漫画家、河下水希が描くラブコメ
古くは「きまぐれオレンジロード」あたりの、ジャンプ系ラブコメ。本当にボンクラな主人公に何故か寄ってくる魅力的な女の子がパンチラを見せたりキュートな振る舞いをするという・・・日本は本当に良い国だなぁと実感させられる作品
主人公・真中はふとしたことから地味な女の子と知り合いになる。それをきっかけに怒涛のように魅力的な女の子が次々と登場し真中の心はひたすら翻弄される。また、主人公の夢である映画制作というサイドストーリーが展開されており、その部分でかろうじて(読者側の)現実とつながりを持っているという按配だ
この作品において主人公は完全に読者の代弁者だ。言い換えれば、主人公の反応は「読者にこういう風に反応して欲しい」という作者側の思惑でもある。魅力的な女の子たちはもうなんというか「あぁ・・・そこまで直接的に行くのね」と泣き笑いたくなるほど主人公に言い寄る。奥ゆかしさは微塵も無い。DJのやまだひさしがこの作品を読んで「140ページ中100ページがパンチラです」と述べたがそれは本当で、それほどにこの作品は男子読者に媚びているということだ。学生生活で少々へこめば女の子がフォローしてくれるというなんとも素敵な世界観だ
結局のところ、作者は“女の子”が描きたいのだと思う。女の子が恋愛において相手の男にあれこれと見せる表情や魅力的なパフォーマンスを表現したいのだろう。その相手として主人公を設定しているだけで、そこに読者が感情移入しようがどうしようが知ったことではないはずだ。ただ、作品を読むとそれなりにリアリティのある表現で脇を固めてあり、それゆえに主人公周り人間関係の非現実的な趣が強調されている
ジャンプで断続的に読むたびに「そりゃねーよ」と突っ込むギャグ漫画という位置づけだったが、まとめて読むと居心地の良い世界観を提供しているとは思う。人気があるのも納得
放課後、校舎の屋上で出会ったいちごパンツの美少女。フツーの中学3年生・真中淳平は夕日に映えるその姿にすっかり心を奪われてしまった!! 彼女は誰? いきなり恋の迷路に突入のいちご模様学園ラブコメディ登場!!
古くは「きまぐれオレンジロード」あたりの、ジャンプ系ラブコメ。本当にボンクラな主人公に何故か寄ってくる魅力的な女の子がパンチラを見せたりキュートな振る舞いをするという・・・日本は本当に良い国だなぁと実感させられる作品
主人公・真中はふとしたことから地味な女の子と知り合いになる。それをきっかけに怒涛のように魅力的な女の子が次々と登場し真中の心はひたすら翻弄される。また、主人公の夢である映画制作というサイドストーリーが展開されており、その部分でかろうじて(読者側の)現実とつながりを持っているという按配だ
この作品において主人公は完全に読者の代弁者だ。言い換えれば、主人公の反応は「読者にこういう風に反応して欲しい」という作者側の思惑でもある。魅力的な女の子たちはもうなんというか「あぁ・・・そこまで直接的に行くのね」と泣き笑いたくなるほど主人公に言い寄る。奥ゆかしさは微塵も無い。DJのやまだひさしがこの作品を読んで「140ページ中100ページがパンチラです」と述べたがそれは本当で、それほどにこの作品は男子読者に媚びているということだ。学生生活で少々へこめば女の子がフォローしてくれるというなんとも素敵な世界観だ
結局のところ、作者は“女の子”が描きたいのだと思う。女の子が恋愛において相手の男にあれこれと見せる表情や魅力的なパフォーマンスを表現したいのだろう。その相手として主人公を設定しているだけで、そこに読者が感情移入しようがどうしようが知ったことではないはずだ。ただ、作品を読むとそれなりにリアリティのある表現で脇を固めてあり、それゆえに主人公周り人間関係の非現実的な趣が強調されている
ジャンプで断続的に読むたびに「そりゃねーよ」と突っ込むギャグ漫画という位置づけだったが、まとめて読むと居心地の良い世界観を提供しているとは思う。人気があるのも納得
漫画家、浦沢直樹が描く鉄腕アトム
浦沢直樹が手塚治虫の鉄腕アトムのエピソードの一つである「地上最大のロボット」をモチーフに描く長編サスペンス。「YAWARA!!」と「マスターキートン」、「Happy!!」と「MONSTER」のように毛色の違う2つの連載を同時にするのがこの作家のある種の型になっているが、今回もご多分に漏れず「20世紀少年」と同時連載になっている
以前起こった国際紛争を終結させた8体の世界最高の高性能ロボット。彼らは現在英雄として、あるいは隠遁してそれぞれの生活を送っているが、そんな彼らが1体ずつ何者かに破壊されていくという事件が起こる。その事件に関わり、国際紛争でも活躍した高性能ロボットであるゲジヒトは捜査を進めていく最中に8体の高性能ロボットの1人であるアトムと出会う。彼に危険を勧告しつつも彼の性能を信頼し捜査のデータを渡し協力を仰ぐが、そんな中新たな犠牲者が出てしまう・・・
この作品では捜査を進めるストーリーテラーともいうべきゲジヒトが記憶を書き換えられているのではという疑惑を含むさまざまな伏線が周到に張られていき、物語は先の読めないスリリングな展開を始める。ロボットたちのあまりにも“人間らしい”感情表現は、ロボットの進化というニュアンスを匂わせる。原作のようなロボット然とした表現はほとんど無く、どちらかといえば映画「ブレードランナー」の世界観だ
1巻の最後ではアトムが登場したが、この巻ではウランが登場し終わる。また、御茶ノ水博士などお馴染みの面子も登場する。その辺りのサービス精神は健在だ。3巻に期待
人間の痕跡がない殺人事件、残された謎のメッセージ…その先にあるものとは!? 漫画界の2大巨匠がタッグを組んだ、近未来SFサスペンス!!ついに第3の殺人事件が起こった!! 刑事ゲジヒトは、世界に数体しかいないロボットの仕業ではないかと調査を進めるが…。アトムの登場でさらに物語は進んでいく!!
浦沢直樹が手塚治虫の鉄腕アトムのエピソードの一つである「地上最大のロボット」をモチーフに描く長編サスペンス。「YAWARA!!」と「マスターキートン」、「Happy!!」と「MONSTER」のように毛色の違う2つの連載を同時にするのがこの作家のある種の型になっているが、今回もご多分に漏れず「20世紀少年」と同時連載になっている
以前起こった国際紛争を終結させた8体の世界最高の高性能ロボット。彼らは現在英雄として、あるいは隠遁してそれぞれの生活を送っているが、そんな彼らが1体ずつ何者かに破壊されていくという事件が起こる。その事件に関わり、国際紛争でも活躍した高性能ロボットであるゲジヒトは捜査を進めていく最中に8体の高性能ロボットの1人であるアトムと出会う。彼に危険を勧告しつつも彼の性能を信頼し捜査のデータを渡し協力を仰ぐが、そんな中新たな犠牲者が出てしまう・・・
この作品では捜査を進めるストーリーテラーともいうべきゲジヒトが記憶を書き換えられているのではという疑惑を含むさまざまな伏線が周到に張られていき、物語は先の読めないスリリングな展開を始める。ロボットたちのあまりにも“人間らしい”感情表現は、ロボットの進化というニュアンスを匂わせる。原作のようなロボット然とした表現はほとんど無く、どちらかといえば映画「ブレードランナー」の世界観だ
1巻の最後ではアトムが登場したが、この巻ではウランが登場し終わる。また、御茶ノ水博士などお馴染みの面子も登場する。その辺りのサービス精神は健在だ。3巻に期待
TBSで放送されたサスペンスドラマ
演出家・堤幸彦が現在でもある種の層に“期待”される原因となったドラマ。カメラワークや映像処理と音楽、シニカルな視点のギャグで独特の世界観を作り出し、当時の風潮だった厭世観と笑いの取り入れ方とバランスが絶妙な作品になっている。当時「踊る大捜査線」が評価を受けており、そのカウンターというスタンスで製作された
東大を卒業したばかりの新米刑事・柴田純(中谷美紀)が配属されてくるところから物語は始まる。本人は全く気づいていないが、ある程度の勤務実績を経てキャリアとしての波に乗る為の腰掛けという意味合いがあるため、ほとんど仕事の無い捜査一課二係に回されてしまう。ところがやる気の全く無い同僚を尻目に柴田は“ケイゾク”と呼ばれるいわゆる迷宮入りになった事件を次々と解き明かしていく・・・
物語は序盤から中盤まで一話完結になっている。事件を解決しようとあちこちをうろつく柴田の監視役として真山(渡部篤朗)が同行することになり、天然ボケの柴田とシニカルな真山の掛け合い漫才が魅力の一端を担う。しかし事件はどれも救いが無く、犯人たちとのやり取りは遣り切れない後味を残す。無邪気に迷宮入りになった事件を解くことで人を傷つける柴田と、人の心の機微に通じそれゆえに犯人へ憤りを爆発させる真山の所為で、普通の刑事ドラマの硬質さは保ちつつも青臭さがあり感情移入しやすくなっている
メインとなる事件とは別に、真山の過去というサイドストーリーが毎回少しずつ展開され、それが終盤の大きな展開に繋がっていく。そこで感じられる悪意はこの作品の色を決定付けている。物語としては荒唐無稽だが、序盤から中盤にかけての積み重ねがあるためそれほど現実から乖離した印象は受けない。むしろそのカタストロフィの心地よさを感じるほどだ
放送時はたいした視聴率ではなかったものの、レンタル等の回転率が異常に良かったようだ。現在のクドカンドラマのような「初めから視聴率は狙わずレンタル/セルで回収する」というドラマ作りの型を作り上げた作品ともいえる。たまに観返したくなる作品
1999年にTBS系列で放送され、人気故に2000年には劇場版まで公開されるに至った刑事ドラマの異色傑作。警視庁捜査一課二係配属となった新人・柴田純(中谷美紀)。二係の仕事は一係が迷宮入りと判断した数々の事件を名目上捜査継続するというもので、メンバーは基本的に閑職に甘んじている様子。だが、普段は社会常識を持たないダメ人間同然の柴田が、謎解きに関してのみは天才的な能力を発揮、次々と難事件を解明していく。ミステリマニアが嬉しくなるツボを心得たオーソドックスな謎解きミステリーとして始まりながら、シリーズ中盤からサイコスリラーへと方向性が変貌、堤幸彦ならではのテンポのいい演出や、細部に仕掛けられた細かいギャグとあいまって、魅力的かつ異様な印象を残す
演出家・堤幸彦が現在でもある種の層に“期待”される原因となったドラマ。カメラワークや映像処理と音楽、シニカルな視点のギャグで独特の世界観を作り出し、当時の風潮だった厭世観と笑いの取り入れ方とバランスが絶妙な作品になっている。当時「踊る大捜査線」が評価を受けており、そのカウンターというスタンスで製作された
東大を卒業したばかりの新米刑事・柴田純(中谷美紀)が配属されてくるところから物語は始まる。本人は全く気づいていないが、ある程度の勤務実績を経てキャリアとしての波に乗る為の腰掛けという意味合いがあるため、ほとんど仕事の無い捜査一課二係に回されてしまう。ところがやる気の全く無い同僚を尻目に柴田は“ケイゾク”と呼ばれるいわゆる迷宮入りになった事件を次々と解き明かしていく・・・
物語は序盤から中盤まで一話完結になっている。事件を解決しようとあちこちをうろつく柴田の監視役として真山(渡部篤朗)が同行することになり、天然ボケの柴田とシニカルな真山の掛け合い漫才が魅力の一端を担う。しかし事件はどれも救いが無く、犯人たちとのやり取りは遣り切れない後味を残す。無邪気に迷宮入りになった事件を解くことで人を傷つける柴田と、人の心の機微に通じそれゆえに犯人へ憤りを爆発させる真山の所為で、普通の刑事ドラマの硬質さは保ちつつも青臭さがあり感情移入しやすくなっている
メインとなる事件とは別に、真山の過去というサイドストーリーが毎回少しずつ展開され、それが終盤の大きな展開に繋がっていく。そこで感じられる悪意はこの作品の色を決定付けている。物語としては荒唐無稽だが、序盤から中盤にかけての積み重ねがあるためそれほど現実から乖離した印象は受けない。むしろそのカタストロフィの心地よさを感じるほどだ
放送時はたいした視聴率ではなかったものの、レンタル等の回転率が異常に良かったようだ。現在のクドカンドラマのような「初めから視聴率は狙わずレンタル/セルで回収する」というドラマ作りの型を作り上げた作品ともいえる。たまに観返したくなる作品
作家、村上龍の長編
上巻のレビューをまずは参照されたし
下巻では、上巻で登場した日本政府の官僚数名や新聞記者は背景をかなり掘り下げてキャラも上手く立たせてあった割りに全く登場しない。その代わりに医療施設で勤務する医師や占領軍と直接的に関わる仕事を請け負った市役所職員などを同じように掘り下げ描写する。キャラクターを立てそれに依存し話を転がすという手法はこの作品のテーマ上難しかったのかもしれない。結果的にはより多面的に“支配”の内実を知ることができるようになっている。それを少年たちの描写の合間に挟み終盤の直前まで語ることによって、福岡が占領されたことに人々が反発しあるいは受け入れつつも彼らが持つ今後への不安を生活レベルから浮き彫りにし、それゆえにクライマックスのカタルシスが増すという効果を生んでいる
この作品は主に上巻で軽く描いた社会不適応者の少年たちを中心に描かれる。彼らが北朝鮮の占領軍を“敵”と認識し、自らの破戒衝動をぶつける相手として選び実際に行動を起こしていく様を、北朝鮮側や福岡市民の視点を挟みつつ断続的に描く。そこには福岡を救うというようなヒロイックな感情は微塵も無く、仲間たちで一つのイベントを成就させるというような興奮とカタルシスを求めるが故の行動というわけでもない。感情が未発達でコミュニケーション不全の少年たちが黙々とテロを行動に移していく様が何の理由付けも無く描かれるのみだ。その代わり、彼らが不幸な出自を持ち生き延びる為の攻撃性を身につけつつも社会から弾かれていたという部分は執拗にプッシュされる。その為、読み終えてみると「国家の危機を社会的弱者の若者が救う」という、若い読者にとっては溜飲が下がりっぱなしのフェアリーテイルになってしまっている
物語はクライマックスの緊迫感を徐々に解きほぐす穏やかなエピローグをつけることでさわやかな読後感になっている。文章のリズムに慣れるのに時間がかかったが、読み応えのあるなかなか良い作品でした
幻冬舎創立11周年記念特別書き下ろし作品、1650枚。さらなるテロの危険に日本政府は福岡を封鎖する。逮捕、拷問、粛清、白昼の銃撃戦、被占領者の苦悩と危険な恋。北朝鮮の後続部隊12万人が博多港に接近するなか、ある若者たちが決死の抵抗を開始した。現実を凌駕する想像力と、精密な描写で迫る聖戦のすべて
上巻のレビューをまずは参照されたし
下巻では、上巻で登場した日本政府の官僚数名や新聞記者は背景をかなり掘り下げてキャラも上手く立たせてあった割りに全く登場しない。その代わりに医療施設で勤務する医師や占領軍と直接的に関わる仕事を請け負った市役所職員などを同じように掘り下げ描写する。キャラクターを立てそれに依存し話を転がすという手法はこの作品のテーマ上難しかったのかもしれない。結果的にはより多面的に“支配”の内実を知ることができるようになっている。それを少年たちの描写の合間に挟み終盤の直前まで語ることによって、福岡が占領されたことに人々が反発しあるいは受け入れつつも彼らが持つ今後への不安を生活レベルから浮き彫りにし、それゆえにクライマックスのカタルシスが増すという効果を生んでいる
この作品は主に上巻で軽く描いた社会不適応者の少年たちを中心に描かれる。彼らが北朝鮮の占領軍を“敵”と認識し、自らの破戒衝動をぶつける相手として選び実際に行動を起こしていく様を、北朝鮮側や福岡市民の視点を挟みつつ断続的に描く。そこには福岡を救うというようなヒロイックな感情は微塵も無く、仲間たちで一つのイベントを成就させるというような興奮とカタルシスを求めるが故の行動というわけでもない。感情が未発達でコミュニケーション不全の少年たちが黙々とテロを行動に移していく様が何の理由付けも無く描かれるのみだ。その代わり、彼らが不幸な出自を持ち生き延びる為の攻撃性を身につけつつも社会から弾かれていたという部分は執拗にプッシュされる。その為、読み終えてみると「国家の危機を社会的弱者の若者が救う」という、若い読者にとっては溜飲が下がりっぱなしのフェアリーテイルになってしまっている
物語はクライマックスの緊迫感を徐々に解きほぐす穏やかなエピローグをつけることでさわやかな読後感になっている。文章のリズムに慣れるのに時間がかかったが、読み応えのあるなかなか良い作品でした
作家、村上龍の長編
村上龍の作品における一つの系譜である、現実を踏まえつつパラレルな日本を舞台にしたアクションやら政治ドラマやらを盛り込んだ大作。「愛と幻想のファシズム」や「五分後の世界」、「コインロッカーベイビーズ」のような、硬質でエネルギーの満ち溢れた作品になっている
時は2011年、6年後の世界は情勢がかなり変質し、日本は経済的に崩壊しており、それに対して北朝鮮は中国とアメリカの援助によって現在とは違った世界的地位を得ている。北朝鮮で日本の福岡を占拠し一つの国として日本から独立させるという計画が立てられ実行に移されることになる。それが紆余曲折あり結果的に成就し、日本政府は福岡を含む九州を日本から切り捨ててしまう
序盤は日本が現在からどういう風に変わったか、という部分を描写している。経済的な崩壊が個人レベルでの生活にどう影響したかだとか、異様に増えたホームレス達の生活を描く。そのホームレス達の中に居る少年はふとしたきっかけで福岡の施設へ行くことになり、社会不適合者の少年たちが集う施設の内実が描かれる。この少年にまつわる文章は章を割かれて描かれるので、後半へ繋がると思われる。また、日本政府の官僚や新聞記者など多角的な視点から福岡が制圧されていく様が語られて行き、中盤から終盤にかけては北朝鮮の兵士の視点で福岡の“支配”が描かれる
この作者特有の精緻な描写は健在で、背景や舞台をかなりリサーチしたことをうかがわせる。登場人物の言動の細やかなニュアンスも描きクリアなビジョンを提示するので、読者が想像力を働かせたりミスリードする事を許さない。内容に見合った緊張感を保つ為の努力を様々な形でしているため、正直読んでいて疲れてしまう
上巻では福岡を徐々に支配していく様が描かれる。北朝鮮の人物たちをストイックで素朴かつ民度の高い国民性に描いていることで、この作者お得意の、日本人の“のどかな”メンタリティに対する批判めいた意見をさりげなく訴えてくる。しかし北朝鮮の人物たちの国民性が日本に比べて経済的に貧困であることから来るという描き方もしており、この辺りは年配受けを狙った感がありあまり好きになれなかった
基本的に、様々な登場人物の社会的立場や経歴やそこからくる独自の価値観を細かく描き出し、その対比によって日本の問題を有形無形に提示しつつ面白さを構成するという風に見える。起こった事件が拡げる社会的経済的波紋も描くが、それは枝葉のように思う。下巻に期待
幻冬舎創立11周年記念特別書き下ろし作品、1650枚。北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。財政破綻し、国際的孤立を深める近未来の日本に起こった奇蹟
村上龍の作品における一つの系譜である、現実を踏まえつつパラレルな日本を舞台にしたアクションやら政治ドラマやらを盛り込んだ大作。「愛と幻想のファシズム」や「五分後の世界」、「コインロッカーベイビーズ」のような、硬質でエネルギーの満ち溢れた作品になっている
時は2011年、6年後の世界は情勢がかなり変質し、日本は経済的に崩壊しており、それに対して北朝鮮は中国とアメリカの援助によって現在とは違った世界的地位を得ている。北朝鮮で日本の福岡を占拠し一つの国として日本から独立させるという計画が立てられ実行に移されることになる。それが紆余曲折あり結果的に成就し、日本政府は福岡を含む九州を日本から切り捨ててしまう
序盤は日本が現在からどういう風に変わったか、という部分を描写している。経済的な崩壊が個人レベルでの生活にどう影響したかだとか、異様に増えたホームレス達の生活を描く。そのホームレス達の中に居る少年はふとしたきっかけで福岡の施設へ行くことになり、社会不適合者の少年たちが集う施設の内実が描かれる。この少年にまつわる文章は章を割かれて描かれるので、後半へ繋がると思われる。また、日本政府の官僚や新聞記者など多角的な視点から福岡が制圧されていく様が語られて行き、中盤から終盤にかけては北朝鮮の兵士の視点で福岡の“支配”が描かれる
この作者特有の精緻な描写は健在で、背景や舞台をかなりリサーチしたことをうかがわせる。登場人物の言動の細やかなニュアンスも描きクリアなビジョンを提示するので、読者が想像力を働かせたりミスリードする事を許さない。内容に見合った緊張感を保つ為の努力を様々な形でしているため、正直読んでいて疲れてしまう
上巻では福岡を徐々に支配していく様が描かれる。北朝鮮の人物たちをストイックで素朴かつ民度の高い国民性に描いていることで、この作者お得意の、日本人の“のどかな”メンタリティに対する批判めいた意見をさりげなく訴えてくる。しかし北朝鮮の人物たちの国民性が日本に比べて経済的に貧困であることから来るという描き方もしており、この辺りは年配受けを狙った感がありあまり好きになれなかった
基本的に、様々な登場人物の社会的立場や経歴やそこからくる独自の価値観を細かく描き出し、その対比によって日本の問題を有形無形に提示しつつ面白さを構成するという風に見える。起こった事件が拡げる社会的経済的波紋も描くが、それは枝葉のように思う。下巻に期待
ミステリ作家、法月綸太郎の長編
作者と同名の探偵が活躍するシリーズモノ最新作。この作家の特徴であるロジカルな描写もさることながら、構成も非常に練り上げられている。単行本として編む際かなりの加筆修正を行ったらしい
主人公・法月綸太郎は写真家の個展へ行った際、魅力的な女性・江知佳と偶然知り合う。彼女の父親である彫刻家が亡くなり、遺作であり彼女の娘である江知佳をモデルにした彫刻から頭部が切り離され紛失する。その謎を解く為に綸太郎は奔走するが、彫刻の代わりにモデルとなった江知佳自身の生首が発見される
この作品は、推理を何度もはずしつつ犯人を追う人間味溢れる探偵という描写やら大きな謎を解く楽しみを提示する部分やら・・・ようするに、まっとうで正攻法かつ王道の作品に仕上がっている。ある種古典と言っても良いかも知れない
物語は中盤を過ぎても殺人が起こらない。ようは背景と人物描写を丁寧にやっており、伏線をきちんと張り巡らせているわけだが、そのおかげで人物に対する感情移入も十二分にすることができ、それが後半の展開で非常に効いてくる。後半にはどんでん返しをいくつか用意してあり、急激に物語に引き込まれていく気分になり、終盤の謎解きでは読んできた労力に見合ったカタルシスを与えてくれる。しかし読後感はあまり良くない。“ミステリ”としても“小説”としても出来が良いが、そういったスキルの部分ではなく感情的な部分でダークになってしまう。まぁタイトルで作品内容をある程度予告しているわけだからそれもしょうがないが・・・
尻上がりに面白くなっていく作品なので、序盤で挫折しなければそれなりの面白さを保障してくれる。少々古臭いと感じるかもしれないが、ミステリの“型”ということで片付けられる範囲内なので問題ないはず。ただ、個人的に好き嫌いで言えばあまり好きではない作品
彫刻から消えた首とそこから派生し起こる殺人。作者と同名の主人公でありミステリ作家の法月綸太郎が挑む謎。寡作の作者が数年ぶりに発表したこの作品は、「このミステリーが凄い!」2005年度版で一位を獲得。重厚なミステリの構築手腕が光る
作者と同名の探偵が活躍するシリーズモノ最新作。この作家の特徴であるロジカルな描写もさることながら、構成も非常に練り上げられている。単行本として編む際かなりの加筆修正を行ったらしい
主人公・法月綸太郎は写真家の個展へ行った際、魅力的な女性・江知佳と偶然知り合う。彼女の父親である彫刻家が亡くなり、遺作であり彼女の娘である江知佳をモデルにした彫刻から頭部が切り離され紛失する。その謎を解く為に綸太郎は奔走するが、彫刻の代わりにモデルとなった江知佳自身の生首が発見される
この作品は、推理を何度もはずしつつ犯人を追う人間味溢れる探偵という描写やら大きな謎を解く楽しみを提示する部分やら・・・ようするに、まっとうで正攻法かつ王道の作品に仕上がっている。ある種古典と言っても良いかも知れない
物語は中盤を過ぎても殺人が起こらない。ようは背景と人物描写を丁寧にやっており、伏線をきちんと張り巡らせているわけだが、そのおかげで人物に対する感情移入も十二分にすることができ、それが後半の展開で非常に効いてくる。後半にはどんでん返しをいくつか用意してあり、急激に物語に引き込まれていく気分になり、終盤の謎解きでは読んできた労力に見合ったカタルシスを与えてくれる。しかし読後感はあまり良くない。“ミステリ”としても“小説”としても出来が良いが、そういったスキルの部分ではなく感情的な部分でダークになってしまう。まぁタイトルで作品内容をある程度予告しているわけだからそれもしょうがないが・・・
尻上がりに面白くなっていく作品なので、序盤で挫折しなければそれなりの面白さを保障してくれる。少々古臭いと感じるかもしれないが、ミステリの“型”ということで片付けられる範囲内なので問題ないはず。ただ、個人的に好き嫌いで言えばあまり好きではない作品
BAND OF THE NIGHT
2005年5月2日 読書
作家、中島らもの長編
作者の実体験をベースにした作品。エッセイ等で語っていた酩酊時代の集大成ということらしい。エッセイで語らなかったことも含め一つの物語にしてあるが、この作家のエッセイや作品をある程度フォローしている方は焼き直し感を強く感じるかもしれない
基本的に、ジャンキーの溜まり場として家を開放していた主人公が集まってくるジャンキー達と交流し遊びまわるという内容になっている。話がある程度進み酩酊の描写になると、急にストーリーとは無関係な膨大な言葉の羅列が登場し、何の説明も無いまま次の章へ話は転がってしまう。おそらく酩酊の描写と当時の心理状態を正確に伝えようという意図と、単なる交遊録では物語が弱いと感じたゆえの手法だとは思うが、はっきりいって冗長なので読み飛ばしてしまった。ジャンキーたちが様々な形で家を去っていき、普通の家庭に戻るところで物語は終わる
全体的に間延びしており小さなエピソードがまばらに散らされているような印象を受ける。共通しているのは現実の知人をモデルにした何人かの登場人物だが、キャラクターを掘り下げていないので特に魅力的だと感じない。ドラッグとセックスでモラルハザードに陥った家の中で主人公はぼんやりと危機感を感じつつ遊びほうけているが、一緒に騒いでいるジャンキーたちが愛すべきダメ人間という描き方ですらないのは如何なものか。序盤の社会人としての生活描写のほうが読み物としては面白かった。ノンフィクションのエッセイとしてなら作者の人柄に還元されるのでそれなりに面白いのだが、虚構の小説という形をとっているのならもっと物語としてメリハリをつけたほうが良かったように思う。結局、小さな子供を2人抱えつつ酩酊していた作者自身のために書かれた作品といった印象
しかし、解説の町田康の文章のほうが面白いというのはちょっとアレなんじゃなかろうか。彼の文章で我に返るというか、安心してしまうのだが
「悪夢を見るなら今のうちだよ」と誰かがおれの耳元でささやいた―。「悪魔の館」と呼ばれる家に入り浸るジャンキーたち。アルコールをはじめ、睡眠薬、咳止めシロップなどの中毒者たちが引きおこす悲喜劇を濃密に描いた衝撃作。そして、今夜も言葉のイメージが怒涛のように、混濁した脳裡に押し寄せてくる
作者の実体験をベースにした作品。エッセイ等で語っていた酩酊時代の集大成ということらしい。エッセイで語らなかったことも含め一つの物語にしてあるが、この作家のエッセイや作品をある程度フォローしている方は焼き直し感を強く感じるかもしれない
基本的に、ジャンキーの溜まり場として家を開放していた主人公が集まってくるジャンキー達と交流し遊びまわるという内容になっている。話がある程度進み酩酊の描写になると、急にストーリーとは無関係な膨大な言葉の羅列が登場し、何の説明も無いまま次の章へ話は転がってしまう。おそらく酩酊の描写と当時の心理状態を正確に伝えようという意図と、単なる交遊録では物語が弱いと感じたゆえの手法だとは思うが、はっきりいって冗長なので読み飛ばしてしまった。ジャンキーたちが様々な形で家を去っていき、普通の家庭に戻るところで物語は終わる
全体的に間延びしており小さなエピソードがまばらに散らされているような印象を受ける。共通しているのは現実の知人をモデルにした何人かの登場人物だが、キャラクターを掘り下げていないので特に魅力的だと感じない。ドラッグとセックスでモラルハザードに陥った家の中で主人公はぼんやりと危機感を感じつつ遊びほうけているが、一緒に騒いでいるジャンキーたちが愛すべきダメ人間という描き方ですらないのは如何なものか。序盤の社会人としての生活描写のほうが読み物としては面白かった。ノンフィクションのエッセイとしてなら作者の人柄に還元されるのでそれなりに面白いのだが、虚構の小説という形をとっているのならもっと物語としてメリハリをつけたほうが良かったように思う。結局、小さな子供を2人抱えつつ酩酊していた作者自身のために書かれた作品といった印象
しかし、解説の町田康の文章のほうが面白いというのはちょっとアレなんじゃなかろうか。彼の文章で我に返るというか、安心してしまうのだが
Best Selection
2005年5月1日 音楽
KATSUMIのベストアルバム
90年代に活躍したJ-POPアーティストKatsumiのベストアルバム。伸びやかなハイトーンボイスとポップな楽曲で一世を風靡した。この作品はベストアルバムということだが、正直選曲は今一つといった印象。もしも購入するのなら、こちらに入っている代表曲が全て収録され、ベストアルバム未収録ながら佳曲である「Find your way」「Crossing Love」が収録されているアルバム「LINKAGE」をお勧めする。なら何故この作品をピックアップしたかというと、この作品に収録されている(個人的に思い出深い名曲である)「Just time girl」が新録されているからだ。オケを作り直し、「LINKAGE」ではチープなブラスでアレンジされていた楽曲を厚みのあるシンセに置き換えてあり、音の配置も現代風にアレンジしてある。その為、ともすれば薄っぺらで80年代風味だったあの楽曲が現在聴いても素晴らしいと思えるポップスになっているのだ。とはいってもRemixではなく原曲どおりのアレンジで、とくにいじらずとも聴けるようになっているのはメロディと歌声がしっかりしているからこそだと思う。まぁ個人的な思い入れが大きいので、聴いてみたい方は「LINKAGE」を手に取ってみてください。「Yes,抱きしめて」も現在でも十二分に通用する強力なポップスなので、この2曲を聴くだけでも価値はあります
<収録曲>
ONE(We are ONE)
The Force(Energy Mix)
Rose is a Rose
YES,抱きしめて
僕達のコレクション
Just time girl
君と出会えたこの場所
FREEDOM
For You
笑顔がいいね
BREAK OUT~輝ける日々へ~
明日に架ける夢
POWER(Balance of Power)
ICE on FIRE
危険な女神
デビュー10周年を迎えての初ベスト・アルバムには、「危険な女神」をはじめ、懐かしい名曲が揃っている。90年代のJポップ・シーンを沸かせた個性的なハイトーン・ヴォイスはいまなお健在
90年代に活躍したJ-POPアーティストKatsumiのベストアルバム。伸びやかなハイトーンボイスとポップな楽曲で一世を風靡した。この作品はベストアルバムということだが、正直選曲は今一つといった印象。もしも購入するのなら、こちらに入っている代表曲が全て収録され、ベストアルバム未収録ながら佳曲である「Find your way」「Crossing Love」が収録されているアルバム「LINKAGE」をお勧めする。なら何故この作品をピックアップしたかというと、この作品に収録されている(個人的に思い出深い名曲である)「Just time girl」が新録されているからだ。オケを作り直し、「LINKAGE」ではチープなブラスでアレンジされていた楽曲を厚みのあるシンセに置き換えてあり、音の配置も現代風にアレンジしてある。その為、ともすれば薄っぺらで80年代風味だったあの楽曲が現在聴いても素晴らしいと思えるポップスになっているのだ。とはいってもRemixではなく原曲どおりのアレンジで、とくにいじらずとも聴けるようになっているのはメロディと歌声がしっかりしているからこそだと思う。まぁ個人的な思い入れが大きいので、聴いてみたい方は「LINKAGE」を手に取ってみてください。「Yes,抱きしめて」も現在でも十二分に通用する強力なポップスなので、この2曲を聴くだけでも価値はあります
<収録曲>
ONE(We are ONE)
The Force(Energy Mix)
Rose is a Rose
YES,抱きしめて
僕達のコレクション
Just time girl
君と出会えたこの場所
FREEDOM
For You
笑顔がいいね
BREAK OUT~輝ける日々へ~
明日に架ける夢
POWER(Balance of Power)
ICE on FIRE
危険な女神
SURVIVE STYLE 5+
2005年4月30日 映画
浅野忠信主演作品
浅野忠信のモノローグで始まるこの作品は、5つの物語が並行し進む。1つめは浅野忠信が暴力を振るう妻を殺害するも家に帰ると妻が生き返っており襲い掛かってくるという少々シュールなもので、2つめはCMプランナーをしている小泉今日子の日常、3つめはロンドンの殺し屋と通訳の荒川良々の物語、4つめは催眠術にかけられ自分を鳥だと思い込んでしまった岸部一徳とその家族の物語、5つめはチンピラ3人組の物語。所々で登場人物が交錯し、物語全体に殺し屋と荒川良々が絡んでいく形をとる。
浅野忠信の物語は何度も生き返る妻を殺しては埋めを繰り返すだけだが、(日本にしては広い)家の中だけで起こる物語で、衣装やインテリアのポップなデザインの効果もあり淡々としたテンドンといった按配で独特の味があり、あまりにも何度も繰り返されるのでだんだん笑えてくる。ロンドンの殺し屋役をしているのはスナッチでも殺し屋をしていた俳優で、こわもてな彼と荒川良々の対比が面白い。小泉今日子の物語は話が地味な所為か、彼女が思いついたCMを再現するシーンを挿入したり、阿部寛や千葉真一が登場するなど工夫を凝らしている。岸部一徳の話はどこか物悲しく・・・まぁひたすら鳩の真似をしている岸部一徳を見て「岸部さん・・・」と悲しくなってしまうわけだが、おかしくなった夫と暮らす家族の切なさを淡々と描いている。チンピラ3人組の話は簡単に言ってしまうとコントだ。チンピラの1人はホモで、つるんでいる仲間の1人に惚れていて、何かあるたびに思わせぶりな態度をとり見つめあう。そのバックに流れるのは石野卓球岡村靖幸の「Come baby」だ。こいつらは出てくるたびにこのコントを繰り返すだけで、しょうもないが少々笑える。因みにこの作品は全体的に衣装やセットのデザインが過剰でダサいのかなんなのかよく分からないがとりあえず映画を独自の雰囲気にするのには一役買っている
とりあえず、阿部寛と小泉今日子はサブカル演技はしないほうが良いと思う。彼らは少々ユルいドラマのほうが映えると思うので。というか、この作品は浅野忠信が美味しいところは全て持っていっているのでトータルで観た場合彼らもスパイスとして効いているのかもしれない。基本的に様々な視点を次々に切り替えることで飽きさせず魅せてくれるのでそれなりに面白い。ただ、最後のシーンは個人的に如何なものかと思った。「岸部さん・・・」と遠い目をしてしまうこと請け合い
CM界のトップクリエイター・多田琢と関口現が手掛けた斬新なスタイリッシュコメディ。錚々たる俳優陣が個性的なキャラクターに扮した5つの物語が展開。それは後に交錯し、事態は急展開を見せる。出演は浅野忠信、橋本麗香、小泉今日子、阿部寛ほか
浅野忠信のモノローグで始まるこの作品は、5つの物語が並行し進む。1つめは浅野忠信が暴力を振るう妻を殺害するも家に帰ると妻が生き返っており襲い掛かってくるという少々シュールなもので、2つめはCMプランナーをしている小泉今日子の日常、3つめはロンドンの殺し屋と通訳の荒川良々の物語、4つめは催眠術にかけられ自分を鳥だと思い込んでしまった岸部一徳とその家族の物語、5つめはチンピラ3人組の物語。所々で登場人物が交錯し、物語全体に殺し屋と荒川良々が絡んでいく形をとる。
浅野忠信の物語は何度も生き返る妻を殺しては埋めを繰り返すだけだが、(日本にしては広い)家の中だけで起こる物語で、衣装やインテリアのポップなデザインの効果もあり淡々としたテンドンといった按配で独特の味があり、あまりにも何度も繰り返されるのでだんだん笑えてくる。ロンドンの殺し屋役をしているのはスナッチでも殺し屋をしていた俳優で、こわもてな彼と荒川良々の対比が面白い。小泉今日子の物語は話が地味な所為か、彼女が思いついたCMを再現するシーンを挿入したり、阿部寛や千葉真一が登場するなど工夫を凝らしている。岸部一徳の話はどこか物悲しく・・・まぁひたすら鳩の真似をしている岸部一徳を見て「岸部さん・・・」と悲しくなってしまうわけだが、おかしくなった夫と暮らす家族の切なさを淡々と描いている。チンピラ3人組の話は簡単に言ってしまうとコントだ。チンピラの1人はホモで、つるんでいる仲間の1人に惚れていて、何かあるたびに思わせぶりな態度をとり見つめあう。そのバックに流れるのは石野卓球岡村靖幸の「Come baby」だ。こいつらは出てくるたびにこのコントを繰り返すだけで、しょうもないが少々笑える。因みにこの作品は全体的に衣装やセットのデザインが過剰でダサいのかなんなのかよく分からないがとりあえず映画を独自の雰囲気にするのには一役買っている
とりあえず、阿部寛と小泉今日子はサブカル演技はしないほうが良いと思う。彼らは少々ユルいドラマのほうが映えると思うので。というか、この作品は浅野忠信が美味しいところは全て持っていっているのでトータルで観た場合彼らもスパイスとして効いているのかもしれない。基本的に様々な視点を次々に切り替えることで飽きさせず魅せてくれるのでそれなりに面白い。ただ、最後のシーンは個人的に如何なものかと思った。「岸部さん・・・」と遠い目をしてしまうこと請け合い
松尾スズキ監督作品
作品紹介が充実しているので上記を参照されたし
この作品は、アニメを含む「オタク」文化をテーマに据えている。ストーリーはつけたしのようなもので、くっつきそうでくっつかないというオタ系ラブコメを踏襲している。一番の見所はオタク文化の料理っぷりで、知らない方には奇異に写る生態をほとんど説明なしで描写している。ただ、オタクの役割をヒロインに振ってあるので、抵抗感はあまり感じずに済むと思う。ゲストも(一部の層には)豪華で、内田春菊や山本直樹、安野モヨコや庵野秀明がチョイ役で登場する。ただ、はっきりと確認できるのは安野モヨコと庵野秀明だけだが。アニメのコスプレを売りにしたイメクラの店長役で三池崇史も登場。このイメクラの看板が「綾波レイ始めました」というもので、その15分後に庵野秀明が普通に登場したのには笑った
基本的に御祭り感を楽しむ作品。台詞回しもテンポがよく気が利いていてするすると観る事ができるはず
石で漫画を描く、自称・漫画芸術家の蒼木門は、バイト先でアニメおたくのコスプレOLの証恋乃と知り合う。彼女の家で飲んだ勢いでいい雰囲気になったが、恋乃にアニメのコスプレをさせられたり、アニメ歌手のファンの集いでいい感じになったが、酔っぱらって彼女の顔に吐いてしまうなど、なかなか結ばれないふたり。そんなことしているうちに門のバイト先の店長が恋乃にほれて、彼女を取り合う羽目に…。「大人計画」の松尾スズキの監督デビュー作。門と恋乃のラブストーリーは、コスプレ好きのアニメおたく&誰にも理解されない漫画芸術家という風変わりな男女ゆえ、夢のようなラブストーリーの対極にあるけれど、主演の松田龍平と酒井若菜のはじけっぷりはキュート、演出はポップ、ジョークはブラックと、全編うれしい驚きの連続。松尾スズキの映画監督としての類まれなる才能に驚くこと必至だ。脇をしめる大竹しのぶ、平泉成、大竹まこと、田辺誠一、忌野清志郎も印象的。原作は羽生生純の同名漫画
作品紹介が充実しているので上記を参照されたし
この作品は、アニメを含む「オタク」文化をテーマに据えている。ストーリーはつけたしのようなもので、くっつきそうでくっつかないというオタ系ラブコメを踏襲している。一番の見所はオタク文化の料理っぷりで、知らない方には奇異に写る生態をほとんど説明なしで描写している。ただ、オタクの役割をヒロインに振ってあるので、抵抗感はあまり感じずに済むと思う。ゲストも(一部の層には)豪華で、内田春菊や山本直樹、安野モヨコや庵野秀明がチョイ役で登場する。ただ、はっきりと確認できるのは安野モヨコと庵野秀明だけだが。アニメのコスプレを売りにしたイメクラの店長役で三池崇史も登場。このイメクラの看板が「綾波レイ始めました」というもので、その15分後に庵野秀明が普通に登場したのには笑った
基本的に御祭り感を楽しむ作品。台詞回しもテンポがよく気が利いていてするすると観る事ができるはず
YAMAHA Vino
2005年4月28日 趣味
原付を買った
車も所有しているが、どちらかというと家族共用のニュアンスが強く、父親が比較的遠方に転勤になってからは父親専用といった按配で、僕が使用する際は前もって父親に断らなければいけないような状態だった。こちらも無いと困るので話し合った結果、原付を購入し僕が使うという事で落ち着いた
最初はネットで購入しようかと考えていたが、沖縄という土地柄、内地からの輸送費が馬鹿にならないということで、地道に探し回ることにした。2週間ばかりバイクショップを回り見つけたのがこの品。中古だが走行距離が90km。因みにカラーはレッドです。とりあえず夏は原付で走り回ることになりそうだ。日焼けが怖いが・・・
オシャレでキュートな個性が光る
愛らしいスタイルと4サイクルエンジンによるクリーン&エコノミーな走行性能が人気のビーノ。新たにリモコンシステムを搭載した“リモコンビーノ”が加わり、ラインナップもますます充実。今年はシックなカラーリングをとり揃え、ますます街の視線を集めそう!
車も所有しているが、どちらかというと家族共用のニュアンスが強く、父親が比較的遠方に転勤になってからは父親専用といった按配で、僕が使用する際は前もって父親に断らなければいけないような状態だった。こちらも無いと困るので話し合った結果、原付を購入し僕が使うという事で落ち着いた
最初はネットで購入しようかと考えていたが、沖縄という土地柄、内地からの輸送費が馬鹿にならないということで、地道に探し回ることにした。2週間ばかりバイクショップを回り見つけたのがこの品。中古だが走行距離が90km。因みにカラーはレッドです。とりあえず夏は原付で走り回ることになりそうだ。日焼けが怖いが・・・
作家、恩田陸の話題作
主人公たちが所属する高校の伝統行事である「歩行祭」。全校生徒が学校を出発し翌日の昼までひたすら歩き続け学校へ戻るイベントで、この作品はその一日分しか時間は進まない。しかし、その間に起こる出来事は主人公たちの人生を少しだけ良い方向へ導いてくれるのだ
この作品は、2人の主人公である西脇融(とおる)と甲田貴子の視点で語られる。2人は同級生だが異母兄妹でもあり、そのことは学校では誰にも知られていない。西脇は浮気相手の娘で妹でもある貴子に憎しみにも似た感情を抱いており、貴子はそれを感じながらもフラットでいようと努力している。二人は同じ高校に居ながら3年間一言も言葉を交わしたことが無いのだ。歩行祭が終われば受験に突入しすぐに卒業してしまうと思った貴子は、このイベントの間に西脇と言葉を交わす機会を作りたいと望む
たった一日の出来事ながら、上記の事柄を軸にしつつ登場人物たちの様々な思いが描かれ、それが終盤になっていくにしたがって徐々にあるべきところに落ち着いていく。主要な登場人物は皆魅力的で、友人関係における心の交流がみずみずしく描かれる。「先が気になる」と読み急ぐより、その時々の登場人物の、気の利いた・・・あるいは行き違う言葉と気持ちの応酬をゆっくりと楽しむタイプの作品だ。登場人物たちの気持ちが重なり主人公2人が徐々に通い合っていく様は独特の高揚感とさわやかさがある。終盤のカタルシスを綺麗に着地させており、読後感は晴れ晴れとしたものだ
学生時代の良い部分を抽出した作品という印象。テーマ的に臭くなりがちな部分を上手く回避しているあたりはさすが。懐かしく学生時代を思い出せるはず
あの一夜に起きた出来事は、紛れもない奇蹟だった、とあたしは思う。夜を徹して八十キロを歩き通す、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。三年間わだかまっていた想いを清算すべく、あたしは一つの賭けを胸に秘め、当日を迎えた。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る――。ノスタルジーの魔術師が贈る、永遠普遍の青春小説
主人公たちが所属する高校の伝統行事である「歩行祭」。全校生徒が学校を出発し翌日の昼までひたすら歩き続け学校へ戻るイベントで、この作品はその一日分しか時間は進まない。しかし、その間に起こる出来事は主人公たちの人生を少しだけ良い方向へ導いてくれるのだ
この作品は、2人の主人公である西脇融(とおる)と甲田貴子の視点で語られる。2人は同級生だが異母兄妹でもあり、そのことは学校では誰にも知られていない。西脇は浮気相手の娘で妹でもある貴子に憎しみにも似た感情を抱いており、貴子はそれを感じながらもフラットでいようと努力している。二人は同じ高校に居ながら3年間一言も言葉を交わしたことが無いのだ。歩行祭が終われば受験に突入しすぐに卒業してしまうと思った貴子は、このイベントの間に西脇と言葉を交わす機会を作りたいと望む
たった一日の出来事ながら、上記の事柄を軸にしつつ登場人物たちの様々な思いが描かれ、それが終盤になっていくにしたがって徐々にあるべきところに落ち着いていく。主要な登場人物は皆魅力的で、友人関係における心の交流がみずみずしく描かれる。「先が気になる」と読み急ぐより、その時々の登場人物の、気の利いた・・・あるいは行き違う言葉と気持ちの応酬をゆっくりと楽しむタイプの作品だ。登場人物たちの気持ちが重なり主人公2人が徐々に通い合っていく様は独特の高揚感とさわやかさがある。終盤のカタルシスを綺麗に着地させており、読後感は晴れ晴れとしたものだ
学生時代の良い部分を抽出した作品という印象。テーマ的に臭くなりがちな部分を上手く回避しているあたりはさすが。懐かしく学生時代を思い出せるはず
漫画家、吾妻ひでおのエッセイ漫画
多数の作品を残している漫画家吾妻ひでおが、一線から去った後どのように暮らしていたかを、ユーモアを加味して描いたエッセイ漫画。独特の牧歌的なディフォルメをされた画風が描かれている痛々しい現実を中和し、その現実の中から読んで面白いであろうと作者が感じたエピソードを中心に描いてある
作品は4つの部分に分けられている。まず漫画家という社会的立場から逃げホームレスのような暮らしをしていた時期の生活内容の披露、次に同じく職場を逃げ出しホームレスをしていたところ声をかけられ配管工として働いた時期の生活、3つ目に漫画家としての生活、最後にアルコール中毒になり入院した際のレポートという構成になっている。どれも現実的に考えるとある種の厳しさを感じる内容だが、ほのぼのとした世界観で抵抗無く読める。かといって作者がそういった人柄でないことは、巻末のとり・みきとの対談を読むとすぐに分かる。つまり、この作品はエンターテインメントを数多く描いてきた吾妻ひでおの漫画家としてのプロ意識によって自虐や自嘲を越え娯楽にまで昇華されているのだ
日常から逃げたしたいと思っているような読者の欲求を疑似体験させてくれる部分もありつつ、そうした場合のリスクをさりげなく伝えてくる。非常に面白いです。かなりおすすめ
全部実話です(笑)突然の失踪から自殺未遂・路上生活・肉体労働、アルコール中毒・強制入院まで。波乱万丈の日々を綴った、今だから笑える赤裸々なノンフィクション!カバー裏にシークレットおまけインタビューが掲載されています。
「実体験の凄さはもちろん、絵も含めた『漫画作品』として完成度が高く本当に面白い。できるだけ多くの人に読んでほしい、傑作だと思います」とり・みき(漫画家)
多数の作品を残している漫画家吾妻ひでおが、一線から去った後どのように暮らしていたかを、ユーモアを加味して描いたエッセイ漫画。独特の牧歌的なディフォルメをされた画風が描かれている痛々しい現実を中和し、その現実の中から読んで面白いであろうと作者が感じたエピソードを中心に描いてある
作品は4つの部分に分けられている。まず漫画家という社会的立場から逃げホームレスのような暮らしをしていた時期の生活内容の披露、次に同じく職場を逃げ出しホームレスをしていたところ声をかけられ配管工として働いた時期の生活、3つ目に漫画家としての生活、最後にアルコール中毒になり入院した際のレポートという構成になっている。どれも現実的に考えるとある種の厳しさを感じる内容だが、ほのぼのとした世界観で抵抗無く読める。かといって作者がそういった人柄でないことは、巻末のとり・みきとの対談を読むとすぐに分かる。つまり、この作品はエンターテインメントを数多く描いてきた吾妻ひでおの漫画家としてのプロ意識によって自虐や自嘲を越え娯楽にまで昇華されているのだ
日常から逃げたしたいと思っているような読者の欲求を疑似体験させてくれる部分もありつつ、そうした場合のリスクをさりげなく伝えてくる。非常に面白いです。かなりおすすめ
漫画家、黒田硫黄の長編
この作品は黒田硫黄の初めての長編ということになるらしい。「天狗」というテーマを据え、古来から棲む妖怪=マイノリティが世間に認知され発言力を持ち勢力を増し・・・という大きな展開と、主人公である天狗シノブの自分探しという個人レベルの展開が並行して進んでいく。後に「茄子」の主人公になる高間教授も重要な役どころで登場する
絵を筆で描き、しかも現在と違いタッチが荒い為、慣れるまでは読みづらさを感じる。しかし読み進めて行くと、それが独特の飄々とした味わいとしてこの作品を構成する上で欠かせない要素だということに気づく。天狗とはなんぞやという内省的な問いかけやらシノブの迷いやらを淡々と描くが、少々気の抜けたテンションの為、人間(天狗)の心の機微を描写している割に押し付けがましくない。説明的な台詞もほとんど排除しており、映画的な印象も受ける
エンタメの要素は現在より薄いが、人によっては最高傑作に挙げる作品。個人的には今一つといった印象だが、世間的には評価が高いらしい。何故だ。良くも悪くも強烈な独自の世界観を持つ作品なので、現実逃避には最適かと
天狗!自在に飛行をなしあやかしの術もて人をさらい古来より畏怖と敬愛を享けた天狗!今かれらはどこにいるのかどこから来てどこへ行くのか?何を食っているのか寒い日はどうするのか。天狗にさらわれちゃった子はそれからどうなっちゃったのか?天狗の未来を憂う待望の第1巻!
この作品は黒田硫黄の初めての長編ということになるらしい。「天狗」というテーマを据え、古来から棲む妖怪=マイノリティが世間に認知され発言力を持ち勢力を増し・・・という大きな展開と、主人公である天狗シノブの自分探しという個人レベルの展開が並行して進んでいく。後に「茄子」の主人公になる高間教授も重要な役どころで登場する
絵を筆で描き、しかも現在と違いタッチが荒い為、慣れるまでは読みづらさを感じる。しかし読み進めて行くと、それが独特の飄々とした味わいとしてこの作品を構成する上で欠かせない要素だということに気づく。天狗とはなんぞやという内省的な問いかけやらシノブの迷いやらを淡々と描くが、少々気の抜けたテンションの為、人間(天狗)の心の機微を描写している割に押し付けがましくない。説明的な台詞もほとんど排除しており、映画的な印象も受ける
エンタメの要素は現在より薄いが、人によっては最高傑作に挙げる作品。個人的には今一つといった印象だが、世間的には評価が高いらしい。何故だ。良くも悪くも強烈な独自の世界観を持つ作品なので、現実逃避には最適かと
ミステリ作家、森博嗣の新シリーズ
この作家の代表作といえる「S&Mシリーズ」を踏襲した舞台設定のミステリ。因みにS&Mというのは「犀川&萌絵」の頭文字から来ている。N大学の助教授である犀川と学生で理事長の娘であるお嬢様西之園萌絵のコンビが様々な事件の謎を解いていくというシリーズで、謎を解いた=解決したということにならない展開をもってくるのが特徴だった。登場する犯人は理知的な人物が多くこの作家の“知性”を最優先するという傾向の所為で彼らへの敬意は生まれ、結果として探偵役である犀川達は犯人を指摘し彼らの話を聞き謎を解くという部分までを担い、警察の手へ渡すところまでは踏み込まない。そういったスタンスの作品である為、独特の読後感があり人気作になったと思う
この作品はS&Mシリーズから数年後のN大を中心に繰り広げられる。山吹、海月、加部谷という新キャラクターをメインに据え、大学の先輩である西之園萌絵を筆頭にS&Mシリーズのキャラクターが多数登場する。しかし、あくまで視点はメインキャラの3人に絞られており、加部谷というおっとりした女性が読者の視点を担い、海月という無口な青年が探偵役をすることになる。西之園が警察関係に顔が利くという設定のため事件の情報を提供する役割を果たしている以外は、ほとんど顔見せに留まっている
S&Mシリーズの魅力の一つに学園モノという側面があったが、それはこのシリーズでも踏襲されており、大学生の日常を魅力的に描いている。ミステリとしては正直今一つという印象。ただ、キャラクターが各々立っており、S&Mシリーズとの関連付けも自然なので個人的には結構面白く読めた。第一作としては上々の滑り出しだと思う。次作に期待
N大学の学生である山吹は知人宅へ遊びに行き、同マンション内で起こった殺人事件に巻き込まれる。S&Mシリーズから数年後を舞台にした、新たなキャラクター達によるN大ミステリ。西之園萌絵や犀川創平もゲスト出演する新シリーズ
この作家の代表作といえる「S&Mシリーズ」を踏襲した舞台設定のミステリ。因みにS&Mというのは「犀川&萌絵」の頭文字から来ている。N大学の助教授である犀川と学生で理事長の娘であるお嬢様西之園萌絵のコンビが様々な事件の謎を解いていくというシリーズで、謎を解いた=解決したということにならない展開をもってくるのが特徴だった。登場する犯人は理知的な人物が多くこの作家の“知性”を最優先するという傾向の所為で彼らへの敬意は生まれ、結果として探偵役である犀川達は犯人を指摘し彼らの話を聞き謎を解くという部分までを担い、警察の手へ渡すところまでは踏み込まない。そういったスタンスの作品である為、独特の読後感があり人気作になったと思う
この作品はS&Mシリーズから数年後のN大を中心に繰り広げられる。山吹、海月、加部谷という新キャラクターをメインに据え、大学の先輩である西之園萌絵を筆頭にS&Mシリーズのキャラクターが多数登場する。しかし、あくまで視点はメインキャラの3人に絞られており、加部谷というおっとりした女性が読者の視点を担い、海月という無口な青年が探偵役をすることになる。西之園が警察関係に顔が利くという設定のため事件の情報を提供する役割を果たしている以外は、ほとんど顔見せに留まっている
S&Mシリーズの魅力の一つに学園モノという側面があったが、それはこのシリーズでも踏襲されており、大学生の日常を魅力的に描いている。ミステリとしては正直今一つという印象。ただ、キャラクターが各々立っており、S&Mシリーズとの関連付けも自然なので個人的には結構面白く読めた。第一作としては上々の滑り出しだと思う。次作に期待
master-piece Herdmans Linen shoulderbag
2005年4月21日 趣味
かばんを購入することにした
以前財布を買ったオンラインショップがメールをくれたのであれこれ見たところ、このブランドの新作が気に入り購入を決意した。それから数日が経ち、いざ買おうと思ったらSOLDOUTの表示が・・・。卸売りじゃらちがあかねえと思いブランドのHPへ飛んだところ、一応売ってはいた。しかし、5月中旬入荷とのことなので仕方が無く予約注文をした。因みに、画像はショルダーだが他にいくつか種類があり、僕が購入をするのはロールショルダーのタイプです。デザインは同じで色は画像どおりのキャメル
詳しくはこちら
マスターピース
http://www.master-piece.co.jp/ONLINE/news.html
ロールショルダーのレビュー
http://www.gloopy.jp/shopping/detail.php?item_id=273
詳しいレビューは購入後に改めてということで
以前財布を買ったオンラインショップがメールをくれたのであれこれ見たところ、このブランドの新作が気に入り購入を決意した。それから数日が経ち、いざ買おうと思ったらSOLDOUTの表示が・・・。卸売りじゃらちがあかねえと思いブランドのHPへ飛んだところ、一応売ってはいた。しかし、5月中旬入荷とのことなので仕方が無く予約注文をした。因みに、画像はショルダーだが他にいくつか種類があり、僕が購入をするのはロールショルダーのタイプです。デザインは同じで色は画像どおりのキャメル
詳しくはこちら
マスターピース
http://www.master-piece.co.jp/ONLINE/news.html
ロールショルダーのレビュー
http://www.gloopy.jp/shopping/detail.php?item_id=273
詳しいレビューは購入後に改めてということで
漫画家、黒田硫黄の短編集
初期〜中期の作品を網羅した短編集「大王」以降の短編を編んだ作品。12編が収められている。上記にあるように宮崎駿からお墨付きを貰うなどの世間的な高評価を受け編まれた作品といえる
漫画家としてのオリジナリティの模索も終了し独自性の固まった作風になった時期に描かれた作品の為、読後感は一定になっている。内容は、取り上げるテーマに寓話性を出した作品と、俗っぽい題材を取り上げた作品の2パターンに大別される。しかし、画風が良くも悪くも牧歌的なので、寓話性を出した作品だと「大人の為の絵本」的な印象を受けてしまう。「セクシーボイスアンドロボ」に代表されるような俗っぽい題材を取り上げたほうがこの漫画家は活きるのではないかと思った。作品を俯瞰すると、現在のメジャー誌の人気作の魅力に対するアンチテーゼ的なニュアンスが感じられる。それもオルタナティヴなノリではなく「本来の漫画の魅力はこうあるべき」というような、真っ向から張り合うような打ち出し方だ。隙間産業ではない!というか
2ページほどの連作漫画「肉じゃが止めろ!」は、おまけ的ポジションだがこの作者のスタンスが明確になった佳作だと思う。基本的に応用編という感触なので、この漫画家の魅力を知りたい初心者は素直に「大王」から入る事をお勧めします
「このおもしろさが判る奴は本物だ」。かの宮崎駿監督は黒田硫黄作品をこう評したが、その魅力が凝縮された12タイトルの中短編を収録した本書を一読すれば、誰しもその評価に納得するに違いない。18世紀を舞台とした海洋冒険譚である中編「鋼鉄クラーケン」や、江戸時代にベトナムから日本にやってきた象とその飼い主の物語である「象の股旅」は、紆余曲折のドラマがはるかなロマンを感じさせる。一転して、現代の平凡な女学生の日常風景「年の離れた男」や料理マンガ「肉じゃがやめろ!」では、ひょうひょうとしたユーモラスな展開を見せつつ生活感も感じさせる。内容は非常にバラエティーに富んでいるが、そのどれもが厚みのあるおもしろさを発揮している。独特の筆絵調のタッチはとても絵画的である。少なくとも写実的ではない。しかし、黒田硫黄作品の登場人物には、まるですぐそこに存在しているかのごとき躍動感がある。それを生みだしているのが、登場人物の表情の豊かさだ。気をつけてみると、1カットたりとも同じ表情をしていることがないのには驚かされる。構図取りの見事さも特筆モノだ。1コマ1コマがまるでカメラマンの作品のようで、一瞬の風景をとても印象的にとらえている。本書収録の「わたしのせんせい」は、主人公の少女が自転車で走っていくシーンで終わる。ここではたった2ページの間で前後左右、上下、アップ、俯瞰の構図を巧みに使い分けており、気持ちの良い余韻を演出している。本書収録作品は1話2ページの短編から90ページ超の中編までがそろっている。じっくり読みたい人も軽く試してみたい人も、これ1冊で黒田硫黄の魅力を存分に味わえるはずだ
初期〜中期の作品を網羅した短編集「大王」以降の短編を編んだ作品。12編が収められている。上記にあるように宮崎駿からお墨付きを貰うなどの世間的な高評価を受け編まれた作品といえる
漫画家としてのオリジナリティの模索も終了し独自性の固まった作風になった時期に描かれた作品の為、読後感は一定になっている。内容は、取り上げるテーマに寓話性を出した作品と、俗っぽい題材を取り上げた作品の2パターンに大別される。しかし、画風が良くも悪くも牧歌的なので、寓話性を出した作品だと「大人の為の絵本」的な印象を受けてしまう。「セクシーボイスアンドロボ」に代表されるような俗っぽい題材を取り上げたほうがこの漫画家は活きるのではないかと思った。作品を俯瞰すると、現在のメジャー誌の人気作の魅力に対するアンチテーゼ的なニュアンスが感じられる。それもオルタナティヴなノリではなく「本来の漫画の魅力はこうあるべき」というような、真っ向から張り合うような打ち出し方だ。隙間産業ではない!というか
2ページほどの連作漫画「肉じゃが止めろ!」は、おまけ的ポジションだがこの作者のスタンスが明確になった佳作だと思う。基本的に応用編という感触なので、この漫画家の魅力を知りたい初心者は素直に「大王」から入る事をお勧めします
漫画家、黒田硫黄の短編集
作品紹介が充実しているので上記を参照されたし
様々な雑誌に発表した初期の短編を編んだ作品。90年代はこういった短編も定期的に発表する活動をしていたようだ。そういった活動の受け皿も現在より多かったように思う。7年間という長い期間のあいだに発表した作品を収録している割には、筆を使った独特のタッチや牧歌的な絵柄、シュールともいえる独特の読後感というこの漫画家の魅力は初期の作品からある程度完成されている
この時期の作品は、良さや面白さがより分かりやすく伝わりやすくなっている現在と違い、少々ひとりよがりな印象を受ける。現在は良くも悪くも作品から受ける魅力や温度や柔らかさが一定で作者の色のようなものが固まっているが、この時期は読後感が短編ごとに違う。あれこれと試行錯誤していたからだとは思うが、結果的にこの作品は一つの作品として見た場合非常に面白い。おすすめ
1993年から1999年に発表された11の短編を収録した黒田硫黄の第1短編集。デビュー作「蚊」、カラー作品「西遊記を読む」、漫研時代の作品「熊」「南天」、同タイトルの手塚治虫作品のカバー「メトロポリス」、よしもとよしともと原作による「あさがお」など、初期のさまざまな試みを堪能できる。そのほか描き下ろし作品「まるいもの」、あとがき、雑誌「ユリイカ」に掲載されたエッセイ「西遊記とわたし。」も収録されている。
印象的なのが、「象」をモチーフにした2作品。ひとつは、同棲相手に家財道具と共に逃げられた少女が隣の部屋に巨大な象がいることを知り、心を寄せてゆく「象夏」。もうひとつは、やはりアパートで象を飼っていた男が、散歩の途中で鯨を飼っているという少女と出会う「象の散歩」。象という多大な重量を持った「野生」が都会の日常のなかにあることの違和感と、大きなものに圧倒される心地よい興奮が押し寄せてくる。どちらの作品でも、主人公たちは象を手放さねばならない状況に陥り悩むものの、最終的には「象は象でやってくさ」(「象の散歩」)と拍子抜けするほどにさっぱりと、象に別れを告げる。黒田作品全体に流れる、物事に拘泥せずに手放す潔さ、すがすがしさを強く感じさせる。象の荒々しく、どこかなまめかしくもある姿を最高の構図で表現する画力も見事。筆を多用し、黒々とした線で描く黒田独特の技法も、象という素材とぴたりと合っている
作品紹介が充実しているので上記を参照されたし
様々な雑誌に発表した初期の短編を編んだ作品。90年代はこういった短編も定期的に発表する活動をしていたようだ。そういった活動の受け皿も現在より多かったように思う。7年間という長い期間のあいだに発表した作品を収録している割には、筆を使った独特のタッチや牧歌的な絵柄、シュールともいえる独特の読後感というこの漫画家の魅力は初期の作品からある程度完成されている
この時期の作品は、良さや面白さがより分かりやすく伝わりやすくなっている現在と違い、少々ひとりよがりな印象を受ける。現在は良くも悪くも作品から受ける魅力や温度や柔らかさが一定で作者の色のようなものが固まっているが、この時期は読後感が短編ごとに違う。あれこれと試行錯誤していたからだとは思うが、結果的にこの作品は一つの作品として見た場合非常に面白い。おすすめ
東京少年のベストアルバム
安定した歌唱とエヴァーグリーンなアレンジによるメロディアスな曲、牧歌的な少年性を残す歌詞による佳曲の数々を生み出した東京少年のベストアルバム。現在聴いても全く色あせない。ほのぼのとした世界観は多少聴く人を選ぶが、楽曲の完成度は軒並高い。「ハーモニー」や「カケラ達のキャンバス」は現在でも十二分に通用する名曲
<収録曲>
ツンツルツルリン
サイレントメビウス~セイリング
バック・トゥ・ザ・チャイム(ニュー・ヴォックス・ヴァージョン)
道の上(同)
君のマンションへ集合
ハーモニー
ひとつとなるところへ
ミッシングピース
涙色の海へ
カケラ達のキャンパス
よりみち
秋の夜長に(ライヴ・ヴァージョン9.29)
陽のあたる坂道で(同)
なんにもない日々 ?Live Version 9.29?
シャイ・シャイ・ジャパニーズ(パワー・ミックス・ヴァージョン)
れんがの学校(カラオケ・ヴァージョン)
陽のあたる坂道で(同)
シャイ・シャイ・ジャパニーズ(同)
ツンツルツリン(ニュー・ミックス・ヴァージョン)
東京少年最後のアルバム(2枚組)。基本的には「もういいかい?」未収録曲から選んだベストアルバム(+東京少年の有名な曲のリミックス&カラオケバージョンも収録)。アニメに提供した「サイレントメビウス〜Sailing」も収録。歌詞カード表紙の笹野さんはかわいい。しかし、なんと言ってもこのアルバムで必聴なのは「なんにもない日々-Live version 9.29-」での笹野さんの涙でしょう
安定した歌唱とエヴァーグリーンなアレンジによるメロディアスな曲、牧歌的な少年性を残す歌詞による佳曲の数々を生み出した東京少年のベストアルバム。現在聴いても全く色あせない。ほのぼのとした世界観は多少聴く人を選ぶが、楽曲の完成度は軒並高い。「ハーモニー」や「カケラ達のキャンバス」は現在でも十二分に通用する名曲
<収録曲>
ツンツルツルリン
サイレントメビウス~セイリング
バック・トゥ・ザ・チャイム(ニュー・ヴォックス・ヴァージョン)
道の上(同)
君のマンションへ集合
ハーモニー
ひとつとなるところへ
ミッシングピース
涙色の海へ
カケラ達のキャンパス
よりみち
秋の夜長に(ライヴ・ヴァージョン9.29)
陽のあたる坂道で(同)
なんにもない日々 ?Live Version 9.29?
シャイ・シャイ・ジャパニーズ(パワー・ミックス・ヴァージョン)
れんがの学校(カラオケ・ヴァージョン)
陽のあたる坂道で(同)
シャイ・シャイ・ジャパニーズ(同)
ツンツルツリン(ニュー・ミックス・ヴァージョン)
町田康×いしいしんじの共著
何故か商品紹介が異様に充実しているので上記を参照されたし
この作品は2部構成になっている。前半部分は町田康が人生相談に答えるというものだが、悩みの内容が一般的で普遍性のあるものが多く、それを受けて町田康が“笑い”の要素を最優先した回答を述べる。そういう形の一種の芸を見せるのが主旨のようなので真面目な内容は期待しないほうが吉。しかし、町田康の相談者への対応は丁寧なので「あなたが悩んでいるのはよく分かった。しかしあいにくと自分にはそれに答えるだけの技量がない。だからあなたの悩みをこちらは真剣に受け止めるが効果的なアドバイスは期待しないで欲しい」というようなスタンスに見える。その結果出てくる回答はどれも面白く、腑に落ちることも多い
後半は町田康といしいしんじの対談で、東京の街を歩き回りながらネタを拾い話しをそこから膨らませていくといった構成になっている。人間観察をしたり店にあれこれ入ってみたり風景を楽しんだりしつつ対談を進めるが、そういった主旨なので話があちこち飛んだり視点が変わったりで多少散漫な印象も受ける。掛け合い漫才風のやりとりがベースだが、ネタにした事を真面目に考察する事を基本姿勢にしているようだ。それなりに含蓄のある部分もあるが基本的には気楽に読める内容
相談者の悩みを笑いに持っていく際の配慮やバランスが絶妙で、町田康の真面目な顔をして適当なアドバイスをするスタンスが笑える作品になっている
作家の町田康が毎日新聞日曜版に1年間連載した人生相談と、いしいしんじとの路上対談を収録した『人生を救え!』。町田初の人生相談、対談集だが、小説やエッセイで見せる独特の音楽的なリズムと言い回しが本書でもさえる。リラックスした雰囲気のなかで行われた対談では著者の素の部分が少し見えるのもファンにはうれしい。前半の人生相談「どうにかなる人生」では、彼氏ができないという人に「心を開いて夜な夜なワイルドサイドを歩き回ろう!」とアドバイスし、明るい性格になりたいという人には落語を聞いて「キュートな失敗」をたくさん勉強することをすすめる。後半の録音も自分たちで行った20時間の対談「苦悩の珍道中」は関西弁による掛け合いが絶妙。丸の内、お台場、浅草と対談場所を移し、そこにある人生を前にした2人からはおかしくて鋭い発言が次々と飛び出す。仕事の悩みは丸の内で、恋愛についてはお台場で語り、浅草では悩みも「ブチ飛ぶ」強烈な行灯に出会う。現地で撮影されたおかしいような悲しいような写真も多数収録されている。「溺れてる人と一緒に溺れ」ながら導き出した人生相談の答えや対談で語られる内容は、おかしみと愛情、ときに怒りにあふれてはいるが、どこか冷静な部分を残している。町田は人生の明確な答えを与えてくれるわけではない。ひょい、と新しい視点を提示するだけだ。だが本書を読み終わったとき、その視点が、悩みでパンパンにふくれた心に小さな穴をあけ、風通しを良くしてくれたことに気づくだろう
何故か商品紹介が異様に充実しているので上記を参照されたし
この作品は2部構成になっている。前半部分は町田康が人生相談に答えるというものだが、悩みの内容が一般的で普遍性のあるものが多く、それを受けて町田康が“笑い”の要素を最優先した回答を述べる。そういう形の一種の芸を見せるのが主旨のようなので真面目な内容は期待しないほうが吉。しかし、町田康の相談者への対応は丁寧なので「あなたが悩んでいるのはよく分かった。しかしあいにくと自分にはそれに答えるだけの技量がない。だからあなたの悩みをこちらは真剣に受け止めるが効果的なアドバイスは期待しないで欲しい」というようなスタンスに見える。その結果出てくる回答はどれも面白く、腑に落ちることも多い
後半は町田康といしいしんじの対談で、東京の街を歩き回りながらネタを拾い話しをそこから膨らませていくといった構成になっている。人間観察をしたり店にあれこれ入ってみたり風景を楽しんだりしつつ対談を進めるが、そういった主旨なので話があちこち飛んだり視点が変わったりで多少散漫な印象も受ける。掛け合い漫才風のやりとりがベースだが、ネタにした事を真面目に考察する事を基本姿勢にしているようだ。それなりに含蓄のある部分もあるが基本的には気楽に読める内容
相談者の悩みを笑いに持っていく際の配慮やバランスが絶妙で、町田康の真面目な顔をして適当なアドバイスをするスタンスが笑える作品になっている