風が吹いたら桶屋がもうかる
2004年6月22日 読書
岡嶋二人名義でその実力を知られていたミステリ作家、井上夢人のソロ名義の作品
この作家は結構シリアスな作品をたくさん書いているが、個人的にはこちらを薦めたい。バカミスぎりぎりの線だが、この作品はユーモアとギャグがふんだんに盛り込まれた、無意味に明るいミステリだ。主人公3人組のうち、探偵の役割をする人物がまず理詰めで推理するが、超能力をもつ人物がそれをくつがえす真相を辿り当てる。しかし、依頼者が事件を自己解決した後に真相を当てるので全く意味は無い。まぁようするにそういう型の漫才だと思ってくれれば当たらずとも遠からず
内容はどこまでも軽いが、面白いです
牛丼屋でアルバイトをするシュンペイにはフリーターのヨーノスケと、パチプロ並の腕を持つイッカクという同居人がいる。ヨーノスケはまだ開発途上だが超能力者である。その噂を聞きつけ、なぜか美女たちが次々と事件解決の相談に訪れる。ミステリ小説ファンのイッカクの論理的な推理をしり目に、ヨーノスケの能力は、鮮やかにしかも意外な真相を導き出す
この作家は結構シリアスな作品をたくさん書いているが、個人的にはこちらを薦めたい。バカミスぎりぎりの線だが、この作品はユーモアとギャグがふんだんに盛り込まれた、無意味に明るいミステリだ。主人公3人組のうち、探偵の役割をする人物がまず理詰めで推理するが、超能力をもつ人物がそれをくつがえす真相を辿り当てる。しかし、依頼者が事件を自己解決した後に真相を当てるので全く意味は無い。まぁようするにそういう型の漫才だと思ってくれれば当たらずとも遠からず
内容はどこまでも軽いが、面白いです
寡作のミステリ作家、法月綸太郎の短編集
この作家はかなりエラリー・クイーンに傾倒していて、そのせいか自分のペンネームを主人公につけるというナルすれすれのことをしている。しかし本格派の中では割と有名な人だ。この作品はこの作家の代表的シリーズである「法月綸太郎シリーズ」の、あまり長くない作品を編んだものだ。この探偵が主人公である長編もいくつか発表している
基本的には警察の上層部の人間である主人公の父親から依頼されて事件を捜査するというものだが、そつなくまとまっていて読みやすい。ミステリの王道を行ってるんではないだろうか。この作品では図書館に勤める利発なヒロイン(またかよ・・・)との絡みで割と日常的なところから始まる事件が多い
なぜ犯人は、死刑執行の当日、首を縄に差し入れた死刑囚を殺さなければならなかったのか。なぜ犯人は図書館の蔵書の冒頭数ページを切り裂くのか、それもミステリーばかり。なぜ男は恋人の肉を食べたのか…。異様な謎につつまれた怪事件に、名探偵・法月綸太郎の明晰かつアクロバティックな推理が冴えわたる
この作家はかなりエラリー・クイーンに傾倒していて、そのせいか自分のペンネームを主人公につけるというナルすれすれのことをしている。しかし本格派の中では割と有名な人だ。この作品はこの作家の代表的シリーズである「法月綸太郎シリーズ」の、あまり長くない作品を編んだものだ。この探偵が主人公である長編もいくつか発表している
基本的には警察の上層部の人間である主人公の父親から依頼されて事件を捜査するというものだが、そつなくまとまっていて読みやすい。ミステリの王道を行ってるんではないだろうか。この作品では図書館に勤める利発なヒロイン(またかよ・・・)との絡みで割と日常的なところから始まる事件が多い
毎回物凄いというか奇妙というか、一風変わった設定を打ち出してくるミステリ作家、西澤保彦の作品
この作家の代表的なシリーズと呼べる、「匠千暁シリーズ」。主人公はビールが死ぬほど好きなぼんやりとした大学生で、この手の作品にありがちなストーリーテラーとしての利発なヒロインとタッグを組んで事件解決に当たるというもの
この作品の主人公は個人的には非常にリアリティがあって、マッチョでもなく切れ者でもなくエキセントリックでもなく尊大でもないごくごく普通の大学生が推理するところに妙味がある。男性の立場から見た主人公の俗っぽさと推理以外の凡庸さは本筋以外の普通の学園物として見た場合妙に80年代的で、それもなかなか趣がある・・・気がする
まぁなんにせよ人気シリーズでいくつも単行本になっているので手に取りやすいとは思う。ミステリに慣れた方ならミステリの“型”の微妙なはずし具合の妙が分かるかと思われ
すべての謎は死体から始まった
6つの箱に分けられた男。7つの首が順繰りにすげ替えられた連続殺人。エレベーターで16秒間に解体されたOL。34個に切り刻まれた主婦。トリックのかぎりを尽くした9つのバラバラ殺人事件にニューヒーロー・匠千暁(たくみちあき)が挑む傑作短編集。新本格推理に大きな衝撃を与えた西澤ミステリー
この作家の代表的なシリーズと呼べる、「匠千暁シリーズ」。主人公はビールが死ぬほど好きなぼんやりとした大学生で、この手の作品にありがちなストーリーテラーとしての利発なヒロインとタッグを組んで事件解決に当たるというもの
この作品の主人公は個人的には非常にリアリティがあって、マッチョでもなく切れ者でもなくエキセントリックでもなく尊大でもないごくごく普通の大学生が推理するところに妙味がある。男性の立場から見た主人公の俗っぽさと推理以外の凡庸さは本筋以外の普通の学園物として見た場合妙に80年代的で、それもなかなか趣がある・・・気がする
まぁなんにせよ人気シリーズでいくつも単行本になっているので手に取りやすいとは思う。ミステリに慣れた方ならミステリの“型”の微妙なはずし具合の妙が分かるかと思われ
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)
2004年6月21日 読書
異色のミステリ作家、麻耶雄嵩の作品
この作家の描く物語は非常に読後感が悪い。この作品もご多分に漏れず、ひどい結末だ。しかし、クオリティが低いかというとそうではないし、ミステリにある種の暗さを求めている方なら楽しめること請け合いだろう。というのも、現在主流になってると思われる魅力的な主人公(たち)が事件を解決するという部分が壊れているだけであって、主人公の鬱屈具合に感情移入できる人もいるかもしれないし、偽悪的な振る舞いに共感するかもしれない。ようするに、普通事件を終えた後主人公は平凡な日常に戻るが、この作家の場合常に主人公も事件の傍観者ではなく当事者であり事件と自分を切り離すことができなくなるというところが作品の特徴だろう
アクが強いが面白いのでお勧め。うつ気味の方は避けられたほうが無難です
歪んだ館が聳え、たえず地が揺れ、20年前に死んだはずの女性の影がすべてを支配する不思議な島「和音島」。真夏に雪が降りつもった朝、島の主の首なし死体が断崖に建つテラスに発見された。だが、殺人者の足跡はない…
この作家の描く物語は非常に読後感が悪い。この作品もご多分に漏れず、ひどい結末だ。しかし、クオリティが低いかというとそうではないし、ミステリにある種の暗さを求めている方なら楽しめること請け合いだろう。というのも、現在主流になってると思われる魅力的な主人公(たち)が事件を解決するという部分が壊れているだけであって、主人公の鬱屈具合に感情移入できる人もいるかもしれないし、偽悪的な振る舞いに共感するかもしれない。ようするに、普通事件を終えた後主人公は平凡な日常に戻るが、この作家の場合常に主人公も事件の傍観者ではなく当事者であり事件と自分を切り離すことができなくなるというところが作品の特徴だろう
アクが強いが面白いのでお勧め。うつ気味の方は避けられたほうが無難です
ミステリ作家、竹本健治の作品
まぁ、あらすじを読んでもらえば分かるとおり、かなりしょうもない話だ・・・。実在の推理作家を登場させる意味もあまり見出せない。おまけにちょっと電波入っている気がする。ただ、この作家は妙に世間的な評価が高いんだが・・・
一応こういうのもありますよということで紹介してみた。ただ、バカミスではないのでその辺は安心してください。暇な方はどうぞ
実在する推理作家たちを襲った奇妙な事件!
本の上に“排泄物”を残していく「うんこ事件」が、山口雅也氏、新保博久氏、笠井潔氏らのもとで起こった。物語中に有名作家が突如原稿を混入し、謎は深まる一方。綾辻行人、小野不由美、笠井潔、新保博久、法月綸太郎などなど、現代日本ミステリー界をしょって立つ作家たちが実名で登場。虚々実々の物語世界で活躍する「ウロボロスの偽書」につづく第2弾。装丁は京極夏彦氏が手がけた
まぁ、あらすじを読んでもらえば分かるとおり、かなりしょうもない話だ・・・。実在の推理作家を登場させる意味もあまり見出せない。おまけにちょっと電波入っている気がする。ただ、この作家は妙に世間的な評価が高いんだが・・・
一応こういうのもありますよということで紹介してみた。ただ、バカミスではないのでその辺は安心してください。暇な方はどうぞ
ミステリ作家、我孫子武丸の作品
この作品はミステリの範疇から外れてしまってる部分がある。しかし、面白い。割りとライトな雰囲気で軽く読めるし、なにより作者の映画への思いをぶつけたと思われる登場人物の様々な映画への薀蓄が凄い。登場人物は最後まで右往左往するがその様子もコメディタッチで笑える
映画好きならより楽しめる作品ではないかと
映画界の鬼才・大柳登志蔵が映画の撮影中に謎の失踪をとげた。すでにラッシュも完成し、予告篇も流れている。しかし、結末がどうなるのか監督自身しか知らないのだ。残されたスタッフは、撮影済みのシーンからスクリーン上の犯人を推理していく…。『探偵映画』というタイトルの映画をめぐる本格推理小説
この作品はミステリの範疇から外れてしまってる部分がある。しかし、面白い。割りとライトな雰囲気で軽く読めるし、なにより作者の映画への思いをぶつけたと思われる登場人物の様々な映画への薀蓄が凄い。登場人物は最後まで右往左往するがその様子もコメディタッチで笑える
映画好きならより楽しめる作品ではないかと
漱石と倫敦(ロンドン)ミイラ殺人事件
2004年6月21日 読書
島田荘司の異色作
夏目漱石とシャーロック・ホームズが出会うというしょうもないっちゃあしょうもない話だが、この作品は各々の登場人物へのリサーチや時代考証もそれなりにきちんとしていて完成度が結構高い。ミステリとしても面白いし、ギャグとしてもかなり笑える。夏目漱石の一人称で物語の半分は進むが、シャーロック・ホームズとの出会いのシーンでホームズに馬鹿にされたのが悔しかったのか常にホームズをけなす方向で話を進めるのも面白い。もちろん物語の後の半分はワトソンの一人称で進むんだが・・・
この作品はテーマゆえに過小評価されているように思えるが、実は島田荘司の仕事の中ではクオリティがかなり高いので薦めたい。あくまで個人的に、だが
勇躍英国へ留学した夏目漱石は下宿先で夜毎、亡霊に悩まされ、シャーロック・ホームズに相談に行った。折しもそこに金持未亡人が訪れて言うには、永らく生き別れた弟と再会したのだが、彼は中国で恐しい呪いをかけられ一夜にしてミイラになってしまった、と。居合せた漱石もこの難事件解決に一役買うことになるのだが…
夏目漱石とシャーロック・ホームズが出会うというしょうもないっちゃあしょうもない話だが、この作品は各々の登場人物へのリサーチや時代考証もそれなりにきちんとしていて完成度が結構高い。ミステリとしても面白いし、ギャグとしてもかなり笑える。夏目漱石の一人称で物語の半分は進むが、シャーロック・ホームズとの出会いのシーンでホームズに馬鹿にされたのが悔しかったのか常にホームズをけなす方向で話を進めるのも面白い。もちろん物語の後の半分はワトソンの一人称で進むんだが・・・
この作品はテーマゆえに過小評価されているように思えるが、実は島田荘司の仕事の中ではクオリティがかなり高いので薦めたい。あくまで個人的に、だが
チャールズ・ブコウスキーの作品
この作家は割りと自分の経験や人生観を作品にフィードバックするタイプで、フィクションの体裁を取っていてもそこかしこに作者の影を見つけることができる。その作家性が苦手な人にはおそらく受け付けられない作風だとも思う。しかし、この作品を読んでしまうと良くも悪くもこの作家をこの先頭にとどめておくことになると思う。それほどインパクトがある
個人的には、20歳の頃この作品をバイト先の30代後半の男性から勧められ、読んでみて非常につまらなかったと思った覚えがある。ただ、今読み返すと独特の文学性が少しは分かるようになってきた。ようするにアウトロー万歳ってことだろう、極論だが。あれこれ御託を考えて読むタイプの本ではないというか
酔っぱらうのが私の仕事だった。救いのない日々、私は悲しみの中に溺れながら性愛に耽っていた。倦怠や愚劣さから免れるために。私にとっての生とは、なにものも求めないことなのだ。卑猥で好色で下品な売女どもと酒を飲んでファックする、カリフォルニア1の狂人作家…それが私である。バーで、路地で、競馬場で絡まる淫靡な視線と刹那的な愛。伝説となったカルト作家の名短編集
この作家は割りと自分の経験や人生観を作品にフィードバックするタイプで、フィクションの体裁を取っていてもそこかしこに作者の影を見つけることができる。その作家性が苦手な人にはおそらく受け付けられない作風だとも思う。しかし、この作品を読んでしまうと良くも悪くもこの作家をこの先頭にとどめておくことになると思う。それほどインパクトがある
個人的には、20歳の頃この作品をバイト先の30代後半の男性から勧められ、読んでみて非常につまらなかったと思った覚えがある。ただ、今読み返すと独特の文学性が少しは分かるようになってきた。ようするにアウトロー万歳ってことだろう、極論だが。あれこれ御託を考えて読むタイプの本ではないというか
すべてがFになる―The perfect insider
2004年6月20日 読書
かなり多作のミステリ作家、森博嗣のデビュー作
この作品は10作完結の「S&Mシリーズ」と呼ばれるものの1作目で、独特の文体で新感覚のミステリだと当時(あくまで当時)は思った。というのも、・・・まぁ、いいにくいんだがこの作家の近作は品質の劣化が激しく、要するに面白くなくなったと言っているんだが、時折出す短編でこのシリーズの主役のその後を何度も描いているため、個人的にはこのシリーズの価値がどんどん低くなっていっている気がしてならない。因みにこの作品は本来2作目だったらしいが、派手なシーンが多いのでこちらをデビュー作にまわしたらしい
しかし、このシリーズに限って言えばなかなか面白いと思う。まぁ、ミステリを多少読んだ上で相対的にということだが。この作品をミステリの王道と捉えると色々おかしなことになりそうな気がするんで・・・
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む
この作品は10作完結の「S&Mシリーズ」と呼ばれるものの1作目で、独特の文体で新感覚のミステリだと当時(あくまで当時)は思った。というのも、・・・まぁ、いいにくいんだがこの作家の近作は品質の劣化が激しく、要するに面白くなくなったと言っているんだが、時折出す短編でこのシリーズの主役のその後を何度も描いているため、個人的にはこのシリーズの価値がどんどん低くなっていっている気がしてならない。因みにこの作品は本来2作目だったらしいが、派手なシーンが多いのでこちらをデビュー作にまわしたらしい
しかし、このシリーズに限って言えばなかなか面白いと思う。まぁ、ミステリを多少読んだ上で相対的にということだが。この作品をミステリの王道と捉えると色々おかしなことになりそうな気がするんで・・・
本格ミステリの大御所、島田荘司の作品
かなり前の作品だが、完全改訂版というのが出ていて、読み比べてみるのも面白い。因みに写真は完全改訂版
この作品は「御手洗潔シリーズ」という探偵物で、まぁミステリをある程度読んでいる人なら誰でも知っているシリーズだが、作品内の時系列でいうと一番最初の事件に当たる。主人公は記憶を失ったまま生活を続けていて、記憶を失う前の生活から派生したトラブルがあり、それが探偵御手洗潔と出会うことによって解決に導かれるというものだ
この作品はこのシリーズのファンからは人気が高い。若き日の御手洗が見れることもそうだが、彼による主人公への実に心優しい「救済」が見られるというところもポイントだろう
かなり前の作品だが、完全改訂版というのが出ていて、読み比べてみるのも面白い。因みに写真は完全改訂版
失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる
この作品は「御手洗潔シリーズ」という探偵物で、まぁミステリをある程度読んでいる人なら誰でも知っているシリーズだが、作品内の時系列でいうと一番最初の事件に当たる。主人公は記憶を失ったまま生活を続けていて、記憶を失う前の生活から派生したトラブルがあり、それが探偵御手洗潔と出会うことによって解決に導かれるというものだ
この作品はこのシリーズのファンからは人気が高い。若き日の御手洗が見れることもそうだが、彼による主人公への実に心優しい「救済」が見られるというところもポイントだろう
一億三千万人のための小説教室
2004年6月20日 読書
作家、高橋源一郎の擬似的な小説作法Howto本
あの高橋源一郎がこういった趣旨の作品を書くということで、まぁ言っちゃ悪いがある種のネタとして手に取った。スタイルとフォームを借りてお得意の電波すれすれの展開をしているんだろうと思ったわけで。ただ、岩波文庫から出されているのでもしかしたらという気持ちもあったのは事実
で、結局のところこの作品は至極まっとうだ。小学校で実際に講演した時の模様を書き起こしているらしい。だから凄く噛み砕いて話をしている。しかし、小学生に小説家になるための具体的な方法を示唆するわけもなく、小説を書きはじめるときの心持と注意点を提示する程度だ。つまり、この本は結果的に趣味で書く方を視野に入れているように思える。もしくは小説家になるためではなく、単に小説を書き始めるきっかけを探している人にヒントを与えるというところか
実用書の体裁を取っているので馴染み難いかもしれないが、小説家がどういう事を考えているかの一つの指針になるので、これを読んだ後では小説を少し違った楽しみ方ができると思う
世の中には小説の書き方に関する本があふれている。そういった本の読者の大半は、小説を書きたい、あわよくば小説家になりたい人だろう。しかし、本書の「少し長いまえがき」の中で、高橋源一郎は早々に断言する。「わたしの知っている限り、『小説教室』や「小説の書き方」を読んで小説家になった人はひとりもいません」。なぜか。「小説家は、小説の書き方を、ひとりで見つけるしかない」からだそうだ。しかし、著者は小説家志望者の夢を打ち砕こうとしているわけではない。この本は、標題どおり「1億3000万人のための」小説教室なのだ。「小説を書く」という作業の前に、「小説の書き方をひとりで見つける」方法を手とり足とり、教えてくれる。本書は「小説(を楽しむための)教室」でもある。その意味では、小説家になりたい人が目を通すべき実用の書といえる。音楽を好きな人が音楽家になり、スポーツの好きな人がスポーツ選手になるように、小説を書くためには小説を深く、楽しめることが前提だ。この本を読むと、小説がますます好きになるはず。文章の巧拙やプロット、キャラクターづくりのテクニックを越えた、小説の魅力に目を開かせてくれるからだ
あの高橋源一郎がこういった趣旨の作品を書くということで、まぁ言っちゃ悪いがある種のネタとして手に取った。スタイルとフォームを借りてお得意の電波すれすれの展開をしているんだろうと思ったわけで。ただ、岩波文庫から出されているのでもしかしたらという気持ちもあったのは事実
で、結局のところこの作品は至極まっとうだ。小学校で実際に講演した時の模様を書き起こしているらしい。だから凄く噛み砕いて話をしている。しかし、小学生に小説家になるための具体的な方法を示唆するわけもなく、小説を書きはじめるときの心持と注意点を提示する程度だ。つまり、この本は結果的に趣味で書く方を視野に入れているように思える。もしくは小説家になるためではなく、単に小説を書き始めるきっかけを探している人にヒントを与えるというところか
実用書の体裁を取っているので馴染み難いかもしれないが、小説家がどういう事を考えているかの一つの指針になるので、これを読んだ後では小説を少し違った楽しみ方ができると思う
現在活躍する3人のヴォーカリストを立てた企画モノ
またしても畠山美由紀を中心に話をするが、この作品はおそらく畠山美由紀関連で最も売れたんではなかろうか。ユーミン×松本隆というだけで年齢層の高い方は引っかかるだろうし、その人たちに各々のアーティストを紹介すると言う意味合いでもこの作品は適しているだろう。かといって若い人が聴いてつまらないかというと・・・まぁ、地味っちゃあ地味だし目新しさもないかもしれないが、どう考えてもこの作品は往年のオーソドックスなPOPSの系譜に位置づけられるしなによりヴォーカル3人はそれを(おそらく)志向してきているし、各々のファンでも納得できるクオリティだと思う
この作品はシングルだが、僕はてっきりアルバムも出ると思っていたので肩透かしを食った感がある。できればこの面子でもう1枚出して欲しいところ
30年にわたり日本のポップス・シーンを切り開いてきた松任谷由実(作曲)&松本隆(作詞)のコンビが17年ぶりに復活。ヴォーカルは堀込泰行(キリンジ)、畠山美由紀、ハナレグミという3組のアーティストをフィーチャリング。プロデュース&アレンジは冨田恵一
またしても畠山美由紀を中心に話をするが、この作品はおそらく畠山美由紀関連で最も売れたんではなかろうか。ユーミン×松本隆というだけで年齢層の高い方は引っかかるだろうし、その人たちに各々のアーティストを紹介すると言う意味合いでもこの作品は適しているだろう。かといって若い人が聴いてつまらないかというと・・・まぁ、地味っちゃあ地味だし目新しさもないかもしれないが、どう考えてもこの作品は往年のオーソドックスなPOPSの系譜に位置づけられるしなによりヴォーカル3人はそれを(おそらく)志向してきているし、各々のファンでも納得できるクオリティだと思う
この作品はシングルだが、僕はてっきりアルバムも出ると思っていたので肩透かしを食った感がある。できればこの面子でもう1枚出して欲しいところ
漫画家、日本橋ヨヲコの作品
「漫画家」と「友情」をテーマにした作品で、3巻で完結した。主人公は漫画家の息子で父親に反発している。小説家になりたいという漠然とした思いを持ち小説を書いているが、ある日クラスで漫画家志望の同級生にその小説を見られてしまう。それがきっかけで2人の漫画家への物語が転がりだす
この作品は、個人的にはどうみても「友情」を描いているようにみえる。それは主人公達に限ってではなく、彼らを取り巻く人たちの友情もそれとなく描写する。目標を見つけどんどん開いていく主人公と逆に技術に精神が追いつかず目標を見失い精神的に追い詰められていく漫画家志望の同級生という構図はこの物語の軸となる部分で、そこに友情というテーマを入れてくる。最近の漫画、特に青年誌で友情をメインテーマにすえているのは珍しいし、他の友情を描いた作品というのは大概共同体への帰属意識、ようするに利害関係の一致や馴れ合いという温度が常温で、何らかのイベントがあるときのみ友情を見せるといった描き方だ。だがこの作家は人の思いやりと個々のつながりを前面に押し出しているし、なにより感情表現の描き方がかなり熱い。だから読んでいてこちらが恥ずかしくなる部分もある。しかし、その熱は最近の漫画にはないもので、逆に新鮮さを感じてしまう。主人公たちが互いに影響され、補完しあって人間的に少しずつ成長していくという部分もあるが、そこはやはり3巻で完結しているわけで、表現が幾分大味だ
アクが強く好き嫌いは別れるだろうが、心に残る作品
「漫画家」と「友情」をテーマにした作品で、3巻で完結した。主人公は漫画家の息子で父親に反発している。小説家になりたいという漠然とした思いを持ち小説を書いているが、ある日クラスで漫画家志望の同級生にその小説を見られてしまう。それがきっかけで2人の漫画家への物語が転がりだす
この作品は、個人的にはどうみても「友情」を描いているようにみえる。それは主人公達に限ってではなく、彼らを取り巻く人たちの友情もそれとなく描写する。目標を見つけどんどん開いていく主人公と逆に技術に精神が追いつかず目標を見失い精神的に追い詰められていく漫画家志望の同級生という構図はこの物語の軸となる部分で、そこに友情というテーマを入れてくる。最近の漫画、特に青年誌で友情をメインテーマにすえているのは珍しいし、他の友情を描いた作品というのは大概共同体への帰属意識、ようするに利害関係の一致や馴れ合いという温度が常温で、何らかのイベントがあるときのみ友情を見せるといった描き方だ。だがこの作家は人の思いやりと個々のつながりを前面に押し出しているし、なにより感情表現の描き方がかなり熱い。だから読んでいてこちらが恥ずかしくなる部分もある。しかし、その熱は最近の漫画にはないもので、逆に新鮮さを感じてしまう。主人公たちが互いに影響され、補完しあって人間的に少しずつ成長していくという部分もあるが、そこはやはり3巻で完結しているわけで、表現が幾分大味だ
アクが強く好き嫌いは別れるだろうが、心に残る作品
サニーデイ・サービスの6thアルバム
発売を受けてのインタビューで曽我部は「今までのように、中身を開けたら爆発するようなプレゼントではなく、受け取る人の事を第一に考えて作ったアルバム」とこのアルバムを評していた。確かにそれは言い得て妙で、以前の楽曲を聴いた時に時折感じたアーティストのエゴが随分後退し、代わりに誰にでもとっつきやすいきれいなメロディとやわらかな世界観の歌詞で貫かれており非常に雰囲気のいいアルバムだ。良く言えば作品としてかなり成熟したPOPSであるし、悪く言えばサニーデイ・サービスがわざわざこのアルバムを作らなくてもいいのではないかと思ったりもする。しかし、やはり曽我部恵一の声は楽曲に合っていて良いと思えるし、そういうアーティストとしてある種当たり前のスタンスで作るとこんな作品もできるという振れ幅を見せてもらった気がする
サニーデイ・サービスを聴くならまずこのアルバムを勧めるという人が多いようだが、全作品中最もアクがなく聴き易いこのアルバムは確かに初心者に適しているかもしれない
曽我部恵一曰く最高傑作という『24時』から、1年経って発表されたアルバム。一度、拡大したサニ−デイ・ワ−ルドを今、一度、曽我部の私小説のような世界に濃縮してみせており、ある意味では原点回帰をはかったアルバムといえる。ただ同じ私小説とはいってもファーストの『若者たち』や、セカンドの『東京』のような青春期のものとは違い、大人になってからの私小説に取り組んだ作品といえるかもしれない
発売を受けてのインタビューで曽我部は「今までのように、中身を開けたら爆発するようなプレゼントではなく、受け取る人の事を第一に考えて作ったアルバム」とこのアルバムを評していた。確かにそれは言い得て妙で、以前の楽曲を聴いた時に時折感じたアーティストのエゴが随分後退し、代わりに誰にでもとっつきやすいきれいなメロディとやわらかな世界観の歌詞で貫かれており非常に雰囲気のいいアルバムだ。良く言えば作品としてかなり成熟したPOPSであるし、悪く言えばサニーデイ・サービスがわざわざこのアルバムを作らなくてもいいのではないかと思ったりもする。しかし、やはり曽我部恵一の声は楽曲に合っていて良いと思えるし、そういうアーティストとしてある種当たり前のスタンスで作るとこんな作品もできるという振れ幅を見せてもらった気がする
サニーデイ・サービスを聴くならまずこのアルバムを勧めるという人が多いようだが、全作品中最もアクがなく聴き易いこのアルバムは確かに初心者に適しているかもしれない
サニーデイ・サービスの5thアルバム
この作品は膨大なレコーディング時間を要したそうで、その結果なんといったらいいのか・・・非常に密度の濃い作品に仕上がっている。前作で一度フォークの模倣から脱皮したものの、この作品で改めてその部分を検証しなおしているようで、楽曲を聴く限り、音楽性が一回りしたからなのかかなり意図的に、そして客観的にある種の批判する精神を持ちつつ楽曲を製作したように見受けられる。「東京」のころは単純な過去への憧憬といった部分もちらほら見えたが、この作品ではそこを完全に消化しきっていて良い悪いではなく妙な情熱すら感じる楽曲が並んでいる
個人的には、当時これを購入して擦り切れるほど聴いていた覚えがある。今思うと提示された価値観が当時のシーンでは目新しかったというのと、ジャケからも発せられる楽曲の熱にやられたってのが大きい
サニーデイ・サービスを初めて聴く人にはとても勧められないが、この作品を彼らの最高傑作と呼ぶ人もかなりいるので、一聴の価値はあるはず
この作品は膨大なレコーディング時間を要したそうで、その結果なんといったらいいのか・・・非常に密度の濃い作品に仕上がっている。前作で一度フォークの模倣から脱皮したものの、この作品で改めてその部分を検証しなおしているようで、楽曲を聴く限り、音楽性が一回りしたからなのかかなり意図的に、そして客観的にある種の批判する精神を持ちつつ楽曲を製作したように見受けられる。「東京」のころは単純な過去への憧憬といった部分もちらほら見えたが、この作品ではそこを完全に消化しきっていて良い悪いではなく妙な情熱すら感じる楽曲が並んでいる
個人的には、当時これを購入して擦り切れるほど聴いていた覚えがある。今思うと提示された価値観が当時のシーンでは目新しかったというのと、ジャケからも発せられる楽曲の熱にやられたってのが大きい
サニーデイ・サービスを初めて聴く人にはとても勧められないが、この作品を彼らの最高傑作と呼ぶ人もかなりいるので、一聴の価値はあるはず
サニーデイ・サービスの2rdアルバム
この頃は、はっぴいえんどの影響が色濃いというか、単純にフォークを志向していたようで、そのあえて狙った感を受け入れられる人でないと、一聴しただけでは良さが分からないんではないかと思う。ただ、当時のシーンであえてこれをやったことの意義は一応リアルタイムでこのアルバムを抑えた人にはわかると思うし、分からなくてもいくつかの曲は心に残るんではないかと個人的には思うんだが。
このアルバムはトータルアルバムで一貫してある世界観が提示されている。いかんせんコンセプトに演奏と歌唱が追いついていない感もある。録音状態もあえて古臭さを出していて、まぁようするに音が悪い。それを踏まえた上で現代的なフォークの解釈の一つを聴きたければこちらを薦めたい。というのも、聴くとある種の風景が見えるアルバムになっていて、それは青臭い頃の空虚な感覚を補完してくれるような音作りになっているからだ
曽我部恵一がサニーデイ・サービスを解散し2枚ソロアルバムを出した後、ライブアルバムを出した。そこで「恋におちたら」を演奏したというのは興味深い。本人はある雑誌のインタビューで今「東京」を聴いていい曲だと思えるのは「あじさい」だと答えていたからだ。個人的にもこのアルバムで一番の楽曲を挙げるならやはり「恋におちたら」だろうと思う。次点で「真赤な太陽」だろうか。ある種の人々には心に残り続ける作品だと思う
この頃は、はっぴいえんどの影響が色濃いというか、単純にフォークを志向していたようで、そのあえて狙った感を受け入れられる人でないと、一聴しただけでは良さが分からないんではないかと思う。ただ、当時のシーンであえてこれをやったことの意義は一応リアルタイムでこのアルバムを抑えた人にはわかると思うし、分からなくてもいくつかの曲は心に残るんではないかと個人的には思うんだが。
このアルバムはトータルアルバムで一貫してある世界観が提示されている。いかんせんコンセプトに演奏と歌唱が追いついていない感もある。録音状態もあえて古臭さを出していて、まぁようするに音が悪い。それを踏まえた上で現代的なフォークの解釈の一つを聴きたければこちらを薦めたい。というのも、聴くとある種の風景が見えるアルバムになっていて、それは青臭い頃の空虚な感覚を補完してくれるような音作りになっているからだ
曽我部恵一がサニーデイ・サービスを解散し2枚ソロアルバムを出した後、ライブアルバムを出した。そこで「恋におちたら」を演奏したというのは興味深い。本人はある雑誌のインタビューで今「東京」を聴いていい曲だと思えるのは「あじさい」だと答えていたからだ。個人的にもこのアルバムで一番の楽曲を挙げるならやはり「恋におちたら」だろうと思う。次点で「真赤な太陽」だろうか。ある種の人々には心に残り続ける作品だと思う
魚喃キリコの連作短編
あまりにも色気がないゆえ男と間違われがちな女性ハルチンと友人の同居生活における小さな出来事を描く。オールカラーで値段が高め
魚喃キリコは女性の恋愛に付随する心の機微や同時代的な価値観を描くのが上手くこれまで長編短編問わず描いてきたが、この作品では中性的な主人公をメインに20代後半に差し掛かる女性の日常を笑いを交えて楽しげに描いている。個人的にはそこで描かれる日常のありようが楽しげだ。悲痛さを描くこともこの人の味ではあるが、この路線を少し掘り下げてもいいような気もする
あまりにも色気がないゆえ男と間違われがちな女性ハルチンと友人の同居生活における小さな出来事を描く。オールカラーで値段が高め
魚喃キリコは女性の恋愛に付随する心の機微や同時代的な価値観を描くのが上手くこれまで長編短編問わず描いてきたが、この作品では中性的な主人公をメインに20代後半に差し掛かる女性の日常を笑いを交えて楽しげに描いている。個人的にはそこで描かれる日常のありようが楽しげだ。悲痛さを描くこともこの人の味ではあるが、この路線を少し掘り下げてもいいような気もする
妖怪小説の旗手、京極夏彦の妖怪シリーズ4作目
個人的には魍魎の匣の次に好きな作品
舞台が広範にわたり登場人物が奔走した魍魎の匣と違い、この作品ではお寺という世間的にも閉じたイメージの場所を舞台にしていて、会話が重要な位置を占めている。特に、「禅」という馴染みのないものを一般的に分かりやすく噛み砕いて説明しているので、これを読むと仏教が少し身近に感じられるはず。そして、その禅という概念を犯罪の一要素として物語に導入し成功している京極夏彦の手腕にまたうならされる。前回重要な役割で登場した木場は今回は登場しないものの、他のメンバーは軒並揃い、これ以後レギュラーメンバーとなる益田もこの作品で登場している
この作品は最初読んだ時には妙に淡々としたイメージを持ったんだが、何度か読み返すうちに右肩上がりに評価が上がっていった
ただ、何度読んでも最後のほうは怖いと感じるんだが・・・
忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵。箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者・・・骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。謎の巨刹(きょさつ)=明慧寺に封じ込められた動機と妄執に、さしもの京極堂が苦闘する
個人的には魍魎の匣の次に好きな作品
舞台が広範にわたり登場人物が奔走した魍魎の匣と違い、この作品ではお寺という世間的にも閉じたイメージの場所を舞台にしていて、会話が重要な位置を占めている。特に、「禅」という馴染みのないものを一般的に分かりやすく噛み砕いて説明しているので、これを読むと仏教が少し身近に感じられるはず。そして、その禅という概念を犯罪の一要素として物語に導入し成功している京極夏彦の手腕にまたうならされる。前回重要な役割で登場した木場は今回は登場しないものの、他のメンバーは軒並揃い、これ以後レギュラーメンバーとなる益田もこの作品で登場している
この作品は最初読んだ時には妙に淡々としたイメージを持ったんだが、何度か読み返すうちに右肩上がりに評価が上がっていった
ただ、何度読んでも最後のほうは怖いと感じるんだが・・・
妖怪作家、京極夏彦の人気シリーズ
デビューからわずか2作目の作品だが、個人的にはこの作品が現時点で最高傑作。前作では語り部となる関口巽の私小説という意味合いが強かったし、その後活躍する登場人物も紹介程度の扱いだったように思う。この作品で各々の登場人物の芸風も固まったし、その持ち味を生かしたとぼけた掛け合い漫才と,おそらくこの作品での主役といえる木場の真摯な姿勢、それを包括する猟奇的なテーマ、緩急のついた展開と、見所は多いし登場人物の描写も上手くメリハリも利いている。この後の作品になると徐々に作品ごとの登場人物を絡ませて行くので変に予備知識があると少しくどく感じてしまうんだが・・・
この作品が出た頃京極夏彦は早い刊行ペースで次々と作品を世に出していて、この量とクオリティを維持できるのに驚いたもんだ。今は・・・何故か妖怪シリーズ以外の作品にご執心らしいが。南総里見八犬伝をリメイクするという噂があるが、もし本当なら妖怪シリーズより興味があるんで何年でも待ちます
匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物―箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾
デビューからわずか2作目の作品だが、個人的にはこの作品が現時点で最高傑作。前作では語り部となる関口巽の私小説という意味合いが強かったし、その後活躍する登場人物も紹介程度の扱いだったように思う。この作品で各々の登場人物の芸風も固まったし、その持ち味を生かしたとぼけた掛け合い漫才と,おそらくこの作品での主役といえる木場の真摯な姿勢、それを包括する猟奇的なテーマ、緩急のついた展開と、見所は多いし登場人物の描写も上手くメリハリも利いている。この後の作品になると徐々に作品ごとの登場人物を絡ませて行くので変に予備知識があると少しくどく感じてしまうんだが・・・
この作品が出た頃京極夏彦は早い刊行ペースで次々と作品を世に出していて、この量とクオリティを維持できるのに驚いたもんだ。今は・・・何故か妖怪シリーズ以外の作品にご執心らしいが。南総里見八犬伝をリメイクするという噂があるが、もし本当なら妖怪シリーズより興味があるんで何年でも待ちます
Ten Summoner’s Tales
2004年6月19日 音楽タイトルは『カンタベリー物語』の一節「SUMMONER’S TALE」と本名の姓、サムナーを掛けたらしい。ちなみにスティングとは蜂の針という意味で、高校教師時代に黒と黄色のシャツを着た彼を見て、生徒がつけた愛称だという説がある。本作は美しい情景が浮かんでくる「Fields Of Gold」や、映画『レオン』で使用された「Shape Of My Heart」など、影響されたジャズのテイストを隠し味に、スティングらしい遊び心が光る。両親の死に直面し、ナイーブでシリアスな作品が続いていたが、本来の彼が戻ってきた1枚として絶賛される
高校生の頃出会い、洋楽を聴き始めるきっかけになった1枚
当時洋楽に対して漠然と抱いていたハードでソリッドな音作りやギターがぶんぶんうなってる・・・まぁ、ステレオタイプなのか僕が馬鹿なのかは知らないがそういうイメージを洋楽に抱いていて、というのも何故かうちの高校ではハードロックを聴くことがスタンダード化していて、ホワイトスネイクだの、メタリカだのガンズだのを皆嬉々として聴いていたわけで、当然僕も勧められて聴いていたんだがやたら疲れるので洋楽は合わないかもしれないと軽い諦めがあった。そこにこのアルバムを勧められた時のショック・・・あぁ、こういう音もあるのかと似たような音楽性のアーティストを探し始め、このアルバムはその後部屋のBGMとして定着して行った
強いて魅力を挙げるならやはり声だろうか。この作品以後のアルバムも一応持っているんだが、この作品ほどはピンとこないというのが正直なところ。曲単位でなら良い曲も多いがアルバムとしては様々な表情を見せつつ一定の雰囲気とクオリティを保っているこの作品が最も好きだ