表情は物語を構築する重要な要素になっている。あまり彼の事を知らないので、素ではないかと疑ってしまうが・・・
個人的な感想を言わせてもらえれば、正直泣けた。等身大とは言い難いが素直に共感したし、妙に美化していないところにも好感が持てた。物語の最後に流れるボブ・ディランの「Like a rolling stone」は物語の終着地点として単体で聴くよりも良さが増しているし、ボブ・ディラン自体の良さが分からない方でも納得でき、胸に突き刺さるはずだ
チョイ役で浅野忠信や村上淳、ピエール瀧などが出演しているのも見所の一つかもしれない
レジェンド・オブ・メキシコ デスペラード
2004年10月3日 映画
ロバート・ロドリゲス監督作品
アントニオ・バンデラス、ジョニーデップ出演
この作品はバンデラスやジョニー・デップを含む何人かのキーマンが出てきて、各々の思惑を持ち動いていく。その為、軸となるストーリーの稚拙さに厚みが持たされている。演出も硬軟強弱全てピタリと決まっており、アクションシーンのキレの良さ、俳優達の淡々としつつも渋い演技、全体に漂う情熱的な雰囲気どれをとっても素晴らしいとしか言いようがない。過去を引き摺る主人公という割とクサイ表現も嫌味が無く、なによりジョニー・デップが物語のスパイスとして非常に効いている。そして主要な登場人物全てに見せ場が与えられている。ようするに、小手先の技に逃げることなく勧善懲悪を真っ向から描いていて、その力の入り具合がグッと来るというか
観ている間、良さを探したり、ストーリーを値踏みしたり、演技や演出にけちを付けてみたりすることなく、久しぶりに心の底から「格好ええ!!」と思えた作品。お勧め
アントニオ・バンデラス、ジョニーデップ出演
愛する女性を失い、今は静かにメキシコの田舎町で暮らすエル・マリアッチ。だがある日、彼のもとにCIAと名乗るサンズという男が現れ、メキシコ政府転覆を狙う麻薬王を一緒に倒さないかと相談を持ちかけてきた。そこで何度も苦汁をなめさせられた麻薬王への復しゅうを決意するマリアッチ。だがサンズにはその裏に別の目的を抱えていた……。ギターケースに銃などを隠すエル・マリアッチが主役の『デスペラード』の続編。前作のダンスしているかのような華麗なガン・アクションは、多少抑え目になっているけれど、ブラックなユーモアやカッコ良さは相変わらず。また出演者にジョニー・デップやウィレム・デフォーなどを配し、見た目にかなり豪華な雰囲気が漂っているのもポイントだ。マリアッチが真のヒーローになる展開も面白い
この作品はバンデラスやジョニー・デップを含む何人かのキーマンが出てきて、各々の思惑を持ち動いていく。その為、軸となるストーリーの稚拙さに厚みが持たされている。演出も硬軟強弱全てピタリと決まっており、アクションシーンのキレの良さ、俳優達の淡々としつつも渋い演技、全体に漂う情熱的な雰囲気どれをとっても素晴らしいとしか言いようがない。過去を引き摺る主人公という割とクサイ表現も嫌味が無く、なによりジョニー・デップが物語のスパイスとして非常に効いている。そして主要な登場人物全てに見せ場が与えられている。ようするに、小手先の技に逃げることなく勧善懲悪を真っ向から描いていて、その力の入り具合がグッと来るというか
観ている間、良さを探したり、ストーリーを値踏みしたり、演技や演出にけちを付けてみたりすることなく、久しぶりに心の底から「格好ええ!!」と思えた作品。お勧め
ダニー・ボイル監督作品
音楽に関わりたいと願いながらも職が無く、彼女がストリッパーをすることで食いつないでいる気弱な主人公がふとしたきっかけから掃除機の販売会社へ勤めることになる。仕事をするに当たって組まされた先輩(パッケージの男)は、販売数を競う賞レースで勝つことに全力を尽くしており、売るためならなんでもする先輩に振り回される主人公。そして賞の発表がやってくるが・・・
この作品は、細かいカット割りや距離の近いカメラワーク、目の粗い画像処理で妙な焦燥感や不安感を感じるような映像。演出も過剰で、いかにも若年層向けという感じを受ける。内容自体は道徳的なもので、若者を賛美するような部分が多い。簡単に言えば、主人公ではなく先輩営業マンに視点を絞り、反面教師的な描き方をする。先輩営業マンのなりふり構わない仕事振りと、モラルがあり夢を追う要領の悪い主人公は対照的な位置に置かれている。ただ、この先輩の独特のキャラクターはルックスは悪いが良くも悪くも魅力があるし、それに対して主人公はルックスは今風の細面だが流されるだけのキャラクターでほとんど魅力と呼べるものは無い。個人的にはその部分の描き方に監督のスタンスの変化を感じ、ますます萎えていった。最後のシーンは無理やり主人公をハッピーエンドにして観ている若年層の溜飲を下げようとしているように思えたし、先輩営業マンのリアクションは予測の範囲内過ぎてげんなりしてしまった。あの終わり方しかなかったのかもしれないと監督に同情的になってしまうが・・・
『トレインスポッティング』のダニー・ボイル監督が描くファンキーでロックテイストあふれる青春ドラマ。トップのセールスマンだけに与えられる“黄金の掃除機賞”と豪華賞品を目指して、電気掃除機のセールスマンたちが過激な販売合戦を繰り広げる
音楽に関わりたいと願いながらも職が無く、彼女がストリッパーをすることで食いつないでいる気弱な主人公がふとしたきっかけから掃除機の販売会社へ勤めることになる。仕事をするに当たって組まされた先輩(パッケージの男)は、販売数を競う賞レースで勝つことに全力を尽くしており、売るためならなんでもする先輩に振り回される主人公。そして賞の発表がやってくるが・・・
この作品は、細かいカット割りや距離の近いカメラワーク、目の粗い画像処理で妙な焦燥感や不安感を感じるような映像。演出も過剰で、いかにも若年層向けという感じを受ける。内容自体は道徳的なもので、若者を賛美するような部分が多い。簡単に言えば、主人公ではなく先輩営業マンに視点を絞り、反面教師的な描き方をする。先輩営業マンのなりふり構わない仕事振りと、モラルがあり夢を追う要領の悪い主人公は対照的な位置に置かれている。ただ、この先輩の独特のキャラクターはルックスは悪いが良くも悪くも魅力があるし、それに対して主人公はルックスは今風の細面だが流されるだけのキャラクターでほとんど魅力と呼べるものは無い。個人的にはその部分の描き方に監督のスタンスの変化を感じ、ますます萎えていった。最後のシーンは無理やり主人公をハッピーエンドにして観ている若年層の溜飲を下げようとしているように思えたし、先輩営業マンのリアクションは予測の範囲内過ぎてげんなりしてしまった。あの終わり方しかなかったのかもしれないと監督に同情的になってしまうが・・・
岩井俊二監督作品
この作品はもともとショートフィルムとして3編製作され、キットカットというお菓子の食頑としてDVDが各々発売された。その物語を膨らまし、広末涼子などキャストを足して劇場映画として改めて製作されたもの。あいにくと僕はショートフィルムの方しか観ていないが、岩井俊二の一般的なイメージを踏襲した、少し詩的で心地よい世界観を持った作品になっていた。というわけで、地味にレンタル開始を心待ちにしている
岩井俊二監督が、高校生たちの揺れ動く心情をリリカルで繊細なタッチでつづった青春ドラマ。ネットで配信した4つの短編が、長編作品として再構成された。あこがれの先輩を「記憶喪失」だと信じこませ、つき合い始める花と、彼女の親友アリス。3人の微妙な思いがもつれていく。細かいカットで紡がれるオープニングから、花とアリスの自然な会話に引き込まれる。恋の成就のための無謀な嘘や、親友が恋敵になるといった一見ありふれた展開も、演じる鈴木杏と蒼井優の等身大の演技で、高校生の生き生きとした日常に転化。通学中のときめきや海辺のデート、バレエ教室での稽古風景などノスタルジックな映像に、岩井監督自身が作曲した音楽が絶妙にかぶさる。物語に感動するとか、興奮することはないが、観ていること自体が心地よく、知らぬ間に胸をヒリヒリさせる一篇。やはり岩井俊二はただ者ではない
この作品はもともとショートフィルムとして3編製作され、キットカットというお菓子の食頑としてDVDが各々発売された。その物語を膨らまし、広末涼子などキャストを足して劇場映画として改めて製作されたもの。あいにくと僕はショートフィルムの方しか観ていないが、岩井俊二の一般的なイメージを踏襲した、少し詩的で心地よい世界観を持った作品になっていた。というわけで、地味にレンタル開始を心待ちにしている
ビルとテッドの大冒険
2004年9月27日 映画
キアヌ・リーブス主演作品
この作品はキアヌ・リーブスがキャリアの初期に参加したもので、ファンならずとも面白いと思える仕上がりになっており、レンタルなどでも割と置いてある所が多い。おばかな高校生役をノリノリで熱演している。続編も製作された
音楽が好きな高校生2人組が電話ボックス型のタイムマシーンをふとしたことから使う羽目になり、歴史上の重要人物(ナポレオン等)と交流するというもの。ただ、主人公たちは「おバカ」なので彼らが偉人達と絡んでいる画はかなり笑えてしまう。湿っぽかったりシリアスな部分はほとんど無く、全編テンションが高いので頭を空っぽにして観る事ができると思う
この作品はキアヌ・リーブスがキャリアの初期に参加したもので、ファンならずとも面白いと思える仕上がりになっており、レンタルなどでも割と置いてある所が多い。おばかな高校生役をノリノリで熱演している。続編も製作された
音楽が好きな高校生2人組が電話ボックス型のタイムマシーンをふとしたことから使う羽目になり、歴史上の重要人物(ナポレオン等)と交流するというもの。ただ、主人公たちは「おバカ」なので彼らが偉人達と絡んでいる画はかなり笑えてしまう。湿っぽかったりシリアスな部分はほとんど無く、全編テンションが高いので頭を空っぽにして観る事ができると思う
BAD BOYS ?
2004年9月26日 映画
マイケル・ベイ監督作品、ウィル・スミス主演
この作品は前作が低予算にもかかわらずヒットし、レンタル等の回転率も長期にわたって良く、満を持しての2作目ということになる。前作はテーマや設定としては割りとありがちだが、シーンごとのキレの良さと勢いは抜群だった。それを受けてのこの作品ではそこに予算を拡大しスケールを大きくキレや持ち味はそのままにというような快作となっている
この作品のメインとなるアクションシーンの迫力はかなりのもので、特にカーチェイスシーンでのカメラワークは素晴らしく、既存の作品には無い迫力がある。そして、この手の作品では定番となっている主人公たちの掛け合いも相変わらずだ。ただ、家族や仲間へ対する思いが根底にあるので嫌味なく笑えると思う
監督マイケル・ベイ、製作ジェリー・ブラッカイマーという『アルマゲドン』『パール・ハーバー』の組み合わせに、ウィル・スミス&マーティン・ローレンスの主演コンビによる1995年のヒット作のパート2。マイアミ警察のふたりの刑事が、「エクスタシー」というドラッグを裏取引するシンジケートを壊滅させようとする。今回は、ローレンス演じるマーカスの妹・シドが麻薬捜査局の潜入捜査官として登場し、スミス演じるマイクが彼女と恋仲になるという味つけもある。主演ふたりの掛け合いは快調。ローレンスは誤ってエクスタシーを服用してラリってしまうシーンが爆笑モノで、一方のロックは、コンビを統率するマイクを男くさく、余裕たっぷりに演じている。人種にまつわるどぎついギャグも今回は比較的分かりやすいが、問題はアクション場面。前作の3倍以上の製作費をかけただけあって、200台以上の車がクラッシュするカーチェイスや、山の斜面に並ぶ家々をなぎ倒しながら走る車など、そのスケールと迫力は半端じゃない。しかし、カット割りやアングルが、実際のスケール感やスピード、スリルを伝えきれていない。娯楽作としての満腹感は味わえるだけに不満も残る
この作品は前作が低予算にもかかわらずヒットし、レンタル等の回転率も長期にわたって良く、満を持しての2作目ということになる。前作はテーマや設定としては割りとありがちだが、シーンごとのキレの良さと勢いは抜群だった。それを受けてのこの作品ではそこに予算を拡大しスケールを大きくキレや持ち味はそのままにというような快作となっている
この作品のメインとなるアクションシーンの迫力はかなりのもので、特にカーチェイスシーンでのカメラワークは素晴らしく、既存の作品には無い迫力がある。そして、この手の作品では定番となっている主人公たちの掛け合いも相変わらずだ。ただ、家族や仲間へ対する思いが根底にあるので嫌味なく笑えると思う
ジョン・キューザック主演作品
この作品はオタクの生態を非常に細やかに描写していて、心理状態のアップダウンや思考の流れ具合などはリアリティがありすぎて苦笑いを通り越して感心してしまう。そして、オタクの理想を描いていて、観ていて単純にいいなぁと思えてしまう。因みにオタクというのはいわゆる秋葉系ではなく、自分の趣味を周りに理解してもらえない人の総称ということで一つ・・・
この作品は素晴らしいレビューがあったので、これ以上のものはちょっと書けないだろうし引用させてもらいます
中古レコード店を経営するロブは、同棲していた恋人のローラが突然出ていったことをきっかけに、これまでの失恋トップ5の女性たちを訪ね歩き、自分の何がいけなかったのかを問いただしていく。そんな中で、彼はさまざまな人々との出会いや会話の中からポジティヴな自分を発見していく…。音楽オタクの30代男が悪戦苦闘しながらも、人生に対して前向きに対処するまでを描く、ヒューマン・ラブ・コメディ。レコードの山に囲まれた主演ジョン・キューザックのオタクぶりがなかなか堂に入っているが、原題そのままのタイトルは「原音に忠実に再生された音」という意味で、いつしか彼はそういったレコード音の本質を反映する、真のオタクへと成長していくのだ
この作品はオタクの生態を非常に細やかに描写していて、心理状態のアップダウンや思考の流れ具合などはリアリティがありすぎて苦笑いを通り越して感心してしまう。そして、オタクの理想を描いていて、観ていて単純にいいなぁと思えてしまう。因みにオタクというのはいわゆる秋葉系ではなく、自分の趣味を周りに理解してもらえない人の総称ということで一つ・・・
この作品は素晴らしいレビューがあったので、これ以上のものはちょっと書けないだろうし引用させてもらいます
この映画には二つの魅力的な側面があります。一つは音楽オタク達の絶妙な生態描写にすぐれている、という面です。現実社会であまり役に立たなさそうな知識を膨大に貯めこんで、すぐに「〜のベスト5」と言って論議する登場人物たちの姿に、音楽オタクを自認する人々はきっと思わず苦笑いしたことでしょう。実際、これだけで素晴らしくよく出来た映画と言えたと思います
しかしこの映画は単なるコメディでは終わらず、ヒューマン・ドラマとしての側面も併せ持っています。音楽オタク、すなわち批評することで音楽に関わる(=主体的には音楽に関わっていない)主人公は、やがて自分の現実に直面し挫折していきます。苦悩し、自分の過去の恋人をたどることで自分の過去を振り返り、学び、乗り越え、音楽だけでなく人生を(批評する立場を捨て)主体的に生き抜く人間に生まれ変わろうとするのです(主人公が最後に恋人に語るシーンは感動的!)。最後に音楽に対して批評家的な立場からプロデューサーに転身していくというのも象徴的です
勿論、多くの人が触れている通り、主人公を演じるJ.キューザックを初めとする助演陣;特にJ.ブラックの演技が素晴らしいほか絶妙なタイミングで出てくるオタク向けの凝った選曲まで素晴らしく、難しい事言わずに楽しめる傑作です
ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
2004年9月25日 映画
ウェス・アンダーソン監督作品
この作品は家族の再生の物語だが、単純に心温まる作品ではない。非常に我の強い、家庭を顧みなかった父親が妻の再婚話を機に形骸化した家族を集めるというもので、理由は全て別れた妻への独占欲からだ。そして、家族をダシに使い再婚話を阻止しようとする。バラバラに暮らしていた家族はそれぞれの問題を抱えており、父親が引っ掻き回すことで事態は混迷の度合いを深めていき・・・
長く別々に暮らし、共通観念の無くなってしまった家族の距離感と、それぞれの個性を強調した演出により、あくまで普通に振舞っている登場人物たちが魅力的に見えてくる。そして、あれこれ画策して暗躍しようとし失敗しても全く堪えないタフな父親が、家族の問題を目の当たりにして現実を知り、形だけのつもりだった家族の再生を徐々に成し遂げていく様は笑えるし、少しばかり感動もする
しかし、“天才一家”という設定は果たして必要だったんだろうか・・・
天才一家と世間にもてはやされながらも心はバラバラのままに暮らしていたテネンバウムズ家の人々が、再びひとつ屋根の下に集うことになってしまった。アメリカ本国で高い評価を受けていたウェス・アンダーソン監督の日本初公開作。あたかもジョン・アーヴィングの世界を彷彿させるアメリカならではの寓話性の下、シンメトリックな画面構成や、天才であるがゆえに(!?)個性的なキャラクターの面々をファッションで区分けするなど、非常に明快なイメージをもって深みある人間賛歌を描き得ている快作。一家の面々にはジーン・ハックマンやアンジェリカ・ヒューストン、グウィネス・パルトロウなど芸達者がズラリ勢揃い。その卓越した演技合戦も見どころのひとつである
この作品は家族の再生の物語だが、単純に心温まる作品ではない。非常に我の強い、家庭を顧みなかった父親が妻の再婚話を機に形骸化した家族を集めるというもので、理由は全て別れた妻への独占欲からだ。そして、家族をダシに使い再婚話を阻止しようとする。バラバラに暮らしていた家族はそれぞれの問題を抱えており、父親が引っ掻き回すことで事態は混迷の度合いを深めていき・・・
長く別々に暮らし、共通観念の無くなってしまった家族の距離感と、それぞれの個性を強調した演出により、あくまで普通に振舞っている登場人物たちが魅力的に見えてくる。そして、あれこれ画策して暗躍しようとし失敗しても全く堪えないタフな父親が、家族の問題を目の当たりにして現実を知り、形だけのつもりだった家族の再生を徐々に成し遂げていく様は笑えるし、少しばかり感動もする
しかし、“天才一家”という設定は果たして必要だったんだろうか・・・
トゥー・ウィークス・ノーティス
2004年9月24日 映画
ヒュー・グラント、サンドラ・ブロック主演作品
まず、ヒュー・グラントは不動産王(つまり金持ち)だが、私生活と女性にだらしの無い男という役柄だ。彼は秘書に仕事の実務的なところを全て任せ、判断を仰がれたときのみ仕事として口を聞く。しかもそういう仕事のスタイルから行って秘書は能力で選ぶべきだが、女好きなのでいつもルックスで選び粉をかけるため、入れ替わりが激しい。そして、サンドラブロックは、良い大学を出ているが、自分の住む地域の公共施設の取り壊しに反対したりといったあまりキャリアを考えない真面目な元弁護士という役柄だ。それが、たまたまヒュー・グラントの目に止まり社長秘書ということになる
この作品の凄いところは、サンドラ・ブロックがプロデュースしていることもあり、徹底してサンドラ・ブロックに気持ちよく状況を設定し、話を転がすというところだ。フリーターが仕事のできる社長秘書になり、社長と対等なパートナーになり、多少恋愛じみた雰囲気にもって行き、会社で評価されるものの自分のしたいボランティアをするために辞め、最終的には金と理解者(恋人)と自分のやりたい仕事を手に入れるという・・・仕事の部分では元弁護士という設定だからまぁいいとしても、仕事中心に生きてきたから恋愛にも不器用的な表現なんかは観ていてさすがに切れそうになった。ヒュー・グラントの子供っぽい部分を包括する母性的なニュアンスも抜かりなく入れている
個人的には2時間呆然で、途中からは怒りを通り越してすがすがしくなった。最後は笑えて来た。ハリウッド・スターの押しの強さを垣間見た瞬間だったな。凄いです
NYの不動産王のジョージは、経営が悪化しつつある会社を建て直すため、熱血弁護士ルーシーを顧問にする。ところがジョージはしっかり者の彼女に頼りっぱなし。彼の子守に疲れた彼女は「2週間後にやめる」と宣言。ジョージは必死に引き止めようとする…。優柔不断で頼り無いけど、母性をくすぐる男というのはヒュー・グラントの十八番。映画ではサンドラ演じるルーシーにリードされるが、ユーモアのセンス、肩の力を抜いたフットワークの軽い演技は抜群で、芝居ではしっかりブロックをリードしている。また、サンドラもハマリ役。スキがない色気がない、けど人がよくて憎めないルーシーのキャラをしっかり際立たせた好演だ。監督&脚本はマーク・ローレンス。『デンジャラス・ビューティー』などの脚本を経て、本作で監督デビューを果たした
まず、ヒュー・グラントは不動産王(つまり金持ち)だが、私生活と女性にだらしの無い男という役柄だ。彼は秘書に仕事の実務的なところを全て任せ、判断を仰がれたときのみ仕事として口を聞く。しかもそういう仕事のスタイルから行って秘書は能力で選ぶべきだが、女好きなのでいつもルックスで選び粉をかけるため、入れ替わりが激しい。そして、サンドラブロックは、良い大学を出ているが、自分の住む地域の公共施設の取り壊しに反対したりといったあまりキャリアを考えない真面目な元弁護士という役柄だ。それが、たまたまヒュー・グラントの目に止まり社長秘書ということになる
この作品の凄いところは、サンドラ・ブロックがプロデュースしていることもあり、徹底してサンドラ・ブロックに気持ちよく状況を設定し、話を転がすというところだ。フリーターが仕事のできる社長秘書になり、社長と対等なパートナーになり、多少恋愛じみた雰囲気にもって行き、会社で評価されるものの自分のしたいボランティアをするために辞め、最終的には金と理解者(恋人)と自分のやりたい仕事を手に入れるという・・・仕事の部分では元弁護士という設定だからまぁいいとしても、仕事中心に生きてきたから恋愛にも不器用的な表現なんかは観ていてさすがに切れそうになった。ヒュー・グラントの子供っぽい部分を包括する母性的なニュアンスも抜かりなく入れている
個人的には2時間呆然で、途中からは怒りを通り越してすがすがしくなった。最後は笑えて来た。ハリウッド・スターの押しの強さを垣間見た瞬間だったな。凄いです
けものがれ、俺らの猿と
2004年9月23日 映画
須永秀明監督作品、永瀬正敏主演
この作品は町田康の同名小説を原作にしているが、実際観てみると感心してしまうくらい原作に忠実に作ってある。原作では、仕事を干されて気持ちはささくれ立ち猜疑心にまみれ追い詰められている主人公が金と功名心に突き動かされながらも、自分の理解の範疇を超えた数々のシチュエーションに翻弄され、最後は焼きそばを物凄い形相で作って終わるという訳の分からない勢いのある作品だったが、この作品では主人公役の永瀬正敏の芸風に拠り、ささくれ立った猜疑心のある小人物という人物造形が薄らぎ、淡々とした役柄になっている。キャストもそれなりに豪華といっても良いんではないかと思う。鳥肌実、車だん吉、小松方正、ムッシュかまやつ、Dragon Ashの降谷建志あたりが登場する。kjの出演理由は謎だが・・・
この作品は小説の世界を忠実に再現しているので、意外性というのはあまりないのかもしれない。しかし、映像化されることで面白さが増す部分もあり。女子高生が口から素麺をたらして歩くシーンなどは正直笑ってしまった
この作品は単純にコメディとしてみた場合なかなか面白い。原作を読んでから観ると面白さが増します
町田康原作の小説を、須永秀明監督が映画化した異色コメディ。主演は永瀬正敏。ナンバーガール、ゆらゆら帝国らが参加したサントラ盤も話題に
仕事を干されている脚本家が、映画プロデューサーに誘われるままシナリオハンティングに出掛け、次々と思いもよらぬ被害の洪水に飲み込まれるスラップスティックファンタジー。絶望の淵に立たされた、うだつの上がらない脚本家を永瀬正敏が演じている
この作品は町田康の同名小説を原作にしているが、実際観てみると感心してしまうくらい原作に忠実に作ってある。原作では、仕事を干されて気持ちはささくれ立ち猜疑心にまみれ追い詰められている主人公が金と功名心に突き動かされながらも、自分の理解の範疇を超えた数々のシチュエーションに翻弄され、最後は焼きそばを物凄い形相で作って終わるという訳の分からない勢いのある作品だったが、この作品では主人公役の永瀬正敏の芸風に拠り、ささくれ立った猜疑心のある小人物という人物造形が薄らぎ、淡々とした役柄になっている。キャストもそれなりに豪華といっても良いんではないかと思う。鳥肌実、車だん吉、小松方正、ムッシュかまやつ、Dragon Ashの降谷建志あたりが登場する。kjの出演理由は謎だが・・・
この作品は小説の世界を忠実に再現しているので、意外性というのはあまりないのかもしれない。しかし、映像化されることで面白さが増す部分もあり。女子高生が口から素麺をたらして歩くシーンなどは正直笑ってしまった
この作品は単純にコメディとしてみた場合なかなか面白い。原作を読んでから観ると面白さが増します
ロバート・アルトマン監督作品
この作品はレイモンド・カーヴァーという作家の短編集を原作にしており、それぞれ関連性の無い短編を同時進行させ、ところどころでニアミスやクロスオーバーさせるというような構成になっている。因みに、この作品が公開される前後に村上春樹がその短編集を翻訳して日本でも出版された。「カーヴァー・ダズン」という作品なので探してみるのも吉
内容は、一言で言うと群像劇だろうか。全体的なトーンとしては派手な演出や分かりやすくするための演出といったものはあまり導入されておらず、淡々としたシチュエーションの妙を楽しむタイプの作品になっている。各々の短編集の主人公たちはその物語を紡ぐのに必死で、普通なら最後に一つの物語に収束していくところだろうが、そういうこともなく、主人公の1人にクローズアップした後終わる。こうして書いているとなんだかつまらない映画のように思えるが、そんなことは全く無い。キャストが皆演技力があり、一つ一つの話自体もそれなりに面白いからだ。3時間ある上映時間も全く苦にならないと思う
ただまぁ、最後のシーンにあっけにとられるかもしれないが・・・
メド・フライと呼ばれる害虫を駆除するため、農薬散布のヘリコプターが市街地を飛び回る。都市の上にばらまかれた農薬によって、人々は次第に狂気に陥っていくのか……。ハリウッドを徹底的に皮肉った傑作「ザ・プレイヤー」に続いて、R・アルトマンが豪華キャストで完成させた、3時間を越すユニークな群像劇。レイモンド・カーヴァーのいくつかの短編を基に、10組の人々の日常の中にひそむ非日常を鮮やかに描いている。もちろん単なるオムニバスなどである訳もなく、微妙に入り組んだ人物構成と繰り広げられるエピソードが無類の面白さになっている。それを支える、主役クラスばかりの錚々たるキャスティングも見応え充分だ
この作品はレイモンド・カーヴァーという作家の短編集を原作にしており、それぞれ関連性の無い短編を同時進行させ、ところどころでニアミスやクロスオーバーさせるというような構成になっている。因みに、この作品が公開される前後に村上春樹がその短編集を翻訳して日本でも出版された。「カーヴァー・ダズン」という作品なので探してみるのも吉
内容は、一言で言うと群像劇だろうか。全体的なトーンとしては派手な演出や分かりやすくするための演出といったものはあまり導入されておらず、淡々としたシチュエーションの妙を楽しむタイプの作品になっている。各々の短編集の主人公たちはその物語を紡ぐのに必死で、普通なら最後に一つの物語に収束していくところだろうが、そういうこともなく、主人公の1人にクローズアップした後終わる。こうして書いているとなんだかつまらない映画のように思えるが、そんなことは全く無い。キャストが皆演技力があり、一つ一つの話自体もそれなりに面白いからだ。3時間ある上映時間も全く苦にならないと思う
ただまぁ、最後のシーンにあっけにとられるかもしれないが・・・
岩井俊二監督作品
この作品は、観終わった後、非常に変わった後味を残す。そもそも閉塞的な位置にいる登場人物達から見た世界という趣旨なので、彼らのパーソナリティーに寄った、鮮やかで物悲しい描写が多い。その物悲しさというのは、彼らの子供じみた、それゆえに純粋で現在の社会から全く乖離した感情表現と行き場の無い独自の世界観に拠るものだろう。同じような人物造形で幸せな結末を迎える作品もあると思う。しかしこの作品の主人公たちはあまりにも無防備で、現実社会との意識の刷り合わせを行っていない。その為、愛情表現の発露として最後の結末が用意される
この作品での岩井俊二の演出は、純粋さゆえに見つける風景を徹底的に描写しており、それを観ているこちら側に逆説的に世界の残酷さを伝えるというような意図が見える。ただ、全編にわたって発せられ、ラストで爆発する主人公たちの感情の“強さ”は胸を打つはずだ
個人的にはトラウマになるほど印象に残った作品
お勧めはしません
『Love Letter』の岩井俊二が『スワロウテイル』との間に、人気シンガーCHARAをヒロインに撮った自主映画的アナーキーなメルヘン。妹を殺したココは、入院させられた精神病院で、ツムジとサトルという2人の青年と知り合う。彼らは施設の塀の上を歩く探険を楽しんでいた。やがて、地球が滅亡するという妄想にとらわれた彼らは、滅亡を見届けるために、塀の外に出てはいけないという規則を守りながら、塀から塀へとつたって海を目指してピクニックに出かける。ピクニックの間に出会うさまざまな人々との交流に、日常への批評を読みとることもできる哲学的な深みを、岩井の軽やかな映像がポップに仕上げている。なかでも鈴木慶一のとぼけた神父さんが印象的である。CHARAと浅野忠信夫婦の出会いの映画としても要チェックだ
この作品は、観終わった後、非常に変わった後味を残す。そもそも閉塞的な位置にいる登場人物達から見た世界という趣旨なので、彼らのパーソナリティーに寄った、鮮やかで物悲しい描写が多い。その物悲しさというのは、彼らの子供じみた、それゆえに純粋で現在の社会から全く乖離した感情表現と行き場の無い独自の世界観に拠るものだろう。同じような人物造形で幸せな結末を迎える作品もあると思う。しかしこの作品の主人公たちはあまりにも無防備で、現実社会との意識の刷り合わせを行っていない。その為、愛情表現の発露として最後の結末が用意される
この作品での岩井俊二の演出は、純粋さゆえに見つける風景を徹底的に描写しており、それを観ているこちら側に逆説的に世界の残酷さを伝えるというような意図が見える。ただ、全編にわたって発せられ、ラストで爆発する主人公たちの感情の“強さ”は胸を打つはずだ
個人的にはトラウマになるほど印象に残った作品
お勧めはしません
大友克洋の劇場版アニメーション
制作期間に9年を費やしたらしいが、めでたく完成
どうやらある程度まで製作したところ、その期間に進化したCG技術によりそれを使うと映像に差が出てしまうので1度破棄して作り直したそうだ。そのため制作期間が延びたらしい。ヨーロッパでロケを行い、霧によってぼやけたガス灯や石畳の町並みを撮り映像に取り込んでいるそうだ。鉄の質感も結構凄いらしい
かなり楽しみにしているので、1度観た後改めてレビューすることにしたい・・・
制作期間に9年を費やしたらしいが、めでたく完成
どうやらある程度まで製作したところ、その期間に進化したCG技術によりそれを使うと映像に差が出てしまうので1度破棄して作り直したそうだ。そのため制作期間が延びたらしい。ヨーロッパでロケを行い、霧によってぼやけたガス灯や石畳の町並みを撮り映像に取り込んでいるそうだ。鉄の質感も結構凄いらしい
かなり楽しみにしているので、1度観た後改めてレビューすることにしたい・・・
窪塚洋介主演、優しい人々の心の交流を描いた作品
この作品は非常に寓話的なテイストが強く、好みが分かれるかもしれない。ただ、窪塚がこういう演技もできるというのは多少驚いたし、彼の風貌にもなかなかマッチしていて好感が持てた。登場人物も非常に少なく、何気ないやり取りの積み重ねでストーリーを転がすというような手法だが、こういう価値観を持って世間を見渡せば確かに素晴らしく思えるだろう。しかし優しい人々ばかりを描くことでそれを取り巻く世間の低い温度を表現するというのはちょっとあざとすぎるんではないかと思うんだが・・・
祖母の経営するコイン・ランドリーで、洗濯物が盗まれないようにいつも監視していたテル(窪塚洋介)は、ある日乾燥機の中にワンピースを置き忘れたまま田舎に帰ってしまった女性・水絵(小雪)を追いかけていく。やがてふたりは、ひょんなことから知り合った中年男サリー(内藤剛志)の下でハトを飛ばす仕事に従事するようになるが…。森淳一によるサンダンス・NHK国際映像作家賞受賞脚本を、自らのメガホンで映画化。小さいころマンホールに落ちたという設定こそあるが、そうした要素すら超えたピュアな青年を窪塚が好演。そんな彼に、いつしか見失っていた安らぎを見い出し癒されていくヒロイン・小雪の美しさも実に映画的だ。生きていく上で次第に汚れていく心を洗濯し、平和の象徴ハトを飛ばす映画。ヒロインの万引き癖を利用してのドラマ構成も、実に巧みで哀しいテイストを醸し出している
この作品は非常に寓話的なテイストが強く、好みが分かれるかもしれない。ただ、窪塚がこういう演技もできるというのは多少驚いたし、彼の風貌にもなかなかマッチしていて好感が持てた。登場人物も非常に少なく、何気ないやり取りの積み重ねでストーリーを転がすというような手法だが、こういう価値観を持って世間を見渡せば確かに素晴らしく思えるだろう。しかし優しい人々ばかりを描くことでそれを取り巻く世間の低い温度を表現するというのはちょっとあざとすぎるんではないかと思うんだが・・・
フランソワ・オゾン監督が描くサスペンス
この作品はちょっとアクがあるが、個人的には結構面白かった。しかし、人に勧めると何故か不評だ。何故か考えてみるに、おそらくファッションや女優の魅力を引き出すような演出が女性向けすぎるのだろう。全編通して男性がほとんど出てこないというのも一つの理由ではないかと思う。その男優に感情移入して主演している女優たちとの距離が測れないし、唯一出てくる一家の主役はひどい扱いで、観ていると女性の怖さを感じるほどだし。まぁ、それが監督の意図なんだろうが
1950年代のフランス。雪に閉ざされた大邸宅で、その家に主人が何者かに殺された。クリスマスを過ごそうと集まった家族は、メイドも含めて、8人全員が女。犯人はこの中にいるかも…と、彼女たちはお互いを探り始めるが、どの女たちもトラブルを抱えており、誰が犯人でもおかしくなかった
カトリーヌ・ドヌーブ、ファニー・アルダン、イザベル・ユペール、エマニュエル・ベアール、ヴィルジニー・ルドワイヤン、リュディヴィーヌ・サニエ、ダニエル・ダリュー、フィルミーヌ・リシャールという、フランスの人気女優が大集合した推理仕立ての女のドラマ。豪華な邸宅、カラフルな50年代ファッションなどヴィジュアルは美しく、またドラマにミュージカルシーンを挿入することで、全体的にポップでコミカルな味わいに。しかし、それでも女の怖さが浮き上がってくるのは、フランソワ・オゾン監督の力量プラス、フランス女優の底力! 特にドヌーブとアルダンのからみは、熟女の香りがスクリーンから匂い立つよう。女優たちの濃厚な個性に圧倒される快作
この作品はちょっとアクがあるが、個人的には結構面白かった。しかし、人に勧めると何故か不評だ。何故か考えてみるに、おそらくファッションや女優の魅力を引き出すような演出が女性向けすぎるのだろう。全編通して男性がほとんど出てこないというのも一つの理由ではないかと思う。その男優に感情移入して主演している女優たちとの距離が測れないし、唯一出てくる一家の主役はひどい扱いで、観ていると女性の怖さを感じるほどだし。まぁ、それが監督の意図なんだろうが
恋愛寫眞 - Collage of Our Life -
2004年7月2日 映画
堤幸彦監督作品、松田龍平主演
誰でもそう思うだろうが、個人的には「ご近所探偵TOMOE」で堤監督は終わったと思っていたのでこの作品を見たときは惰性に近いものがあったのだが、意外にもなかなかのクオリティで驚かされた。堤監督特有の楽屋落ちや小ネタや洒落などの過剰な演出はスパイス程度に散らされるだけで影を潜め、しごくまっとうな作品に仕上がっている。広末涼子の使い方もなかなか上手く、ポエティックでありながらミステリタッチの展開やガンアクションなど上手く盛り込んでエンターテイメントとして成立させている
大学時代の恋人・静流(しずる)から、NYで写真の個展を開くという手紙を受け取ったカメラマンの誠人(まこと)。静流は死んだという噂も聞いた彼は、ひとりNYへ向かう…。松田龍平と広末涼子が、それぞれ透明感のある持ち味を生かして、等身大の演技をみせるラブストーリー。すべてを捨ててNYへ向かうほど、忘れられない初恋の想いのなかに、男が女に対して抱くコンプレックスも見え隠れして、ホロ苦いものが伝わってくる。誠人の思いがストレートな分、唐突なギャグが空回りしている部分もあることはある。ただ、静流の居場所をめぐるサスペンスフルな展開や、ヒリヒリと切ないクライマックスは、些細な欠点を押しのけて心に残る
誰でもそう思うだろうが、個人的には「ご近所探偵TOMOE」で堤監督は終わったと思っていたのでこの作品を見たときは惰性に近いものがあったのだが、意外にもなかなかのクオリティで驚かされた。堤監督特有の楽屋落ちや小ネタや洒落などの過剰な演出はスパイス程度に散らされるだけで影を潜め、しごくまっとうな作品に仕上がっている。広末涼子の使い方もなかなか上手く、ポエティックでありながらミステリタッチの展開やガンアクションなど上手く盛り込んでエンターテイメントとして成立させている