漫画家、羽海野チカが描く青春群像劇

6畳+台所3畳フロなしというアパートで貧乏ながら結構楽しい生活を送る美大生、森田、真山、竹本の3人。そんな彼らが、花本はぐみと出会い……!?

美大生の日常を中心に描く恋愛模様ありの群像劇。モラトリアムの楽しさを十二分に描き出し、そこから社会へ出て行く成長記としても読めるように配慮されている。大学生にありがちな話題は全て網羅し、美術大学という環境の良し悪しは森田とはぐみいうキャラで描いている

森田という荒唐無稽なキャラがスパイスとなり、2つの三角関係を中心に話しは転がる。それぞれの登場人物がそれぞれの恋愛感情を抱き動くことで恋の鞘当てがある。小さなコミュニティを作った際の仲間たちの大学生活の楽しさを描き、その閉じたコミュニティから観た世界が徐々に変貌していく様も描き出している

基本的に、優しさや慈しみの気持ちや恋愛感情を描くという少女漫画の王道ははずしていない。リアリティを度外視した展開や表現も多いが、キャラクターごとに役割を振り分けてあり、主軸となる竹本がステレオタイプな大学生を体現しているため物語はファンタジーの域には踏み込んでいない、と思う。全体的に少々洗練されリアリティのある感情表現が散見されるのもツボ

DEATH NOTE 6

2005年4月11日 漫画
漫画家、小畑健が描くサスペンス

キラがヨツバという企業の重役である事を突き止めたLと夜神月はさらに捜査を進める。一方ミサは死神と再び対面し独自にキラを見つけ出す。その情報を汲んだLは裏を取り、キラの逮捕へ動き出す


この巻では、夜神月やミサと入れ替わったキラを捜査していくことになる。Lはキラが夜神月やミサから新たな人間へ継承された事を推理しそれを踏まえて行動しており、月への疑いは全く捨てていない。キラであった頃の記憶の無い月はLの言動にイラつきながらも捜査に協力することで疑いを晴らそうとする。主だった登場人物が一丸となり犯人追求に当たるので、5巻から始まったオーソドックスなサスペンス路線は崩れていない。新たなキラを魅力的でなく感情移入できない人柄、いわゆる“悪役”に仕上げてあることで、物語を夜神月の主観から観ていた読者は、Lを含む警察が序盤からキラをどういう風に観ていたかを実感することができる

連載のほうはすでに1部として完結したが、今後も夜神月が主役になるようだ。次巻に期待
漫画家、ひぐちアサが描く野球漫画

「オレ……オレ……がんばってるって思う?」絶対に面白い高校野球漫画。オレらのエースは暗くて卑屈(ひくつ)。勝つために、弱気なエースのために。行け、オレら!読むとためになり、しかも血湧き肉躍り涙する。連載中から人気沸騰、本格高校野球漫画!

アフタヌーンという月刊誌で連載中の作品。高校野球を題材にしている。そういった作品に特有の野暮ったさや汗臭さや熱さは無く、さわやかで多少少女漫画的なノリもあるが、スリリングな試合の描写や野球理論と心理戦が魅力の中心になる

中高一貫教育の学園で中学時代野球部のエースを張っていた主人公・三橋は、理事長の孫という立場により、贔屓でそのポジションを与えられたと3年間責め続けられ自信を喪失、高校は心機一転を図り別の高校へ進む。高校の野球部で捕手をつとめる阿部は彼の制球力を見抜き、努力によってそのスキルを獲得したことを認め、叱咤激励しつつ三橋のサポートをする。監督の一存で練習試合が組まれるが相手は三星高校、三橋の母校だった。三橋のトラウマを払拭するため阿部は試合に勝つ事を望む

この作品は人の心の機微を上手く捉えていて、試合における心理戦の描写も巧みなら選手の精神的な面のケアについても突っ込んだ描写がある。そして、そこからカタルシスを得るように構成してある。そのインパクトはなかなかのもので、漫画一冊分から感じられる平均値を大きく越えていると思う。ようはシンパシーを感じる度合いがスゴイということだが。ただ、高校野球を題材にした漫画特有の泥臭さは全く無いので物足りないと思う方もいるかと・・・。かなりおすすめ

猫にかまけて

2005年4月9日 読書
町田康のエッセイ集

写真と文章で綴る、猫たちとの暮らし
どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女らはいつも洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた。<あとがきより>

作者が飼っている・・・もとい共同生活をしている/していた猫たちについてあれこれと語っている作品。4匹の猫が登場し、彼らと作者の微妙な関係を軽妙な語り口で表現している。エッセイという事で作者の語り口にはいつも通りユーモアが加味されており、猫を擬人化することで親しい友人との付き合いのような距離感があり、立場的に猫≧作者なエピソードが多い。しかし、単純に楽しい共同生活を描くだけでなく去っていく様もきっちりと描いている

ヘッケという猫の章はもともと弱っていた彼を拾い看病するというものなので、そういう側面を見せようとしているのだなとあらかじめ分かった上で読むことになる。その為一面的な印象を受けるのだが、ココアという猫については序盤のユーモラスなエピソードから登場しその世界観で人物造形をされていた為、彼女が去るエピソードは思った以上に胸を打つ。文章が日記風に綴られているのも効いている

全体的に観た場合、笑いと悲しみのバランスが上手く取れていて、この作家の作品としては稀な“愛情”をストレートに描いていることもあり、心温まる作品になっている。作者の自己劇化によるいつもの文体の調子が徐々に崩れ、素直な葛藤や慈しみの気持ちを吐露していく様は好感が持てた

THE CIRCLE

2005年4月7日 音楽
B’zの新譜

B’z が約1年半ぶりに待望のニューアルバムをリリース! タイトルは、それぞれのソロ活動を経てのバンドの再生=輪廻(Circle)から付けられたもの。バンド的アプローチで録音された本作は、余分な音をそぎ落とし生音にこだわった全13曲を収録、スピリチュアルな歌詞世界もあいまって聴きごたえ充分の1枚だ

各々のソロ活動を経て年明けにかなり唐突にリリースが告知された作品。ソロアルバムから月日の経っていない分、ダイレクトに活動の成果が反映されているように思える。ソロ活動期にB’z名義でリリースされたシングル「BANZAI」「ARIGATO」の2作は収録されておらず、リードシングルとしてリリースされた「愛のバクダン」のみ収録されている。その為「作品の売り上げが徐々に下がっているのに売りに来ていないのか。やる気無いのか」といらぬ心配をしてしまった。しかし、結果的にはそんな心配を吹き飛ばす快作になっていた

「愛のバクダン」のレビューをした際述べたが、歌詞に力強さが戻ってきている。前作までの歌詞にあった行き詰まり感や諦観、情けなさは払拭され、同じテーマを扱っていても、それを事実として受け止めた上での力強さを提示している。ただまぁ、歌詞を読む限り、結構ヤケクソ感も漂っているのだが・・・。整合性や体裁を取り繕っていない、思わず笑ってしまうフレーズが散見される。簡単に言えば、前作まであった現実へ着地しようとする姿勢を捨て、嘘でも良いから前向きに行こうという提案のような按配だ

しかし、今作は曲とアレンジが非常に良い。手触りとしては「RISKY」〜「IN THE LIFE」〜「RUN」期のような印象。その辺りの良質なフレーズやメロディを細かく分断して部分的に使っているように思えた。そして、哀感や情緒や安い感情表現を抜いてあるためハードでアップテンポな楽曲が多い割りに落ち着いた印象を与える。それは「Loose」期まで作品にあった質感だ。音圧は「Brotherhood」期まで戻りかなり高いが、その質感を壊さないよう配慮されている

総合的に観ると、本来のB’zの魅力に回帰した作品と思う。個人的には「やっと来た」という感触。かなり気に入った。「睡蓮」は松本の特徴の一つである中華風のメロディラインを使った「JOY」を髣髴とさせる佳曲

Tシャツ

2005年4月5日 趣味
暖かくなってきたのでTシャツを購入

沖縄の料理をモチーフにしたプリントT。そーみんちゃんぷるーやゴーヤーちゃんぷるー、沖縄そばなど・・・かっちりとした外着用のデザインもあったが、部屋着&近所をうろつく用途なので問題なし

詳しくは下記のサイトを参照されたし
http://www.habubox.com/

告白

2005年4月4日 読書
町田康の新作長編

人はなぜ人を殺すのか――河内音頭のスタンダードナンバーで実際に起きた大量殺人事件<河内十人斬り>をモチーフに、永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。殺人者の声なき声を聴け!

町田康が読売新聞に連載していた小説の書籍化。誌面ではいわゆる“打ち切り”のような形になり、結末を読みたければ本を買ってね!という商売のような体裁になってしまったようだ。因みに連載時は版画の押絵がありそれが相まって独特の世界観を構築していたようだが今回の書籍化にあたって押絵は省かれている

史実でもあり俗謡にもなっている「河内十人斬り」という事件を、作者独自の文体で構築している。主人公の城戸熊太朗を幼少時代から没するまで丁寧に描き、しかも彼の主観的な視点をかなり導入することで作者の作風に引き寄せている。この手法は、島田荘司が「龍臥亭事件」で津山三十人殺しを扱った際のものと似通っているが、島田荘司が事件の社会的な視点を意識するあまり史実に異様に忠実になってしまったのと違い、今作では主人公の魅力や人となりを描く延長線上に事件が位置するという風に描いてある。これは思うに作者のスタンスが軽く無頼が入っているためだと思われる

主人公が幼少から違和感を感じつつ処世を行い、徐々にずれていき社会不適応者になり、排他的なムラ社会の人間関係の中で鬱屈した思いを抱き、最終的に犯行に至り、その後逃亡生活を送るまでを描いている。しかし作品の雰囲気は明るく、主人公の日々の生活のそれなりの楽しさもきっちり描いてあるのでさくさくと読める。むしろ、最後の犯行部分は蛇足と思えるほどだ

作者は主人公の人物造形を非常に丁寧に行っており、彼が現実から落ちこぼれていく様を読者に納得できるように描いている。それも、社会的に抑圧されていたという画一的なものではなく、そこへ至るまでの心の機微に焦点をあて、落ちこぼれ世をすねた後の社会との適応まできちんと描いてあるため、この作者特有の主人公である弾かれ者という線も踏襲してあるのだ

しかし史実ということもあり、主人公を描く際どこか距離を置き敬意を表している部分も散見される。弾かれ者の悲痛さの表現が幾分マイルドなのは、大正だか明治だかの共同体意識の強い時代設定も関係しているのかもしれない

結局、この作品はアウトローの立場から観た社会と処世を中心に描いている。そこにはその立場なりの悲哀があるが、その立場の“メリット”もきちんと表現されている。溜飲が下がる部分もかなり意図的に描いてあるので、ある種アウトロー讃歌と呼べるかもしれない

Loveless

2005年4月3日 音楽
MY BLOODY VALENTINEの代表作

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは全キャリアを通して、ケヴィン・シールズが頭の中に思い描いた完璧なギターノイズを追い求めた。ピュアで暖かく、中性的でありながらどっぷりとセクシーな音の洪水を。本作には圧倒されるばかりだ。シールズとビリンダ・ブッチャーのギターとボーカルはひとつに溶けあい、おぼろげなオーケストラのように響く。リズムセクションは荘厳なリズムを刻みながら、ときおり(シングル曲「Soon」のように)ダンスビートを炸裂させ、ゆがみひずんだ生音を浮かび上がらせる。猛烈なまでに騒々しいが、攻撃的というより魅惑的な本作は、ひとつのトラックから次のトラックへと溶岩流のようによどみなく流れ、すべてを包みこんで至福の轟音(ごうおん)を鳴らし、恋人のからだの鼓動のように脈打っている

シューゲイザーというジャンルの先駆者となった作品と言われている今作。個人的にこのジャンルはRideから入ったので、さかのぼる形で聴いたのだが、ご多分に漏れずドリーミーな轟音のギターの壁とささやくように歌うヴォーカルによるある種メルヘンチックな世界観が構築されている

この作品はそういった幻想的な世界観の提示がメインとなり、作品単体で独立した流行に左右されない価値観を構築し訴えかけてくる。その世界はどこまでも優しく高揚感があり轟音のギターワークでエッジを立たせつつも癒しの要素が色濃い。日常に彩りを与えたりテンションを与えたりする作品ではないのだ。その為、この作品を聴いている間だけは箱庭的な居心地の良さを感じることになる

名盤だと何度もアナウンスされているので時期的に流行を逸している気もするが、やはり良い。懐かしさを感じます

Debut

2005年4月2日 音楽
Bjorkのデビューアルバム

シュガー・キューブスから世界へと羽ばたいたビョークの記念すべきソロ・デビュー・アルバム!(1993年リリース作品)ボーナス・トラックとして映画「ヤング・アメリカンズ」挿入歌「プレイ・デッド」収録!

作を重ねるごとにアーティスティックもしくはアートフォームに凝りすぎポピュラリティが無くなっていっているこのアーティストだが、今作はデビュー作ということもありジャケを観てもお分かりの通り等身大の魅力が表出している

最新作である「メダラ」を聴かずに言うが、よりスピリチュアルに、よりオーガニックに!という按配の昨今の方向性は、ポップスというカテゴリにおいて意義のある事をしているとは思うが、個人的には少々疲れる。流行り廃りには関係なくある一定のポジションを確立し固定客をつかんだというのは分かるんだが

今作はその点において、良い意味でユルさや甘さが残っていてポップなアルバムになっている。日常のBGMとして流せる許容範囲内というか。とはいっても完成度が低いわけでも大味なわけでも無く、真面目に取り組めばそれなりのリターンをくれる作品

なんくるない

2005年4月1日 読書
よしもとばななの短編集

沖縄を舞台にした短編を4編収めた作品。観光客の視点から描いた、と作者が言及している通り、作者自身の目に映った沖縄を4つの視点から魅力的に描き出している


この作家の定石どおり、人間関係の中にあるポジティブな視点と、そこから派生する活力をひたむきに享受することを中心に描き、主人公の精神的な高揚と回復が成される。その辺りは「ハゴロモ」と同じテーマだと言えるが、今回はその活力の元が沖縄という土地とそこに住む人々の持つ力という風に設定してあり、多少沖縄賛美の内容になっている

その場合、沖縄についてある程度描けていないと説得力が無いが、土地の魅力はともかくうちなーんちゅのメンタリティと人物造形は的確で、かなりリアリティがあるものになっていた。特に会話の文章は上手くニュアンスをつかんでいると思う。あくまでうちなーんちゅの“他所行きの顔”の描写ということだが

この作者は土地の魅力に依存した作品をいくつか書いているが、今回もこの作者の描く癒しの要素を、日常ではなく“観光地の沖縄”という非日常に依存したものに設定している。「ハゴロモ」にしても、別の土地へ移住して精神的に回復するというものだ。初期の作品にあった、なにげない日常に見出す暖かさや魅力では現在描きたい主人公の精神的なダメージはカバーしきれないということなのだろうか・・・

情緒的に乾いている方にはおすすめの作品

Unplugged in New York

2005年3月31日 音楽
Nirvanaのアンプラグドアルバム

本作は、カート・コバーンの不慮の死の前に録音されたニルヴァーナ最後のアルバムである。その怒りを抑え余分な音を削ぎ落としたアコースティック・サウンドは、多くの人に驚きを持って迎えられた。「おれは誓って拳銃を握らない、握らない」とコバーンが歯を食いしばって歌うときや、耳について離れない初期のナンバー「About a Girl」がその穏やかなギターにもかかわらず身を凍らせるとき、その微妙な陰影にリスナーは近年屈指のバンドであるニルヴァーナのまた新たな一面を発見することだろう。また、カヴァー曲も本作のハイライトであり、ミート・パペッツの3曲(スペシャル・ゲストにそのカレッジロックバンドのメンバーであるカートとクリス・カークウッド兄弟を迎えている)や、チェロが泣きむせぶヴァセリンズの「Jesus Doesn’t Want Me for a Sunbeam」や、デヴィッド・ボウイの「The Man Who Sold the World」が収録されている

MTVのプログラムである「アンプラグド」に出演した際のライヴ音源をまとめた作品。ニルヴァーナのパブリックイメージである轟音で畳み掛けるような演奏と悲痛なヴォーカルは影を潜め、弦やアコースティックギターを前面に押し出した演奏と、淡々とメロディをなぞるヴォーカルによる落ち着いた楽曲が並べられている。上記にあるようにカヴァーも多いが、作品として見た場合整合性がある選曲になっている

ニルヴァーナというバンドの音源として聴く方も多いとは思うが、この作品はそういった部分を越えて一つの作品として独立した魅力を持っていると思う。カート・コバーンの歌唱はあくまで淡々としたトーンを崩さず、しかしながら演奏の落ち着きも相まって声質の魅力が剥き出しになりリスナーに訴えかける。ニルヴァーナの音源にある本質的な部分を上手く抽出しているという印象だ

個人的には、このアルバムでニルヴァーナに入り、以後ベストアルバムがリリースされるまでこの作品のみを聴いていた。「All Apologies」は当時歌詞の秀逸さにやられ、カート・コバーンの周辺情報を知って納得した楽曲。名盤
大滝詠一のソロアルバム

ナイアガラレーベル設立30周年の記念盤シリーズ第1弾。オリジナルの楽曲+キャラメルママ、山下達郎率いるシュガーベイブが白熱のバック演奏をつとめるリズムトラック集など、全23曲収録予定。デジタルリマスタリングに加え、本人による解説付き

現役のアーティストでありながら20年以上も隠遁生活を送り、時折メディアに出ることで存在感を発揮しつつも過去に出した音源の評価は微塵も揺るがない、そんな大滝詠一のレーベル「ナイアガラ」創立30周年記念盤ということでリリースされた作品。1995年にも20周年記念盤が出たが、今回はそれにボーナストラックをさらにプラスし、リマスタリングで音質を向上させている

名盤でありオリジナルアルバムでもある「A Long Vacation」「Each Time」とは別の路線、俗に言う“ノベルティソング”路線の作品ということになるらしい。ノベルティという言葉の意味はイマイチよく分からないのだが・・・。2、3分前後の楽曲が26曲収められている。内容はポップで心地よく様々なアプローチの小品だ。予備知識なしで聴いても風化に耐えたポップさを再認識できるはず。ただ、このアーティストの場合、その“予備知識”が魅力の大部分を担っているという見方も多い。なにしろ、ブックレットで本人が楽曲の元ネタやインスパイアされた外国のアーティストを惜しげもなく紹介しているわけで。特にこの音源にはそういった良質な音楽の紹介を目的にしている部分も大きいようだ

しかし、今作の魅力は作品単体で完結しており、元ネタを知らずとも知識が無くとも良さはきちんと分かるようになっているのでご安心を・・・。因みに、参加ミュージシャンも豪華。細野晴臣、松任谷正隆、山下達郎などなど、現在では大御所になっている人々の若かりし日の姿が垣間見えます

B-2 Unit

2005年3月26日 音楽
坂本龍一のソロアルバム

YMOの傑作アルバム『BGM』と『テクノデリック』の発売の合間、80年9月に発表された坂本龍一3作目のソロ名義アルバム。先鋭的かつアバンギャルドな感性に貫かれ、騒音芸術的な趣きさえ感じられる傑作であり、テクノ系のアーティストから最も高い支持を集める作品だ。パンクニューウェーブ的な音色であるのに、まったく時代を感じさせない新鮮さがある。大村憲司とアンディ・パートリッジによるノイジーで音響的なギターにも注目

ダブ的な手法を取り入れた、高度に実験的で過激な問題作、1980年作品。YMO活動中に発売された、坂本龍一の過激な問題作、オリジナルは80年発売。POPMUSICのデニス・ポーヴェル、XTCのアンデイ・パートリッジ、大村憲司参加。ダブや、ミュージック・コラージュの手法を大胆に取り入れた、永遠の名作の1枚。本人及び、NYCスターリング・スタジオのテッド・ジャンセンによるデジタル・リマスタリング、新インタビユー掲載

長い間廃盤だったらしいが、今回の再発により復刻。評価の高い作品なので迷わず購入した

この作品はYMO活動期にリリースされたが、当時のYMOの方向性に抵抗感やギャップを感じていた坂本龍一が「これを作らせなければYMOを脱退する」と脅して製作されたものらしい。その為、YMOにあるユーモアや親密さを排した、攻撃的で世界観が作品自体で独立しているようなメジャー感の無い作品に仕上がっている。現在の彼の売りでもある寂寥感のある良質なメロディはこの作品には見当たらず、輪郭のはっきりとした音色と少々不安定な感情表現が成される。かなりエッジが立っているのである種の層には好まれるのではないかと

この作品はNYのヒップホップシーンに多大な影響を与えただとか、音楽性を全く無視した広告の打ち方によって何十万枚も売れたとか逸話はあれこれとあるようだ。坂本龍一のパブリックイメージを逸脱するとまでは行かないが、打ち出す世界観は現在においても置換可能なので一聴の価値あり
Aerosmithのベストアルバム

レーベルの壁を越えての選曲、そして、新曲もバッチリ入っているという、まさにタイトル通り、究極(アルティメット)の2枚組。1973年発表のデビュー作『Aerosmith/野獣誕生』から30年にも及ぶ彼らの歴史の重みを感じざるを得ないのはもちろん、このオッサンたち、なんでこんなに元気なの? と首を傾げたくなる位に現役感バリバリのうれしいベスト盤である。10代のロックに目覚めたキッズたちにはもちろん、昔ながらのファンにもぜひおすすめしたい

エアロスミスというバンドは21世紀に入る直前辺りに再評価の波がやってきて日本でもハードロックファンのみならず一般的に確固たる地位を確保したような覚えがある。そんなバンドのベストアルバムということで、それまではレンタルのみで済ましていたが購入。映画「ライトニング・イン・ア・ボトル」も公開されるようなので、改めて聴きなおしてみることにした

とりあえず、リマスタリングが施されているので音量・音圧共に一定なのが嬉しい。楽曲は基本的に時系列に並べられているが、もう王道とすらいえるスタイルをかなり早い段階で確立しているのには驚いた。さすがに初期は当時の風評通りストーンズのフォロワーっぽさが抜けていない。高音のシャウトとギターが奏でる泣きのメロディはもう伝統芸の風格すら漂わせている

個人的にはリアルタイムで聴いた作品という事で「Livin’ On The Edge」「Crazy」「Falling In Love」などのアルバム「Get A Grip」収録曲が好きだ。しかし、エアロスミスとメディアが完全に同調した時期にリリースされた映画「アルマゲドン」主題歌の「I Don’t Want To Miss A Thing」は当時やりすぎ感が漂っていてあまり好きになれなかったが、こうしてベストで聴くとかなりの佳曲。スティーヴン・タイラーの非常に求心力のあるエモーショナルな歌唱は流石としか言いようがない。個人的にはロックから少し距離をとっているのだがそれを踏まえても強い魅力を感じるわけで

Finally We Are No One

2005年3月22日 音楽
Mumのアルバム

ムームが住むのはうっとりするような世界だ。はるかなアイスランドの灯台を思わせるエレクトロニックな本作は、不思議で神秘的な子ども時代のおぼろげな記憶をよみがえらせてくれる。彼らはボーズ・オブ・カナダや同郷のビョークにもたとえられる。しかし、2000年の素晴らしいデビュー作『Yesterday Was Dramatic, Today Is OK』と同じく本作でもムームの作り出す音楽はあまりにもオリジナルすぎてジャンル分けしにくい。そのサウンドは、アナログのキーボードがハミングする側らで、ミュートしたデジタル音と「ぴったりの」楽器(アコーディオン、チェロ、メロディカ)がときどき顔をのぞかせる。アルバム全体の印象としてはモダンなフォーク・ミュージックのようだ。物静かで、ほとんど現実離れしているが、この4人組(うちふたりは、ベル&セバスチャンの『Fold Your Hands Child, You Walk Like a Peasant』のジャケットに登場する双子の姉妹)は決して上品な環境音楽を作り出しているわけではない。むしろ全11曲は生き生きとした夢をつづった日記の数ページを抜き出したかのような音楽である。なかでも叙情的な子守唄「The Land Between Solar Systems」で、ギーザとクリスティンの姉妹が独特のあどけない声で歌うときにはそう感じられる。本作を聴いたリスナーは、今ではすっかり忘れてしまった幼いころのおぼろげな思い出が懐かしくてたまらなくなるはずだ

最近あまり噂を聞かなくなったMumの代表作。ジャンルとしてはエレクトロニカということになるらしい。一聴しただけでは、あまりにも穏やかで静謐な作品世界の提示に戸惑うかもしれない。様々な音は散漫にならずに強固で寓話的な世界観を作り上げており、ゆるやかでありながら心に響く。とまぁ、シリアスな評価をどうしてもしてしまう作品ではある。女の子がささやくように歌う「Green Grass Of Tunnel」という楽曲の持つ求心力はかなりのもので、強い力で精神を安定させてくれる。作品を通して叙情性がとても強いので、一つの物語を読んでいるような感覚をくれるはず。アンビエントに寄った細野晴臣が自分のコンピレーションで参加を要請したのも頷けるというか。おすすめ

MEZZANINE

2005年3月21日 音楽
Massive Attackのアルバム

3D、ダディーG、マッシュルームからなるブリストルの雄、マッシヴ・アタックの『プロテクション』(1994)以来およそ4年ぶりとなるオリジナル・アルバム。前作までの流れをくみつつも、本作で際だつのは、快楽的とすら言える圧倒的なまでのダークネスと、その中で垣間見せる神々しいまでの美だ。冒頭から、体を震わせる太いベース・ラインの中、おなじみのホレス・アンディの温かい歌声が響く。では、コクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーが参加。マッシヴならではのダウン・テンポに乗せてせつなく美しいヴォーカルを披露する。本作では、ハードエッヂなギターサウンドを随所に採り入れているのも特徴。アルバムは、タイトル通り「奈落」をさまよい続け、3Dのラップとフレイザーの歌声がトラックとともに上昇していくでハイライトを迎える。彼らが、ダブやソウル、ヒップ・ホップといった従来の枠組みには収まらない、ネクスト・レベルに突入したことを実感させられる傑作

ミスチルがベストアルバムでジャケをパクッた作品(と言われている)。デッドな音色のリズムパターンに様々なゲストヴォーカルやメンバーのゆったりとした歌声が乗り、全編ダウン・テンポであることと隙間を重視したアレンジが相まって感情表現のレベルはダウナーな部分で固定されることになる。一聴すると「ダルイ」「重い」と感じるのだが、何度か聴くことで奥行きと力強いエモーションを見出すことができる。1曲目の「Angel」は映画「スナッチ」で使われたので聴いた事のある方も多いはず。そして3曲目の「Teardrop」は当時かなり色々な場面で耳にした覚えがあるので、これも有名だと思う。この曲は、この作品に流れる感情表現の幅を逸脱し、深いところからの穏やかな高揚感を感じさせてくれる佳曲だ

因みに、マッシヴ・アタックのメンバーは大昔に小室哲哉率いるTMネットワークの楽曲に参加している。「GORILLA」というアルバムの「Passenger」という楽曲で、そこでは今作の世界観とは全く違った能天気でハイテンションなラップを披露している。暇な方は聴いてみるのも吉

High Land, Hard Rain

2005年3月20日 音楽
Aztec Cameraの代表作

パンクムーヴメントの嵐が吹き荒れた後の荒涼とした音楽シーンにすい星のごとく登場した、スコットランド出身のギター・バンド、アズテック・カメラ。その傑作ファーストである。温かいメロディ、ロマンチックな歌詞、まっすぐでみずみずしいヴォーカル。ロディ・フレイムが作りだす楽曲は「ネオ・アコースティック」と呼ばれ、80年代はじめのUKシーンをさわやかに彩った。ティーンエイジ・ファンクラブを筆頭に、今なお受け継がれる「スコティッシュ・ポップ」の先駆者であり、またインディーズの草分け的レーベル「ラフ・トレード」で活動するなど、バンドのあり方自体も新鮮だった

聴きだして10年になるが、未だに新鮮さを失わない作品。日本のムーヴメントである“渋谷系”に影響を与えた作品という事で一部ではかなり有名らしい。一聴すればその影響はなんとなくではあるが感じ取れる。作り出されている世界観が共通していると言えば良いのだろうか。音色のキラつき感とスウィートな声、カタルシスやエモーションやグルーヴに重きを置いていない独特の華やかで寂寥感のある雰囲気などなど・・・。ただ、そういう文脈抜きでも名盤認定して良いほど佳曲揃いのアルバムになっている。「We Could Send Letters」はサビメロを聴けば「あぁこれか」と納得できる楽曲。「Pillar To Post」に至ってはイントロで思わず爆笑してしまうこと請け合い。おすすめ

NANA 12

2005年3月19日 漫画
漫画家、矢沢あいが描くバンド漫画

久しぶりに訪れた奈々との再会のチャンス。夏に中止になった花火大会を開催する日、ブラストのメンバーは707号室でその時を待っていた。しかし、奈々の心は揺れ…?


今作ではナナの結婚をクライマックスに据え、それを機にバンドがブレイクしていく様を描いている。相変わらずのモノローグによってハチの存在感は薄れず、社会的な立場の溝が深まることによる彼女の寂しさに焦点があたる。バンドとして転がる登場人物たちと離れてはくっついていく展開を見るにあくまでハチは“主役”ということらしい。そして彼女の感情に応えるバンドのメンバーたちはどこまでも人が良く優しい。内容的にも相変わらず人間関係の親密さしか描いていないので出来れば設定を生かした展開に持っていって欲しいところ

オムライス

2005年3月18日 食べ物
今日はこちらにトライ

レシピ:鶏胸肉は1cm角に切り、玉ねぎとピーマンも同じくらいの大きさに切る。フライパンにサラダ油を熱し、鶏肉、玉ねぎ、ピーマンの順に加えて炒め、ピーマンの色がさえたらご飯を加えて炒め合わせ、塩、こしょう、ケチャップで味つけする。卵は割りほぐし、塩とこしょうを加えて混ぜる。小型のフライパンを熱くしてサラダ油少々(分量外)をひき、卵液を流し入れる。菜箸で大きく混ぜ、半熟状になったら(2)を中央にのせ、フライ返しで卵を両側から返してご飯を包み、オムレツ形にまとめる

今回はあり合わせのもので作ることにした。厚切りハム、ミックスベジタブル、ケチャップ、塩コショウ、バジル、卵を使い上記のレシピに沿って作る。もちろん卵焼きはきれいにかぶせられないので、別のフライパンで焼いて上に乗せる。開き直って半熟の目玉焼きにして上に乗せる場合もある。黄身をぶちっと潰して混ぜるとなかなか美味しいのだ。それだとケチャップライスと目玉焼きってことになるが・・・。たまに食べたくなる味。上手く出来たためしがないけども・・・
ミステリ作家、島田荘司のシリーズモノ

聖夜、名探偵・御手洗潔(みたらいきよし)の推理が起こした、心優しい奇跡とは!?ロマノフ王朝のダイヤの靴に秘められた謎。「これは大事件ですよ」「占星術殺人事件」の直後、馬車道の仕事場を訪ねてきた老婦人に名探偵・御手洗潔は断言した。とある教会で開かれたバザーで、彼女の知人がとった奇妙な行動には、隠された意図があったのだという。ロシアのロマノフ王朝から明治政府に贈られた「セント・ニコラスのダイヤモンドの靴」をめぐって起きた事件を御手洗が解き明かす! クリスマスの夜、少女のために名探偵が起こす奇跡とは!?

“新”本格ミステリの大御所、島田荘司の創り出した魅力的なキャラクターである“御手洗潔(みたらいきよし)”シリーズ最新作。今作ではそのシリーズの代表作ともいえる「占星術殺人事件」から日の経っていない時期、つまり御手洗とワトソン役の石岡の名コンビが共に暮らしていた時代を舞台にしている。現在御手洗は外国へ行ってしまっていて、2005年という舞台設定の新作は望めなくなっているわけで・・・今作は人気作の時代を踏襲し作者の下心と読者へのサービス精神が同居した作品になっている

今作は書き下ろしの短編から幕を開ける。内容といえば作者お得意の知識のひけらかしで、表題になった「セント・ニコラスのダイヤモンドの靴」の社会的な背景を御手洗を含む外国人たちが討論しているというもの。そこで、その宝飾品にまつわるエピソードがあったのだよと御手洗が語りだすというシーンで作品は終わる。ようするに、本編の枕になっているわけだ。その後本編が始まるわけだが、懐古商法ここに極まれりという按配で、自己模倣が読者に望まれていることの一つだと充分に理解したうえでの内容になっている

御手洗と石岡が楽しく貧乏な共同生活を送っている部屋に老婦人が尋ねてくる。彼女の世間話から御手洗は事件の匂いをかぎつけ奔走することになる。テーマに掲げたセント・ニコラスのダイヤモンドの靴の絡ませ方も安易ならプロットも酷いもので、なんだか読んでいて悲しくなってくる。作風である薀蓄と物語の乖離っぷりも泣ける。子供と老人を使えば視聴率が稼げるというような話を聞いたことがあるが、それを見事に踏襲している。情けない

ただ、辛口になるのはこの作家の輝きを知っているからで、その輝きが現在発揮できていないことをこの作家自身も理解していてなおかつその時代を利用しようとしているからだ。しかし、そんなあざとさを突きつけられても、御手洗シリーズは嫌いになれない。このシリーズは単なるミステリではなく“力強い優しさ”や“救済”を提示するヒーローモノだからだ。アクの強い名探偵なんてミステリにおいては時代錯誤かもしれないが、この作家にはそれを求めてしまうし、それにある程度応えてくれていると思う。贔屓目かもしれないが・・・

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