ヒュー・グラント、サンドラ・ブロック主演作品

NYの不動産王のジョージは、経営が悪化しつつある会社を建て直すため、熱血弁護士ルーシーを顧問にする。ところがジョージはしっかり者の彼女に頼りっぱなし。彼の子守に疲れた彼女は「2週間後にやめる」と宣言。ジョージは必死に引き止めようとする…。優柔不断で頼り無いけど、母性をくすぐる男というのはヒュー・グラントの十八番。映画ではサンドラ演じるルーシーにリードされるが、ユーモアのセンス、肩の力を抜いたフットワークの軽い演技は抜群で、芝居ではしっかりブロックをリードしている。また、サンドラもハマリ役。スキがない色気がない、けど人がよくて憎めないルーシーのキャラをしっかり際立たせた好演だ。監督&脚本はマーク・ローレンス。『デンジャラス・ビューティー』などの脚本を経て、本作で監督デビューを果たした

まず、ヒュー・グラントは不動産王(つまり金持ち)だが、私生活と女性にだらしの無い男という役柄だ。彼は秘書に仕事の実務的なところを全て任せ、判断を仰がれたときのみ仕事として口を聞く。しかもそういう仕事のスタイルから行って秘書は能力で選ぶべきだが、女好きなのでいつもルックスで選び粉をかけるため、入れ替わりが激しい。そして、サンドラブロックは、良い大学を出ているが、自分の住む地域の公共施設の取り壊しに反対したりといったあまりキャリアを考えない真面目な元弁護士という役柄だ。それが、たまたまヒュー・グラントの目に止まり社長秘書ということになる

この作品の凄いところは、サンドラ・ブロックがプロデュースしていることもあり、徹底してサンドラ・ブロックに気持ちよく状況を設定し、話を転がすというところだ。フリーターが仕事のできる社長秘書になり、社長と対等なパートナーになり、多少恋愛じみた雰囲気にもって行き、会社で評価されるものの自分のしたいボランティアをするために辞め、最終的には金と理解者(恋人)と自分のやりたい仕事を手に入れるという・・・仕事の部分では元弁護士という設定だからまぁいいとしても、仕事中心に生きてきたから恋愛にも不器用的な表現なんかは観ていてさすがに切れそうになった。ヒュー・グラントの子供っぽい部分を包括する母性的なニュアンスも抜かりなく入れている

個人的には2時間呆然で、途中からは怒りを通り越してすがすがしくなった。最後は笑えて来た。ハリウッド・スターの押しの強さを垣間見た瞬間だったな。凄いです
須永秀明監督作品、永瀬正敏主演

町田康原作の小説を、須永秀明監督が映画化した異色コメディ。主演は永瀬正敏。ナンバーガール、ゆらゆら帝国らが参加したサントラ盤も話題に

仕事を干されている脚本家が、映画プロデューサーに誘われるままシナリオハンティングに出掛け、次々と思いもよらぬ被害の洪水に飲み込まれるスラップスティックファンタジー。絶望の淵に立たされた、うだつの上がらない脚本家を永瀬正敏が演じている

この作品は町田康の同名小説を原作にしているが、実際観てみると感心してしまうくらい原作に忠実に作ってある。原作では、仕事を干されて気持ちはささくれ立ち猜疑心にまみれ追い詰められている主人公が金と功名心に突き動かされながらも、自分の理解の範疇を超えた数々のシチュエーションに翻弄され、最後は焼きそばを物凄い形相で作って終わるという訳の分からない勢いのある作品だったが、この作品では主人公役の永瀬正敏の芸風に拠り、ささくれ立った猜疑心のある小人物という人物造形が薄らぎ、淡々とした役柄になっている。キャストもそれなりに豪華といっても良いんではないかと思う。鳥肌実、車だん吉、小松方正、ムッシュかまやつ、Dragon Ashの降谷建志あたりが登場する。kjの出演理由は謎だが・・・

この作品は小説の世界を忠実に再現しているので、意外性というのはあまりないのかもしれない。しかし、映像化されることで面白さが増す部分もあり。女子高生が口から素麺をたらして歩くシーンなどは正直笑ってしまった

この作品は単純にコメディとしてみた場合なかなか面白い。原作を読んでから観ると面白さが増します
ロバート・アルトマン監督作品

メド・フライと呼ばれる害虫を駆除するため、農薬散布のヘリコプターが市街地を飛び回る。都市の上にばらまかれた農薬によって、人々は次第に狂気に陥っていくのか……。ハリウッドを徹底的に皮肉った傑作「ザ・プレイヤー」に続いて、R・アルトマンが豪華キャストで完成させた、3時間を越すユニークな群像劇。レイモンド・カーヴァーのいくつかの短編を基に、10組の人々の日常の中にひそむ非日常を鮮やかに描いている。もちろん単なるオムニバスなどである訳もなく、微妙に入り組んだ人物構成と繰り広げられるエピソードが無類の面白さになっている。それを支える、主役クラスばかりの錚々たるキャスティングも見応え充分だ

この作品はレイモンド・カーヴァーという作家の短編集を原作にしており、それぞれ関連性の無い短編を同時進行させ、ところどころでニアミスやクロスオーバーさせるというような構成になっている。因みに、この作品が公開される前後に村上春樹がその短編集を翻訳して日本でも出版された。「カーヴァー・ダズン」という作品なので探してみるのも吉

内容は、一言で言うと群像劇だろうか。全体的なトーンとしては派手な演出や分かりやすくするための演出といったものはあまり導入されておらず、淡々としたシチュエーションの妙を楽しむタイプの作品になっている。各々の短編集の主人公たちはその物語を紡ぐのに必死で、普通なら最後に一つの物語に収束していくところだろうが、そういうこともなく、主人公の1人にクローズアップした後終わる。こうして書いているとなんだかつまらない映画のように思えるが、そんなことは全く無い。キャストが皆演技力があり、一つ一つの話自体もそれなりに面白いからだ。3時間ある上映時間も全く苦にならないと思う

ただまぁ、最後のシーンにあっけにとられるかもしれないが・・・

PiCNiC

2004年9月22日 映画
岩井俊二監督作品

『Love Letter』の岩井俊二が『スワロウテイル』との間に、人気シンガーCHARAをヒロインに撮った自主映画的アナーキーなメルヘン。妹を殺したココは、入院させられた精神病院で、ツムジとサトルという2人の青年と知り合う。彼らは施設の塀の上を歩く探険を楽しんでいた。やがて、地球が滅亡するという妄想にとらわれた彼らは、滅亡を見届けるために、塀の外に出てはいけないという規則を守りながら、塀から塀へとつたって海を目指してピクニックに出かける。ピクニックの間に出会うさまざまな人々との交流に、日常への批評を読みとることもできる哲学的な深みを、岩井の軽やかな映像がポップに仕上げている。なかでも鈴木慶一のとぼけた神父さんが印象的である。CHARAと浅野忠信夫婦の出会いの映画としても要チェックだ

この作品は、観終わった後、非常に変わった後味を残す。そもそも閉塞的な位置にいる登場人物達から見た世界という趣旨なので、彼らのパーソナリティーに寄った、鮮やかで物悲しい描写が多い。その物悲しさというのは、彼らの子供じみた、それゆえに純粋で現在の社会から全く乖離した感情表現と行き場の無い独自の世界観に拠るものだろう。同じような人物造形で幸せな結末を迎える作品もあると思う。しかしこの作品の主人公たちはあまりにも無防備で、現実社会との意識の刷り合わせを行っていない。その為、愛情表現の発露として最後の結末が用意される

この作品での岩井俊二の演出は、純粋さゆえに見つける風景を徹底的に描写しており、それを観ているこちら側に逆説的に世界の残酷さを伝えるというような意図が見える。ただ、全編にわたって発せられ、ラストで爆発する主人公たちの感情の“強さ”は胸を打つはずだ

個人的にはトラウマになるほど印象に残った作品
お勧めはしません

Peace Of Mind

2004年9月21日 音楽
B’zのヴォーカル、稲葉浩志のソロアルバム

2004年ソロ活動第1弾作品となったシングル 「Wonderland」 を含む14曲を収録した、稲葉浩志3rdアルバム。2004年7月に行われた 「THE ROCK ODYSSEY 2004」 のライブ映像から1曲収録したDVD付きの初回限定盤

この作品は3枚目のソロアルバムということになる。もちろんその間B’zとしての活動も活発に行い、音源もコンスタントに出している。しかし、この作品を聴く限り、現在のB’z名義の作品よりもこちらのほうがある程度長いスパンでB’zを聴いてきた方に納得してもらえるクオリティではないかと思う

現在のB’zは個人的に今一つと思っていることは以前レビューした時に書いたが、その理由の一つに楽曲の手抜き感があった。メロディへの言葉の当て方や独特のリズムの取り方、歌いまわしがあまりにも形骸化というか、“B’zとしての歌唱法”として出来上がった型をなぞっているだけのように思えたからだ。音作りにせよそれは言える事だった。しかし、この作品ではそういった細部が非常に丁寧に作りこまれており、以前の“B’z”の良い時期の楽曲のような求心力が戻ってきている。具体的に言うと、「Loose」の「消えない虹」や「夢見が丘」のような、ロック色を抑え楽曲の良さを引き出すアレンジとメロディの良さ、抑制の効いた歌詞の表現などだ。抑制の聴いた歌詞というのはソロアルバムでは一貫しているように思えるが、前作「志庵」では以前からのイメージをかなり逸脱した“稲葉でなくても書けるような”歌詞だった。そして何より、曲がイメージを逸脱する時代遅れなものだった。時代遅れというのはB’zにも言えることなのかもしれないが、彼らなりの“色”という点でそこは認知されていて、それすら逸脱すると売りといえるものが無くなってしまう。それを踏まえての今作では彼の持ち味も存分に発揮され、楽曲も音が的確に配置され、何より稲葉自身が作ったメロディと細かい音のニュアンスに気を遣った丁寧な歌唱により、結果として皮肉にも以前の“B’z”の良さを再構成したような作品となっている。作品の最後を締める「あの命この命」はアコースティックギターとピアノをバックに歌い上げる稲葉の歌唱力が発揮された佳曲だ

ソロ1stである「マグマ」は鬱屈した世界観を持ちつつもB’zでは出来ないような楽曲にトライした良盤だったが、この作品ではそういったこだわりも特に無く、肩の力が抜けた、そして「志庵」では逸脱していた“アーティストイメージ”を背負った歌唱と楽曲が展開された良盤になっている。以前のB’zが好きな方にはお勧めです

銀魂 3

2004年9月21日 漫画
漫画家、空知英秋のSF時代劇

宇宙海賊「春雨」に囚われた新八と神楽を救うため、銀さん&桂が敵の本拠地に乗り込んだ! 果たして万事屋の運命は!? 他にもリストラされた男とか河童とかアイドルとか真選組とか色々登場

この作品は一度紹介したので、詳しくはそちらを参照されたし

なんだか出版のペースがやたら早い気がするのは気のせいだろうか。それはまぁいいとして、内容的には可もなく不可もなく、相変わらずとしかいいようがないドタバタコメディになっている。

ギャグ漫画を語るというのもなんとなく不毛なので一言だけ。この作品には幕末の志士達をモデルにしたキャラクターが多数登場するが、事件や史実も絡めていくとさらに面白くなるんではないかと思った。ただ、それをやると本来の持ち味がどこかへ行ってしまうこと請け合いだが・・・

シガテラ 3

2004年9月20日 漫画
漫画家、古谷実の高校生を題材にした作品

自分の意志どおり事が運ぶはずもない青春17遁走曲(フーガ)。ついに残忍な毒の扉が開く!親友と恋人、どちらが大切ですか?高校生が愛欲に耽ってもいいのですか?信賞必罰(しんしょうひつばつ)の原則は守られているのですか?

【遁走曲】…フーガ。複数の主題が次々と複雑に模倣・反復されていく対位法的楽曲。…と、なっている。当初、この作品を「微笑ましい恋物語」「いじめられっ子の心情表現」程度と思って読んでいた人も多かっただろうが、3巻に至り、それぞれのテーマがみるみる覆い尽くさんばかりに広がり、絡まりあい、逃げ出せなくなりつつある。当初から「シガテラ」という毒の名前を題とし、「遁走曲」と称していたことからもわかるように、それもこれも、当然作者の構想の範囲内の展開であろう。作者は、読者の数段先のレベルで物語を作っている。当初それほど意識しなかったこれらのキーワードにこれだけの意味があったのだから、ヒントは作中の至るコマにもあるはず。(まあ、タイトルなんだから、重要であってしかるべきではあるが。)作者のばらまいたそれらを残さず読みつくそうとしても、それを十分に受け入れるだけの奥行きを持った作品だと思う

この作品では1.2巻で描いてきた主人公周りの描写が一段落し、おそらく本編ということになるのであろう、悪意の描写に踏み込んでいる

今回熾烈な体験をする元いじめっ子である谷脇は、自分のした事のリスクも踏まえた上でのシビアな世界観を持ち、それゆえに当然のように殺人を犯し、自分の日常へ戻る。身を守るためだ。谷脇への復讐を考えた主人公の友人である高井にせよ、追い詰められた上での選択であり、そのシビアさは谷脇の持つ世界観に同調する。いじめというのは、いじめている側がいじめられる側に自分の世界観を刷り込む行為でもあるわけで、高井は自分の身を守るために、谷脇のシビアな価値観に視線を合わせ異物として排除しようとした結果、今回の悲劇は起こる。ただ、主人公だけは一貫して幸福で、彼のユルい楽観主義な世界観と彼を取り巻く環境、そして現実的な谷脇達の温度と価値観は対照的な位置に置かれ、物語の冷たさを浮き彫りにする

この作品は、主人公の視点が無ければただの駄作になると思う。個人的にヒミズはその点で今一つだった。今後に期待
はっぴいえんどに在籍した4人の仕事を集めた企画盤

はっぴいえんどといえば、大滝詠一、細野晴臣、鈴木茂、松本隆の4人が70年代初期に活動していた日本のロック・バンドの草分け的な存在なのですが、各メンバーが30年にわたって現在も活躍を続けていることは、みなさんもご存知の通り。そんな彼らの、はっぴいえんど解散後におけるコラボレーション作品を集めた2枚組のコンピレーション盤。たとえば最近のCMでもおなじみの「君は天然色」は、大滝詠一による名曲中の名曲ですが、作曲の大瀧に、作詞には松本隆という、はっぴいえんどメンバーによるコラボレーション作品ともいえます。また宮崎駿監督の劇場版アニメの名作『風の谷のナウシカ』テーマ・ソングとして知られる安田成美「風の谷のナウシカ」は細野が作曲、松本が作詞というケース。そういった視点から選ばれた“もうひとつのはっぴいえんど”を凝縮した内容で、ジャケット・デザインはグルーヴィジョンズが手がける予定(収録予定曲は下記)。日本のポピュラー・ミュージック史に刻まれた名曲や隠れた名曲が、はっぴいえんどから生まれたということがよく分かる1枚といえます

この作品は選曲を見てもらえば分かるようにかなりメジャーなところから引っ張ってきている。そして、ファンならずとも購入欲が多少湧くんではないかと思う。聴いた事の無い方でも一度耳にすれば「あぁ、これか」とすぐにわかるはずだ。個人的にはかなり痒いところに手の届く一枚という風に見える。購入次第改めてレビューしたい

[Disc-1]
1. 君は天然色(大滝詠一)
2. ハイスクールララバイ(イモ欽トリオ)
3. 風立ちぬ(松田聖子)
4. A面で恋をして(ナイアガラトライアングル〜佐野元春、杉真理、大滝詠一)
5. 赤道小町 ドキッ(山下久美子)
6. 探偵物語(薬師丸ひろ子)
7. ガラスの林檎(松田聖子)
8. 過激な淑女(YMO)
9. Tシャツに口紅(ラッツ&スター)
10. ペパーミント・ブルー(大滝詠一)
11. 風の谷のナウシカ(安田成美)
12. 宵待ち雪(裕木奈江)
13. 君に、胸キュン。(浮気なヴァカンス) (槇原敬之)
14. 七夕の夜、君に逢いたい(森高千里)
15. 恋するカレン(CHEMISTRY)
[Disc-2]
1. しらけちまうぜ(東京スカパラダイスオーケストラfeat.小沢健二)
2. 指切り(ピチカート・ファイヴ)
3. Bachelor Girl(稲垣潤一)
4. 月下美人(松本伊代)
5. 硝子のプリズム(松田聖子)
6. 夢・恋・人(藤村美樹)
7. 冬のリヴィエラ(森進一)
8. スピーチバルーン(大滝詠一)
9. いちご畑でつかまえて(松田聖子)
10. さらばシベリア鉄道(太田裕美)
11. 失恋レッスン(イモ欽トリオ)
12. 春爛漫(山口百恵)
13. 微熱少年(鈴木茂)
14. ソバカスのある少女(ティン・パン・アレー〜鈴木茂、南佳孝)
15. ミッドナイト・トレイン(スリー・ディグリーズ)

VERY BEST ROLL

2004年9月18日 音楽
CHAGE&ASKAのベストアルバム

お互いのソロ活動を経て、20周年を迎えた1999年の最後にリリ―スされた、まさに集大成的な2枚組ベスト・アルバム。女ごころとドラマティックな展開が印象的な、1979年のデビュー曲「ひとり咲き」、民族調のアレンジが彼ららしい「万里の河」、メガ・アーティストへ飛翔したスマッシュ・ヒット「SAY YES」や、C&A流のロックナンバーと言える「YAH YAH YAH」などはもちろん、アルバム所収のファンから要望の高い楽曲なども収録、シングル・ヒット集に止まらない内容。ジャパニーズ・フォーク的な地点に始まりどんどん広範囲なメロディとサウンドを自分たちのものにしてゆく過程、飛鳥涼のボーカルが艶とパワーを増す様を実感するのもオツ

この作品は、初期のフォーク色の強い楽曲から、2人の声質を生かしていく方向に転換し地道に佳曲を量産していた時期を経て「SAY YES」からのメディアタイアップによる爆発的なヒット曲を量産した時期、現在のマイペースな曲作りの体制に入ってからの楽曲まで全時代を満遍なく網羅した、まさに“ベスト”アルバムになっている

このアーティストは去年ライジングサンロックフェスティバルという野外フェスでシークレットゲストとして登場したため、以前に比べると若年層への認知度は多少広がったと思われる。しかし、どうしてもシニアクラス向けのアーティストというイメージが抜けないし、実際彼らもそれで別に構わないというようなスタンスを取っているように見える。リリース時のメディアへの露出もそれほど無い様だ。確かにこのアーティストの魅力は卓越した表現力と繊細なメロディラインの楽曲だし、一度メディアを席巻したということもあり、あえて手に取るというようなことは少ないかもしれない。ただ、楽曲の質という点においてはかなり高いレベルだし、特に中期の作品には普遍的な良さというものがある。「WALK」や「太陽と埃の中で」などは秀逸だ

この作品は、「SAY YES」や「YAH YAH YAH」などの広く知られた曲も含まれているが、他の楽曲を聴くとその2大ヒットシングルの良さというのはあくまでも表現の一部ということが分かると思う。クオリティはあくまでも一貫しており、違うのは売り上げだけだというか。ただ、それはあくまでも中期に限った話で、具体的に言うとディスク1の「恋人はワイン色」からディスク2の「YAH YAH YAH」までだ。それ以前・以降は正直今一つと言わざるを得ない。個人的には嫌いではないんだが・・・

そういえば、MTVアンプラグドに出演した初めての日本人アーティストでもあったな。MTVJAPANが開局して仕切り直した為、初めての日本人アーティストは宇多田ヒカルという風に認知されるようになってしまったが・・・

ピアノ

2004年9月16日 音楽
クラムボンのヴォーカル、原田郁子のソロアルバム

日本のポップ・ミュージックの良心、クラムボンのキーボディスト&ヴォーカリストとして活躍中の原田郁子による初のソロ・アルバム。オオヤユウスケ(ポラリス)との共同プロデュースによる本作は、タイトル通り“ピアノ”を中心とした歌モノがラインナップされているのだが、そのどれもが本気で秀逸。ジャズ、クラシック、童謡から現代音楽までを吸収したメロディ、そして、あまりにも繊細で、つい見失いがちな感情をていねいにすくい取った歌

クラムボンのヴォーカル原田郁子の待望の1stソロ作品。単独名義では初となるこのアルバムでは、共同プロデューサーとしてPolarisのギター大谷友介、ベースにLosaliosのTokieを、ドラムにはPolarisの坂田学が参加している。名曲「なみだ と ほほえむ」、ハナレグミの永積タカシ提供のナンバーを含む全10曲を収録

この作品は、クラムボンの初期の音楽性を推し進めたような作品になっている。簡単に言うと、ピアノとヴォーカル、メロディを軸にして、他の楽器やアレンジはあくまでもそれに沿うだけというか。そして、シンプルな楽曲によってヴォーカルの声質が生かされ、穏やかで等身大の魅力と呼べるものが表出している。“間”を生かした楽曲は雰囲気を大事にしていて、気を張らずに聴けると思う。「海からの風」はスケールの大きなバラードで、ヴォーカルの良さが最大限に生かされた佳曲

個人的には、今年購入した作品の中では最も良いアルバムだと思う
かなりお勧め

THE LIVING DEAD

2004年9月16日 音楽
BUMP OF CHICKENのインディーズ時代のアルバム

2000年3月にインディーズから発売され、入手困難となっていた2ndアルバムがメジャーより復刻。ドライヴするベースとギター2本のカラミが素晴らしい「グングニル」ほか、秀曲ぞろい

このアーティストの評価を決定付けた作品と言っても良いだろう。この作品で話題を呼び、満を持してメジャーデビューしたという印象がある。ただ、インディーズ時代からあらゆるメディアでプッシュされていたということもあって、既存のインディーズバンドとはちょっとニュアンスが違う気もするんだが

このアーティストの特徴の一つとして、歌詞が挙げられる。観念的な歌詞が主流になった昨今、珍しくシチュエーションを設定した・・・というより、“物語調”の歌詞が多い。それも現実的な物語ではなく、寓話的な、極端に言えば童話的な歌詞で、それをある程度年を経た人間というスタンスからあくまでも“真剣に”描き出す。そして、その物語はメルヘンになりがちな部分を上手く回避しつつも温かみがあり、ヴォーカルの低く情熱的な歌声と、歌詞を上手く生かすメロディラインとアレンジによって、非常に求心力がある楽曲になっている

この作品では、どちらかというとミディアムテンポの曲に力が入っているようだ。「ランプ」はその寓話性が良い形で結実した名曲といっても差し支えない楽曲で、シングルで切られた「グロリアスレボリューション」は、彼らの歌詞のもう一つのパターンである、リスナーに問いかける形をとっていて少し笑える佳曲になっている。そして、この作品はジャケットに描かれている人物が気持ちの折れそうな人(=リスナー)に物語(=楽曲)を与え、去っていくという物語の体裁を取っている。それを寒いと取る人もいるかもしれないが、個人的にはそのコンセプトは成功しているように見受けられる。お勧め

humansystem

2004年9月14日 音楽
TM NETWORKの良盤

TMネットワーク初の海外(ロス)レコーディングで、何故か異様なまでに録音レベルが低いCD。木根尚登と小室哲哉はこのアルバムが一番好きだと何処かで発言していた。作詞家の小室みつ子も一緒に同行しているが、この頃にTMの4人目のメンバーとしてのポジションを確立したように思う。サウンドは最もTMネットワークらしく、内容も直球勝負で分かりやすい。タイトルはセンスの良さを感じるが、小室哲哉本人は「やり過ぎたかも」と漏らしている。余談だが、小室系アーティストのカバー曲数がもっとも多いアルバムでもある

このアーティストは、後にプロデューサーとして一時代を築いた小室哲哉がキーボートとして参加したユニットで、彼はこの時代にはすでに作曲家としても広く認知されていた。“エピックメロディ”と呼ばれる独特のメロディラインで渡辺美里の「マイレボリューション」などのヒットシングルを量産し続けていて、当時もかなりの人気を誇り、最近活動を再開し根強いファンの間では注目されている

実際聴いてみると、疾走感のあるリズムにユーロビートのメロディが乗り、歌詞は恋愛のみというもので、アートワークやヴィジュアルからもホスト臭がかなり漂う。彼らの打ち出す世界観は明らかに女性をターゲットにしているものの、楽曲の大衆性によって彼らが意図しない層も巻き込んでいたようだ。まぁ、当時は現在のように観念的な歌詞が主流ではなかったので選択肢がなかったということもあるだろうが・・・

この作品は個人的に彼らの作品中最も良いアルバムだと思う。独特の寂寥感がありポップなメロディと、恋愛を様々な切り口から描き出すどこまでも心地よい歌詞の世界観はこのアーティストの作品中でも求心力と大衆性があるという点では突出しているし、楽曲の雰囲気も全体的に良く聴き飽きない。後に鈴木あみに提供した「Be Together」や、シングルで切られた「Resistance」など佳曲も多く、捨て曲と呼べるような楽曲は見当たらない

現在も活動しているアーティストではあるが、このアーティストに限っては過去にさかのぼって聴いたほうが良いと思う。プロデュース攻勢で磨耗した小室自身の繊細さといえるものが残っているはずなので
沖縄ではポピュラーな調味料

これは唐辛子を泡盛に漬け込んだもので、沖縄そばなどにかけて食べると美味しい。作り方も簡単なので、自作している家庭も多い。どこの大衆食堂に行っても置いてある。ようはタバスコみたいなものです

以前父親が唐辛子を貰ってきたと言って、一升瓶でこーれーぐすを作り始めた時はちょっと怖かったなぁ・・・

アフターダーク

2004年9月13日 読書
作家、村上春樹の新作

真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。「風の歌を聴け」から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹書下ろし長編小説


この作品は「海辺のカフカ」から作者が試みている変化をさらに推し進めた作品になっている。その変化は作者の持ち味に関わるようなもので、賛否両論あるようだ。一読した限り、本質的な部分は変わっていないようだし、むしろ本来の持ち味を生かすために変化したように見受けられた

そういうわけで、この作品は過去の作品と異なった点が幾つかある。例を挙げると、3人称での描写をしていること、若い女性を主人公にしていること、風俗描写を現実に即した視点から描いていること、恣意的な寓話性を排除していることなど。そして、様々な切り口で何度も描き続けてきた、異なった価値観と理屈で動く2つの世界といったテーマもこの作品では見当たらない。それについては作品中でその理由と呼べそうな台詞を高橋という登場人物に語らせている

文体と世界観の変化は、やはり「海辺のカフカ」発表時にネットでメールを募集し作者が答えるという企画をしたのも結果的に利いているんではないかと思う。様々な読者との対話によって得た市井の人々の視点はこの作品を描くに当たってかなり反映されているように見受けられる。その所為かは知らないが、村上春樹の作品には稀なほど登場人物に“自然な”魅力がある。それらは作者がインタビューで言っていたように、「普遍性があり描くテーマの足枷にならないような文体へのシフトを考えた」ゆえの変化ということになるのだろう。ただ、それゆえに作者の持ち味が薄れたというのも確かなんだが
漫画家、川原正敏の作品、「修羅の門」の外伝

「修羅の門」で活躍する陸奥九十九。彼が使う古武術「陸奥園明流」は常に時代の影に生き、それぞれの時代に生きたつわもの達と戦ってきた。各時代に活躍した陸奥の姿を描く人気シリーズ第一弾。陸奥に対するは、第一弾にふさわしく剣豪・宮本武蔵が登場!物語終盤で描かれる陸奥八雲と宮本武蔵との死闘は、まさに手に汗握る息詰まる攻防。史実や講談とはまったく違った、川原流の史実はきっとあなたをとりこにすることでしょう

この作品を読む時、元となる作品である「修羅の門」を知っていなければ面白さが半減してしまうと思う。「修羅の門」は、古くから伝わる素手で人を殺す為のみに研鑽された古流武術「陸奥園明流」の使い手である主人公が、現在の有名なスポーツ選手や格闘家をモデルにした登場人物と戦うというもの。K-1などが世に認知されたのを上手く取り入れ、格闘漫画としては珍しく“間”を重視した独特の演出で人気を博した作品だった。そしてこの作品では、その「陸奥園明流」の技が古来から伝わっていた、つまり各時代に使い手がいたという部分を膨らました作品になっている

各巻それぞれ異なった時代を舞台にしており、ようするに史実に「陸奥園明流」を絡めて別の物語を紡ぎだすというアイデアだ。今回は宮本武蔵を絡めている。ただ、念を押すようだが「修羅の門」をある程度読んでいないと、主人公に感情移入しにくいのではないかと思う。あくまでこの作品は“外伝”なので。ただ、独特の演出は好き嫌いが分かれるかもしれないが、なかなか味があって良いと思うし、各巻主人公が変わり、共通するのは陸奥という名前のみという設定はなかなか面白いと思う

鉄腕バーディー

2004年9月11日 漫画
漫画家、ゆうきまさみが以前発表した作品のリメイク版

『鉄腕バーディー』は80年代に週刊少年サンデー増刊に連載され、当時その人気からOVA化もされた作品。このたびの新・バーディーは携帯電話やパソコンを駆使するなど現代性を盛り込み、新キャラも続々登場。そしてバーディーの強さ・凛々しさもパワーアップ! 特に戦闘シーンの美しさは必見

地球に潜伏した凶悪テロリストを逮捕すべく宇宙からやってきた、女性捜査官・バーディー。捜査中に遭遇した少年・つとむを誤って殺してしまった彼女は、つとむの命を救うため、体を共有することに…!?悪を追いつめるべく、バーディーとつとむの壮絶なる闘いが始まる!!

この作品は主人公が変身して悪と対峙するという設定なので、個人的にはコミカルでコメディタッチなイメージを持っていた。それはこの作家の飄々としたタッチの絵柄やセンスを知っていれば当然のことだと思う。しかし、読んでみたところ予想外な方向の作品になっていた。内容的にはSFということで地球に来た宇宙人の陰謀に巻き込まれながらも一つの体に同居した2つの人格が折り合いをつけて生活していくという部分を軸にしているが、青年誌で連載されていることもあって、“暴力”や“悪意”をこの作家の作品としては稀なほど描写している。こういったテーマの作品を描く場合の型は踏襲しているが、ディフォルメされていない現実的な描写をしている上に描き方が極端すぎるような気がした。例えば、友人や家族、先生、クラスメイトなどの主人公周りの登場人物達はこの作家の普段のテイスト通りメルヘンと言っても良いほどユルい。しかし、宇宙人や軍隊、企業などの登場人物たちの描き方に今までのこの作家のイメージを逸脱するほど悪意がある。まぁ、その対比が作品に緊張感をもたらしているということも否めないんだが

テーマがアレなので誰彼構わず薦めたいという作品ではないが、SFに馴染みのある方なら面白いと思います
エレファントカシマシが認知度を上げたアルバム

ポニーキャニオン移籍後,いきなり人気バンドとなったエレカシの新作。「ポップにひよった」という声もあるが,「明日に向かって走れ」のメロディの意外な展開などに,宮本浩次の反骨精神は息づいていると思う。バンドの充実ぶりが伝わる会心作。ビート感がカッコいい

この作品は世間とこのアーティストの需要と供給が奇跡的に一致したアルバムと言える。ドラマのタイアップになった「今宵の月のように」を含むシングルが5曲も入り、独特の寂寥感が漂う味わい深い楽曲が多い。このアーティストのもう一つの側面である攻撃的な部分は影を潜め、かなり意図的に一般受けを狙った作品になっている

このアーティストは、一度ブレイクしたら人気というものはある程度続くという常識を打ち破った点が良くも悪くも彼ら自身の本質を表していると言える。彼らはただの一発屋ではなく、マニアックながらも着実にファンを獲得してきた結果ブレイクしたわけで。まぁ、移籍後のメディア戦略も無きにしも非ずだったが。この時期にヴォーカルの宮本浩次はドラマに出演し、バンドとしても歌番組に頻繁に出て、その稀有なキャラクターで人気を博した。ただ、その人気は彼の人付き合いの苦手さやナイーブさを視聴者が感じ取ったからで、愛すべきキャラクターとして認知された矢先に「死刑宣告!!」などとやられたら誰でも引いてしまうだろう。しかし、このバンドは選択肢がほとんど無かったとはいえ、試行錯誤しながら結局は“ロックバンド”であることを選択し、現在も精力的に活動している。そして、狂気を含んだ世界観を持つ楽曲も相変わらず作り続けている。個人的にはこのアーティストのバラードの求心力はかなりのものだと思うので、また一般受けするアルバムなりシングルなりを作って欲しいところだ

プラネテス 5

2004年9月10日 TV
NHKで放送中の宇宙をテーマにしたアニメ

2002年の星雲賞を受賞した幸村誠のコミックを原作にしたTVアニメシリーズ。時は2075年、宇宙旅行が一般的になった時代、宇宙に漂うゴミ“デブリ”が大きな問題となっていた。職業宇宙飛行士としてテクノーラ社に勤務し、デブリを回収する仕事をしている主人公、星野八郎太(通称ハチマキ)と、新人タナベをはじめとする同僚たちが、宇宙で活躍するSF作品だ。普遍性と独自性のバランスが絶妙な物語世界と、精密な考証によってもたらされるリアリティが、広大な宇宙へのロマンをかきたてる。同時に、大企業の日陰部署を舞台にした“職場モノ”でもあり、「会社員として、プロフェッショナルとして現実と折り合いをつけながら生きるということ」というテーマにも踏み込んだ点で、従来の“宇宙モノ”とは一線を画す、ユニークかつ志を感じる一作となっている

この作品は3話を収録している。Phase12「ささやかなる願いを」とPhase13「ロケットのある風景」は漫画にもあったエピソード、つまり原作付きで、Phase14「ターニング・ポイント」のみアニメオリジナルのストーリーになっている。14話は主人公のハチマキとヒロインの田辺の恋愛をメインに据えている。原作では仕事仲間として信頼を築き、特にこれといった描写も無くいきなり結婚するが、アニメではそこに至るまでの恋愛模様にフォーカスして描いている。ただ、このアニメは原作つきのエピソードとアニメオリジナルのエピソードの世界観の強度というかクオリティの差が激しいので連続して観ると少々萎えてしまう。しかし、原作をアニメとして再構築する手腕は見事としか言いようが無く、そういった足し算引き算をしていくと評価が微妙になってしまう。とりあえず一ヶ月ごとにDVDがリリースされているので、地味にそれを追いつつ地上波の放送をチェックしていこうと思う

point

2004年9月9日 音楽
CORNELIUSの4thアルバム

小山田圭吾(元フリッパーズ・ギター)のソロプロジェクト、コーネリアスが再始動。約4年ぶりとなるニューアルバムでは、幻想的なシンセがダブサウンドをイメージさせる先行カット「Point Of View Point」、水の音をテーマに優しいコーラスを重ねるギターロック「Drop」のヒット2曲に、スズムシの鳴き声を取り入れた優しいタッチの「Tone Twilight Zone」、ボサノヴァフレイバーが温かいムードを生み出す「Brazil」など、ギターとシンセサイザーを融合させた超次元的音楽を繰り広げている

前作が世界で発売され評価を得たことで、動向がかなりの注目を集めたのを受けリリースされた作品。前作の計算され尽くした純粋な少年性ともいえるような音楽性の先を提示している。前作のビーチボーイズ的なポップさの代わりに音響的なアプローチを入れており、ロック寄りな楽曲やら過去へのオマージュのような楽曲をこのアーティストの“色”となった独特のアレンジで処理している。基本的には前作と収録曲のバランスはほぼ変わらないといえる

このアーティストは世界の中での自分のミュージシャンとしての位置を考えて作品を作ったり行動しているように見受けられたが、日本のマーケットに向けて発信し、結果的に世界に受け入れられた前作と違い、この作品は世界へ発信するイメージと現実の受け入れられ方のギャップを体感し、認識を修正したうえで改めて世界へ向けてリリースした作品だと思われる。その為、前作のテイストもある程度残っているし、音色も基本的には変わらないが、前作には無い成熟した視点を感じることができる。視点の洗練という点では評価できるが、いかんせん世界観の心地よさでは、前作はこの作品を上回っているわけで。この作品がリリースされてから3年経つのでそろそろ新作を期待している次第

FANTASMA

2004年9月9日 音楽
CORNELIUSの3rdアルバム

97年に満を持してリリースされたサード・アルバム。このアルバムによってコーネリアスの世界的評価及び、世界進出を決定付けたという点からも彼にとって分岐点となったアルバムである。まあ、前作からこの人の異能振りは嫌というほど思い知らされてきたけど、これはもはや、(色々な意味で)邦人アーティストの作品ではないと思う。というか、フリッパーズ時代からある意味、グローバルな音楽を作り続けてきた鬼才が遂に到達した極地とでもいうべきか?随所で発揮されるトリッキーなアイデア、派手なエフェクト、卓越したセンスなんて古い言葉では片付けられない圧倒的なまでの演出力、楽曲のクオリティーの高さといい海外で絶賛されるのも当然の完成度を持った傑作だと思う。彼の全ディスコグラフィー中最も人気があるのもそれを証明している。全編に溢れる、過剰なまでの音楽に対する愛情とユーモアと遊び心に圧倒される一大感動巨編

このアーティストは初期の頃からメディア等での扱いが何故か良く、ファッションブランドと提携したりサブカル的な情報の開示といった活動の仕方を見て、若者文化のみで成立するイメージ戦略によって食べていくアーティストという風に思っていた。つまり、音源等の作品はあくまでアイドルのキャラクターグッズの範疇に入り、なめられない程度にクオリティを保ってはいるが、それはあくまでアーティスト自身の処世に関わることで、ファンのためではないというか。若者の規範の一つになろうとしているという風な・・・ようするに、ミュージシャンである必然性があまりないと思っていたわけで

しかし、その偏見もこの作品によって壊されることになった。このアーティストが常に持っている遊び心と理性的な演出はそのままに、陰鬱さや歌唱力によるカタルシスや歌謡曲的なノリを徹底的に嫌った、ポップなメロディラインと隙間無く構築された音、少女趣味ともとれるほど繊細な世界観をもった楽曲によって、この作品は海外でも評価されることになった。実際のところ、全体的にポジティブな親密さというような雰囲気があり、今までと違い聴いていても嫌味なく良いと思える作品になっていると思う

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