トラックバック機能の試用期間が開始されたようなので早速試してみました。なんだか待ちくたびれた感があるけども・・・
作家、村上春樹の代表作とも呼べるベストセラー

限りのない喪失と再生を描く話題の長篇小説。60年代終りから70年始めにかけての激しくて、物静かで、哀しい、永遠の恋愛小説。青春のきらめき、生と死のあやうい交錯、透明な余韻に揺れるロングセラー

以前持っていたハードカバーがくたびれて来たので思い切って全集を購入した。利点は2つ。上下巻に分かれておらず一気に通して読めるということと、作者がこの作品について語った小冊子がついてくることだ。小冊子は作者のキャリアを大きく飛躍させることになったこの作品について、特に感情を込めずテクニカルな部分から語っており、この作品をある程度読み込んだ方なら納得のいくものだろう。以下に引用してみる

この小説の中で僕がやりたかったことは、いうなれば(これは後になって気づいたことなのだが)「風の歌を聴け」の完全なひっくり返しである。「風の歌を聴け」も「ノルウェイの森」も、フォーマット自体はどちらもいわゆる青春小説である。そこに描かれているものは、二十歳前後の青年が成長過程でみつめる世界の光景である。しかしその二つの小説の違いは決定的である。「ノルウェイの森」を書く時に僕がやろうとしたことは三つある。先ず第一に徹底したリアリズムの文体で書くこと、第二にセックスと死について徹底的に言及すること、第三に「風の歌を聴け」という小説の含んだ処女作的気恥ずかしさみたいなものを消去してしまう「反気恥ずかしさ」を正面に押し出すこと、である。第三点についてそれ以上詳しく説明するのは大変に難しい。心持ちとしてそうだったのだという以外に、僕としては説明する言葉を持たない。

(中略)この小説はあえて定義づけるなら、成長小説というほうが近いだろうと僕は思っている。僕が結局のところ「ノルウェイの森」という小説を、当初の予定通り軽い小説として終えてしまうことができなかったのは、それが原因である。ある程度書き進んでいくうちに、「これをこのまま途中で放り出すことは出来ない」という思いが自分の中で高まってきたのである。僕は「蛍」という小説を、あるところで身勝手に放り出してしまうことが出来た。何故ならそれは短編小説だったからだ。こういう話です、あとは想像してください、それが小説なんです―という具合に。でもその短編を元にもう少し長く伸ばしていこうと決めた瞬間から、僕はその物語に対する全面的な責任を負わされたのである。この「ノルウェイの森」の登場人物たちが愛についての、あるいはモラルについての責任を負わされているように、僕も物語に対する責任を負わされている。

(中略)僕がここで本当に描きたかったのは恋愛の姿ではなく、むしろカジュアリティーズ(うまい訳語を持たない。戦闘員の減損とでも言うのか)の姿であり、そのカジュアリティーズのあとに残って存続していかなくてはならない人々の、あるいは物事の姿である。成長というのはまさにそういうことなのだ。それは人々が孤独に戦い、傷つき、失われ、失い、そしてにもかかわらず生き延びていくことなのだ

この小冊子は当時の作者の心持ちや文体についても言及しており、11ページと少ない割にはなかなか読み応えがある。この作品を最初に読んでから10年経つがその間にあれこれ感じたことや考えたことがこれを読んである程度腑に落ちた

再読して思ったのは、この作品には強い鎮静作用があるということだ。情緒面で乾いていても、この作品を読むと心に何か残るものがあり穏やかな気持ちになる。あくまで個人的にだが・・・
ミュージシャン、大槻ケンヂが描く青春群像劇の完結編

冴えない高校生・大橋賢三。学校を中退し、女優への道を歩み始めた山口美甘子に追いつこうと、友人のカワボンらとバンドを結成したが…。80’sの「青春モンモン」な子どもたちを描く物語の完結編

バンドを結成したは良いものの居場所を見つけられず、ヒロインへの焦燥感と恋愛感情はすでに畏怖の感情にまで昇華されていた。必死に心の均衡を保つ主人公のもとにあるニュースが飛び込んでくる。女優であるヒロインが共演したアイドルとセックスしたというもので、ご丁寧に写真付きだった。そのインパクトに壊れてしまった主人公は鬱屈した日々を過ごし、死を身近に捉え始める。同時進行していた女優と高校生の2つの物語が徐々に絡み合い、主人公はヒロインに対峙する事を迫られるが・・・

この作品は主人公である賢三が回復していく様を中心に描いている。そして、ヒロインの住む世界(=憧れている表現の世界)に触れることにより、妄想の末に肥大した憧れの世界と自分との位置と距離を現実的に把握し、再び表現のほうへ歩みだすという物語になっている。抱えた問題もしょうもなければ、解決方法もしょうもないが、男子高校生なんてそんなもんだろうし、それでいいと思わせるような展開で、最後はすがすがしく終わる。個人的には楽しく読めた

この作品は完結編ということで、作者が前作「チョコ編」で公約した「登場人物を皆幸せにする」という部分においては申し分の無い出来になっている。ただ、この作品が始まってから11年の歳月が流れ完結したため、作者自身の自伝的な小説という意味合いは薄れ、完全なフィクションになっている。また、その間に作者の文章力も少々上がりそれなりに読めるものに仕上がっている。3部作の完結編としてはそれなりに納得のいく作品。ただ、自伝的意味合いを失ったことで単なる娯楽小説になった感はあるが・・・

働きマン

2004年12月3日 漫画
漫画家、安野モヨコが描く職場モノ

発行部数60万部を誇る雑誌「週間JIDAI」に勤める松方弘子は仕事に忙殺されながらも充実した日々を過ごしているが、スイッチが入ると男性ホルモンが分泌され“働きマン”に変身するのだった・・・!!安野モヨコが仕事柄密接に接している“編集者”という職業を愛憎交えつつ描く職業ドラマ

この作品は安野モヨコが今まで様々な形で描いていた“恋愛”というテーマではなく、職場モノに挑戦した意欲作と言える。編集部の同僚などの周辺人物が一話ごとに軸となり、多角的な視点から職場を描こうとしているように見える。結果、それは成功していて、それぞれの立場、姿勢、価値観の異なりをこの作者特有のテンポでデフォルメしつつ表現し、かつ魅力的な規範として描いている。その点では作者の姿勢は一貫しており、視点のシビアさもある程度はあるので読んでいてつまらないということはない。ただ、シビアさはあるものの踏み込みが浅く、個人的には多少物足りない。この巻が登場人物の紹介代わりになり、次巻からドラマのER風にゲストキャラメインで話を転がすというなら納得も出来るんだが

面白さが作者の手癖とノリの良さに拠る所が大きいので、ファンなら以前と変わらず面白いと思えるはず

capeta 6

2004年12月2日 漫画
漫画家、曽田正人が描くモータースポーツを題材にした作品

レーシングドライバー地球代表。その座(シート)はわずかに20席。F1へ、僕らの戦いはもうとっくに始まっている。生きている限り走り続けなければならない・・・レーシングドライバーの疾走する魂を当代No.1の熱き作家が万感の思いを込めて描き出す!!Jカデットクラス決勝ヒート、カペタはオートハウスレーシングの2人、オサムとタケシを猛追!ファイナルラップで遂に2人をとらえ、優勝!歓喜の中、改めてレースに人生を賭ける事を誓う!!そして、日々なる鍛錬を続け、14歳になったカペタの新たなる挑戦がここに始まる…!!

生活環境の中で、自分を抑えることを最も有効な処世術として活用し、日常を退屈だと感じていた主人公が唯一熱くなったのはカートレースだった。周囲の協力と天賦の才能で着実に結果を残していく主人公。ライバルの出現やレースをすることによる世界の広がり、周囲との濃密な関係性を経験した主人公は次のステップへ進むことを強く望む

この作品は序盤主人公の小学生の頃を描いており、この巻から“中学生編”が始まる。小学生編との違いとして、モータースポーツをするにあたって無視できない経済的な問題をメインに描いている。金が無いゆえに1台のカートを使い続け、ぼろぼろになってしまった主人公に、周囲はあれこれサポートをしていく

基本的にこの作者の作品は非日常の中の熱くなれる瞬間を描き出すということにこだわっており、破天荒な消防士を描いた「め組の大吾」、才気に溢れたダンサーを描いた「昴」などとこの作品は同じテーマと言える。そして熱くなれる瞬間と感覚を表現し読者へ伝えるという部分においては一定の評価を得ている。この作品もその点では熱く、冷めた日常から徐々にボルテージを上げていく様をこの作者特有の勢いがあり多少荒い描写で十二分に読者に伝えてくる

個人的には今作のように月刊誌の連載のほうがまとまった量があるぶんより踏み込んだ描写をしているというように思える。なかなか面白いです
ミュージシャン、大槻ケンヂの長編3部作第二弾

大橋賢三は黒所高校二年生。周囲のものたちを見返すために、友人のカワボン、タクオ、山之上らとノイズ・バンドを結成する。一方、胸も大きく黒所高校一の美人と評判の山口美甘子もまた、学校では「くだらない人たち」に合わせてふるまっているが、心の中では、自分には人とは違う何かがあるはずだと思っていた。賢三は名画座での偶然の出会いから秘かに想いをよせていたが、美甘子は映画監督の大林森にスカウトされ女優になることを決意し、学校を去ってしまう…。―賢三、カワボン、タクオ、山之上、そして美甘子。いまそれぞれが立つ、夢と希望と愛と青春の交差点!大槻ケンヂが熱く挑む、自伝的大河小説、感涙の第2弾

この作品ではバンド活動に向けて動き始めた主人公を含む4人の掛け合いの合間に女優としてキャリアを積み始めたヒロインの物語が挟まれるという体裁を取っている。女優になったことにより注目を集めアイドルと付き合うというようになったヒロインによって映画マニアの主人公は銀幕の向こう側へ行った同級生に対して今まで同じ学生生活をしていた人間という事での焼け付くような焦燥感と羨望、嫉妬が混ざり、恋愛感情もあるゆえにのた打ち回ることになる。その中でバンド活動に希望を見出すも貢献できる部分が無いという現実で、主人公は壊れていくことになる

緊張感と密度の濃い世界でヒロインが女優として開花していく様を生き生きと描いた後に、その表現を受け取る側としていつもと変わらない生活している主人公たちを描くことで表題であるじゃんけんのゲーム「グミ・チョコレート・パイン」でヒロインが出している手は常に「チョコレート」であり、「グミ」という歩みの少ない手を出さざるを得なく、遠回りしながらも表現のほうへ歩を進める主人公たちが悲しくも滑稽でそれゆえに共感できる

音楽関係のネタは今回もたくさん詰め込まれている。目標とするバンドのライヴを主人公たちが初体験するところなどはライヴを体験した際の興奮を上手く描き出しており、また受けるバンドと受けないバンドの違いについての描写などもあり、なかなか興味深かった

ただ、終わり方があっけなく完結編を待て!というノリなのは少し引いた。あとがきを見る限り、意図的なものではあったようだが・・・

リアル 4

2004年11月29日 漫画
漫画家、井上雄彦の不定期連載バスケ漫画

右脚の形が変わった日から戸川清春の心の平穏は1日もなかった。学校にも行かず、ただ家に引き篭もっていた。ある日、検査のため、訪れた病院で戸川は2人の男に出会う。死が近い山内と同じ脚を持つ虎の存在…。彼らによって、戸川はやっと前に進むことができた。そして日本代表候補に選ばれ・・・

この作品には主人公と呼べる人物が3人いる。足を悪くして車椅子バスケをしている戸川と、高校を中退しフリーターをしながらバスケをしている野宮、野宮のいっていた高校のバスケ部主将で、交通事故により下半身不随になる高橋だ。序盤は野宮メインで話が進み、バスケを諦め高校を止めた後、ふとしたきっかけから戸川と出会いバスケの練習を一緒にするようになるという流れになっている。その間に高橋が事故にあい今までの生活ががらがらと音を立てて崩れていく様も心の機微を掬い取りながら丁寧に描かれる

この巻では後天的な障害を持つ戸川の過去を振り返り、健常者から障害者への精神的・肉体的なシフトを丁寧に描いている。高校時代陸上部でありながら右足への障害を持つに至った戸川がバイトをしながら仲間を集めバスケに励むといった社会への適応をしつつ、健常者となんら変わらない精神的な強さを持つようになるまでに通り抜けた挫折と葛藤に焦点を絞っている。自分の持っていた世界観が崩れ、アイデンティティクライシスに陥り、新しい世界へ慣れ、そして希望を見つけ自分の障害は欠点ではなく属性だと気づくまでだ

連載がかなりのスローペースな上に、物語を丁寧に描いているので週刊誌でフォローしていると途切れがちな印象を持つが、こうして単行本として編まれると一貫した読後感を持つ作品だと思える。単に前向きで健全な物語というだけでなく、“バスケ”が主軸に据えられることによって競うことによる熱さが加味され上質の青春群像劇になっていると思う
漫画家、井上雄彦の初期作品新装版

まさか、あの『カメレオンジェイル』を新装版で出しちゃうとはな…「井上作品だったら、いまなら何でも売れる!」と判断したんでしょう、集英社。カメレオンジェイルは、成合雄彦という名前で、スラムダンク前に連載していた作品です。顔をなでると別人に変身できるハンター(?)を扱った作品なのですが、ヒットはしませんでした。というか、この作品が駄作なのは、作者本人も認めているところです。まだスラムダンクが連載されているときに、赤マルジャンプだったか、JUMP j-BOOKS(ジャンプジェイブックス)だったかで、対談記事が載っていたのですが(相手は“森田 まさのり”だっけ?)、その時に「カメレオンジェイルは、自分が描いていてつまらなかった」って言ってましたよ。これは、他の井上作品と違って、他の人(渡辺和彦)の原作ありきで、自分の作品として自由にできなかった為と思われます。「描かされてる」って感じではないんでしょうが、スラムダンク以降の作品とは雰囲気が全く違う作品になっています。現在は『バガボンド』のように、原作があっても「井上 雄彦オリジナル}という作品もありますが、当時は厳しかった(難しかった)のかも

参考にしようと引用文を探したところあまりにも的確すぎるレビューを発見したので(上記の引用)何も言う事はありません・・・この作品を知らない方が表紙に騙されて購入しない事を祈るばかりです。初期作品ゆえ絵柄が違いすぎる上にストーリーも今一つという・・・まぁいわゆるコレクターズアイテムになっている。この作者の現在進行形の連載「リアル」の新刊と同時期に発売されたので抱合せ販売とも言えるが

強いて見所を挙げるならば、収録された短編「BABY FACE」にスラムダンクで主人公の取り巻きをしていたヤンキーが登場することと、同じように「楓パープル」という短編でスラムダンクの流川楓が主人公になっていることくらいだろうか。この作品では赤木や木暮といったキャラクターが出てきており、後のスラムダンクの原型を見ることができる

どこを切ってもコレクターズアイテムの範疇を出ないのが厳しいところだが・・・
ミュージシャン、大槻ケンヂが描く長編小説

大橋賢三は高校二年生。学校にも家庭にも打ち解けられず、猛烈な自慰行為とマニアックな映画やロックの世界にひたる、さえない毎日を送っている。ある日賢三は、親友のカワボン、タクオ、山之上らと「オレたちは何かができるはずだ」と、周囲のものたちを見返すためにロックバンドの結成を決意するが…。あふれる性欲と、とめどないコンプレックスと、そして純愛のあいだで揺れる"愛と青春の旅立ち"。大槻ケンヂが熱く挑む自伝的大河小説、第一弾

この作品は大槻ケンヂの自伝的な意味合いの強い小説になっている。3部作になっており、その第一弾である今作は主人公がバンドを組むまでの話になっている。オナニーとサブカルチャーに逃げ込みそこにアイデンティティを見出しクラスの奴らと自分は違うという意識を持つ主人公が、ヒロインへの恋愛感情をきっかけに自意識を補完するための道具である音楽を自己表現の手段として選び、ほんの少しだけ成長するというような物語になっている

内容のほうだが、自意識のかたまりである高校生を赤裸々に描写していて、オナニー関連の話などはしょうもなさすぎて力なく笑うしかない。そして、聴いている音楽や観た映画などの知識を他人との線引きに使うという主人公は個人的に身につまされた。ただ、自伝的意味合いの強い作品なので、作者の青春時代のバンドであるあぶらだこやスターリン、町田町蔵といったバンドが挙げられ、映画も小説も似たような感じで、とにもかくにも固有名詞がかなり多い。現在では知られているものばかりだが、今ほど情報やジャンルが細分化していない時代のことなのでなんとも言えないところだ。その固有名詞にアイデンティティを任せていたという青春の“恥ずかしい”部分をあえて描写するということに意味を見出しているようなので、好き嫌いが分かれる作品かもしれない

因みに文章はかなり稚拙で、「筆者は〜」などと自己アピールした文章を挟んだりして作品の流れを台無しにしていた。その辺のことを笑って許せる方なら面白いかと
ミュージシャン、大槻ケンヂのエッセイ集

1999年7の月、空から恐怖の大王は降りてこなかった…。(「ノストラダムスの大予言大はずれ」)90年代に起こったあれこれを鬼才オーケンが気ままに綴る。21世紀を生き抜くための叡智がここにある!?あれよあれよという間に迎えてしまった21世紀。きれいさっぱり忘れてしまっているけれど、「世紀末」の90年代、日本の隅々、世界各国、どこもかしこも大事件、怪事件がてんこもりだったのだ!そんな90年代のあれこれを、バッタバッタと斬りまくる。そんなのあり!?な、異才・オーケンによる、極私的爆笑メモリアルエッセイ

この作品は、90年代の時事ネタをお題にして、それに直接斬り込んだり、その時作者がなにをしていたかなどの私的なノリに持っていったりするようなエッセイだ。ただ、お題の選び方がマニアックにも社会的にもならず、内容もミュージシャン(というかタレント)である作者のある種ミーハーな視線から分かりやすく笑いに持っていっている。個人的には、痒いところに手が届く!というような面白さだった。とは言っても作者はミュージシャンであり、本業の傍らに書いたエッセイであるためあまり読ませる感じではないが・・・。タイトルを見れば大体のところはつかめると思うので以下に抜粋

大槻ケンヂAV出演
イカ天は過ぎさり池田貴族はガンになった!
即位の礼、その裏でボヨヨンロックが暗躍していた!
ろぅおりぃんぐぅすとおおんず来日
宮沢りえヌード写真集『サンタフェ』発売!
お立ち台ギャルいやらしかった!
ソ連崩壊
幸福の科学ブレイク
湾岸戦争なのにオッパイまん!?
バンドブーム興亡史〔ほか〕

教育

2004年11月25日 音楽
東京事変のデビューアルバム

「群青日和」「遭難」につづき、デビューアルバムが完成。オープニング・トラック「林檎の唄」を筆頭に、シングル曲「群青日和」「遭難」はもちろんのこと、フジロックでも披露された「サービス」「駅前」「御祭騒ぎ」など全12曲収録。シングル「群青日和」「遭難」の収録曲計6曲を25cmアナログ盤に収めた初回生産限定アナログ盤も同時発売される「群青日和」「現実に於いて」「サービス」の作曲をH是都Mが担当し、その他の作詞 / 作曲は椎名林檎が担当

この作品はソロ時代のラストシングル「林檎の唄」で幕を開ける。アレンジをバンドサウンドに変え、声にエフェクトをかけたこの楽曲は受ける印象が陽性のものに変わっており、ソロ時代との音楽性・スタンスの違いを分かりやすく伝えてくれる。洋楽的な歌唱とR&B的なアレンジである「現実を嗤う」を筆頭に、様々なジャンルを楽曲毎に提示してある為、バラエティに富んだ印象を受け、なおかつクオリティは高い。デビューアルバムということで自分達に出来る事をある程度見せるというような意味合いがあるようだ

この作品は曲間があまり無く、テンションが高い導入部が多い楽曲郡の所為で高揚感があり、このアーティストがソロ活動後期に行っていた細やかなサウンドメイキングにバンドサウンド特有の陽性のグルーヴが乗り、安い感情表現に落ち着くことの無い距離感を保っている椎名林檎の歌唱によって昨今のバンドとしては頭一つ抜けているように思える

しかし、個人的には椎名林檎の変化が印象的だった。攻撃的でエッジのたったテンションやテクニカルであろうとする姿勢は相変わらずだが、今回のように陽性で軽やかなグルーヴを前面に出そうと思える程余裕が出てきたというのはやはりバンドの一員だからという事なのだろうか。予想以上の良盤

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2004年11月24日 音楽
坂本龍一のピアノを中心とした楽曲集第3弾

ウラかオモテか? 『1996』につぐ2004年、究極の“ゆるみ系”ベスト! テーマソング、CMソング等のタイアップ・トラックをピアノを中心とした演奏で初CD化するほか、人気曲の中からピアノ曲を中心としたバージョンを新たな演奏で収録。全13曲収録の、『BTTB』以来、久しぶりに聴きやすいアルバムが完成。花王「ASIENCE」CM曲、サントリー・ウイスキー「山崎」CM曲、演劇「浪人街」テーマ曲、戦場のメリークリスマス、Undercooled(acoustica バージョン)ほか。初回盤のボーナス・トラックとして花王「Asience」のCMバージョンを収録

この作品は「1996」「BTTB」に続くピアノをメインに据えた生楽器を中心とした作品だ。今作はピアノソロではなく多重録音で、その結果「Riot in Lagos」のような複雑な楽曲も絶妙のアレンジで再現されている。音源化の要望が非常に多かった「Asience」もオリジナルヴァージョンとピアノアレンジの2種類収録され、CM曲、評判の良い曲を再録した非常に聴きやすいアルバムになっている。下記で教授本人が楽曲解説をしているので参照されたし
http://www.sitesakamoto.com/whatsnew/index_j.php

個人的なことかもしれないが、iTunesに入れたところ音割れしてしまい、その為多少評価が落ちた。後、この作品のテーマである“揺れ”というものが聴き込みが足りない所為か良く分からなかった。「BTTB」での落ち着いて曖昧であり静けさと暖かみもあるという音が非常に好きだったのでこの作品も期待していたが、音がはっきりしており力強さを感じさせるこの作品は全体的な雰囲気が「BTTB」より劣るというか、何度もリピートするには疲れてしまうというか。ピアノメインなのだからその辺りに配慮してくれても良いんではないかと思わせた。教授がヴォーカルを取った「Perspective」はそういった雰囲気が残っておりなかなかの佳曲だと思う

<収録曲>
Asience-fast piano
Yamazaki 2002
+33
Merry Christmas Mr. Lawrence
Rain
Perspective
Undercooled - acoustica
Riot in Lagos
Theme for Roningai-symphonic
Tamago 2004
Bibo no Aozora
Seven Samurai - ending theme
Dear Liz
Asience-original (Bonus Track)
サニーデイ・サービスの裏ベストアルバム

これまでに発表したシングル14枚に収録されたカップリング曲からセレクトされた裏ベスト。シングルはすでに廃盤のため、本作はかなり貴重なものとなるはず。アルバム未収録A面曲も収録

この作品は本来の“ベストアルバム”といえる「BEST SKY」と同時発売された。あちらのほうはアルバム収録曲から選んだベストアルバムだが、こちらは上記にあるように変則的なものとなっている。とはいっても、楽曲の良さはほぼ同じで、シングルとして発売されたもののアルバム未収録である「恋人の部屋」や名曲「スロウライダー」のカップリングである「土曜日と日曜日」、アルバム「24時」収録の「4月18日のバラード」のアウトテイクである「3月29日のバラード」などは個人的に好きな曲の上位に入る

楽曲を包むフォーク色の所為で作品に統一感があり、唯一打ち込み系である「魔法」もメロディラインの癖により浮いた感じは無い。マニアックになりがちである一般的なB面コレクションアルバムとは違い、このアーティストが楽曲のクオリティをある一定の位置に保っていた事を再確認させてくれる作品になっている。もともと普遍性の強い音楽性なので、この作品は名前通りまっとうな“ベストアルバム”と呼べると思う

<収録曲>
恋人の部屋
テーマ
花咲くころ
あの花と太陽と
3月29日のバラード
情景
魔法(CARNIVAL MIX)
成長するってこと
ここで逢いましょう
何処へ?
からっぽの朝のブルース
土曜日と日曜日

20世紀少年

2004年11月21日 漫画
漫画家、浦沢直樹の近未来SF

日々勢力を拡大している新興宗教が起こす事件は主人公が少年時代に描いた未来予想図がモチーフになっていた。それに気づいた主人公ケンヂは新興宗教の教祖が少年時代の仲間であることを確信し、止めるために行動を起こす。しかし、教団は個人の力ではどうすることも出来ないほど巨大化していた。少年時代の仲間たちを集め、次の予言を阻止しようとケンヂ達は奔走するが・・・

この作品は青年誌の割りに登場人物の年齢設定が30代と高めだった。そしてそれはすぐに40代に変わった。その後キーマンとして10代の女の子カンナを据えることで読者層とのバランスを取ったようだ。社会へ出てそれなりの場所へ落ち着いた主人公達が悪夢を払拭するために再び集うことになるというのはスティーブン・キングの「IT」を髣髴とさせる。彼らはごく普通の市井の人々であり、権力を手にした“ともだち”に敵対することで抑圧されることになる

この作者は「パイナップル・アーミー」「YAWARA!」「MASTERキートン」辺りの頃は主人公をいわゆる“ヒーロー”として描いていたが、「Happy!」以降の「MONSTER」「20世紀少年」「PLUTO」では主人公を抑圧された位置においている。それはこの作者が持つ世代特有とも言える個の価値観がかなり道徳的なもので、現在の社会の中で存在した場合こうあるだろうといったような表現として描かれているように個人的には思える。ようするに社会的な視点の比重が大きくなったということだが。それを踏まえて市井の人々を悲しみを交えた視点から描いていき、物語に厚みを出すという独特の味を持った手法はすでに完成されている。技術的にも構成力や描写力はかなりのものになっていると思う

全く先を読ませない展開でなかなか面白い。厭世観の漂う世界観なので合わない方もいるかもしれないが

UNISONDEPT. FRAME

2004年11月19日 趣味
ユニゾンデプトの二つ折り牛革財布

【フレーム(額縁)】
3つの革の構成で創りあげています。額の部分は欧州産ステアのショルダーカット(成牛の首から背中にかけてのところ)のタンニンなめしで程よい硬さと蝋引き仕上げにより深みのある艶感を出しています。額の内革は北米産のステアでタンニンオイルなめしで厚さ・弾力・重量感があります。さらに蝋引き仕上げにより深みのある艶感を出しています。(ステア:成牛皮 生後3〜6ヶ月以内に去勢したオスで、生後2年以上を経たもの)。内側の革はバングラディッシュ産キップでタンニンなめしで表面下のみオイルを入れる事によりオイルの分だけ色が濃くなります。そのため、折り曲げると下地の色が出てくるので、色のコントラストが生まれます。いわゆるプルアップレザーです。
・商品の特徴
額の革は剥いでおりませんので、継ぎ目がありません。
厚みの為、職場が限られてしまいます。大量生産が出来ない。

一悶着あり購入したこの財布。シンプルゆえにはずれることはないだろうと思っていた。そして商品が届き、手に取ってみたところ・・・分厚い。厚過ぎる

商品紹介を見てもらえば分かるように、品質の良い革を2枚重ねて使っていることで重厚な質感が出ているというような印象だが、小さなポケットだと入らないほどの厚みにどうしても目が行き、ゆったりとしたジーンズの尻ポケットに入れることで難を逃れた

ところが、2週間ほど使うと革が柔らかくなり、2つに折った状態で圧力をかけていたためか厚みも減り、しっくりくるバランスに落ち着いた。手に取るとなんとも言いがたい絶妙な大きさなのだ。思った以上に使い勝手も良く、小銭も見た目以上に入り取り出しやすいし、カード類も整理しやすい。お札を入れる部分は2つあるが、外側のほうは幾分取り出しにくい。革のメンテナンスはしていないが特に問題はなく、しっとりとした質感は手に馴染む

かなり満足感のある買い物でした。おすすめ
漫画家、中原裕が描く高校野球を題材にした作品

廃部の危機を迎えている彩学を1年で甲子園へ行かせるという条件で監督に就任した主人公の鳩ヶ谷は、選手の特性を伸ばす変則的な練習方法を取って地道に鍛え上げていた。とは言うものの、選手の層の薄さはいかんともしがたく、来年の新入生に期待をかける。ところが学園のシステムの変更により外部からの新入生が見込めなくなり、困り果てる鳩ヶ谷。ある日、草野球チームで活躍する選手を見つけるが・・・

今作では、見つけたスラッガーをチームに引き入れる部分が軸になる。ようするに、この段階になっても補強を考えなければならないほど甲子園への道は険しいと言うことでもあるが。描写は鳩ヶ谷の知恵を見せることに終始し、この作品が高校球児を描く作品ではなくあくまでも監督主導の作品であることを印象付ける。元キャッチャーである鳩ヶ谷の状況を判断し勝ちに導くリードが果たして結果を出すのかは今の段階では全く読めない。今年をスルーし1年の猶予を得てその間鍛え上げ来年にかけるという展開なので、試合までは間が空く。その間何を描くかというのがこの作品の良し悪しを決定付けることになると思う

この作者は冗長になりがちなマラソンという題材を取り上げた漫画「奈緒子」を成功させたことでも分かるように、構成やストーリーテリング能力が高い。そこで培った“間”を今回加味していることで、ドタバタした展開になりがちなテーマも上手く乗りこなし、独特の落ち着いた雰囲気を出している。その為本来の高校野球を描くという部分を補完することになり、傍流にならない“野球漫画”になっている

この作品は現在の漫画では結構面白い部類に入ると思うんだが、地味なのかあまり取り上げられることが無い。お勧めです

UNISONDEPT. KBYS

2004年11月16日 趣味
前回使っていた財布が真ん中から真っ二つに裂けるという状態に陥り、仕方なく昔使っていたポーターを使いまわし、日々に流され「まぁいいか」などと思っていた昨今。某氏の日記を見て危機感と購入欲が再燃し、まぁようするに気になり、調べ見つけたこの品。なかなか機能性も良さそうなので購入を検討中。デザインがちょっと若すぎるかもしれないが・・・

翌日、購入を決意し手続きをした。注文して2日後には商品(KBYS)が手元に届いた。そして実際の商品を目の当たりにしたところ・・・がっくりと肩を落とすことになった。かなりおっさんくさい。加工の所為でかなり色があせた印象を受け、予想外にくたびれた印象を受ける。別に誰が悪いと言うわけでもなく、強いて言うなら写真から判別できなかった僕が悪いに決まっているのだが、手にとってあれこれチェックするにつれその思いは強固なものになっていった。仕方なく電話をかけ、「交換お願いします」と切り出す。返品ができない自分の気弱さに泣けた。色々迷った挙句FRAMEに決め、購入手続きをとった

この商品を購入するなら、オーソドックスな形ではなく、シリーズ内にある楕円形のものを購入したほうが良いと思う。あれなら形がかわいらしいのでバランスが良いはず

DEATH NOTE 4

2004年11月15日 漫画
漫画家、小畑健が描くサスペンス

第二のキラ出現により、その対応を協議する捜査本部は、Lの進言によりライトを本部へと呼ぶ。そこでライトは、偽キラから送られてきたメッセージに隠された真意に気づく!そして第二のキラと接触を図ろうと画策し・・・

この巻では大まかに3つの流れがある。まず、第二のキラによって捜査が迷走していく部分、次にライトが捜査に協力することになる部分、そしてライトと第二のキラであるミサの交流の部分だ。ライトは捜査に協力することで捜査本部の内情や捜査状況を知ることが出来ることになるが、ライトが捜査に加わるよう要請したのはLであり、ライトの能力を捜査に生かしつつも、身近に置くことで彼の演技にほころびを見出せないかという2つの意図があったようだ。そして、顔を見る事で相手の名前を読み取れる第二のキラであるミサとライトが接触を図り、二人が共謀するようになったことでLは命の危険に晒されることになる。今回ライトの悪漢ぶりはここに極まれりという感じで、あくまで抜け目ない言動により、場合によっては自分が危険となる状況を上手く立ち回ることでLを追い詰めることに成功する。また、ヒロインであるミサの登場により多少華やかさが増した感もあり。

週間連載のほうもフォローしているので今作に収められた後の展開も一応知ってはいるが、実質的には次の5巻で一つの区切りになりそうだ。今後の展開次第だが、連載のほうは面白さが半減している。展開があまり速いというのも良し悪しというところだろうか・・・

Dr.コトー診療所 2004

2004年11月13日 TV
小さな島に赴任した医者の奮闘を描く医療ドラマ

南国の小島を舞台に、都会から来た医師、通称“コトー”と島民の交流を通して、家族愛や命の尊さ、人間の素朴な優しさを描き出す。沖縄・志木那島の三月。コトー(吉岡秀隆)が島にやってきて一年の時が流れた

このスペシャルは原作からいくつかのエピソードを抜き出し、それを編むことで物語に厚みを出している。しかし、今回の主軸になるエピソードはTV版のオリジナルである彩佳の母親が倒れるというものだ

昨今の福祉関係の話題をオリジナルストーリーとして加味し、健康な状態から障害を持ち周りの介護を必要とする状態までを丁寧に描き、家族の介護することのつらさもきちんと描くことで物語に重みが出ている。また、原が船を売り陸に上がる(原作では漁協が協力し売らずに済む)という展開にした事や、息子のたけひろが東京の中学を受験するために島を離れる(原作では地元に通う)という風に設定を変えていくことで人間ドラマの側面を補強し、その後の成長への伏線を張っている

因みに原作の漫画を書いている作者はこのTV版がお気に入りで、連続ドラマ当時自分のHPで後の展開をネタバレしたりしている。しかも、最近では微妙にドラマ化しやすいように話を構成している節がある。しかし、序盤の今回のエピソードであそこまで改変していると、かなり早い段階でドラマ版は別物になって行くだろうな

DEATH NOTE 3

2004年11月13日 漫画
漫画家、小畑健が描くサスペンス

見つめる者、見つめられる者。監視カメラを通してのLと月の静かなる戦いが繰り広げられる。その中で、月は自分の身の潔白を証明する策に成功するが、Lの月への疑いはますます増し、Lはある行動に出る!!

この巻では、Lの捜査が本格的に開始される。疑いを持ったライトの部屋に監視カメラをつけ、監視期間中に犯罪者を裁く行為が止めばライトへの嫌疑が深まるという意図だ。それをライトは察し、普通の高校生を完璧に演じつつも巧妙な方法で殺人を犯して行く。そこでLは次の捜査へ乗り出し、ライトと直接会うことで彼を見極めようとする。そして第二のキラ(ライトの世間での通称)が現れ事態は混迷を深めて行き・・・

この作品は全体的に非常に展開が速く、全くダレたところがない。緊張感が持続しているというか。特に、この巻から始まるLとライトの直接対決は、何気ない会話に隠された意図を読み取りお互いに演じあい攻めあう頭脳戦が繰り広げられる。その展開の速さを可能にしているのは、前述したとおり作者の表現力だろう。絵である程度の理解ができる為、モノローグの長さが緩和されているし、原作者の練り上げたストーリーの魅力を余すところ無く伝えているように思う

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